【おしえてカモシタさん】Vol.12 黒の歴史とエレガンス

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2026春夏シーズンでポール・スチュアートがキーカラーのひとつにしている「黒」。近年クラシック・クロージングの世界でも一般化しつつある色ですが、 実は遠い昔にも黒の服が広く親しまれていた時代がありました。今回はそんな知られざる黒の歴史について、カモシタさんが解説します。

2026春夏シーズンでポール・スチュアートがキーカラーのひとつにしている「黒」。 近年クラシック・クロージングの世界でも一般化しつつある色ですが、 実は遠い昔にも黒の服が広く親しまれていた時代がありました。 今回はそんな知られざる黒の歴史について、カモシタさんが解説します。

黒のスーツが日常着だった時代

黒のスーツが日常着だった時代

楽しむスーツ、
カモシタ流コーディネート

「ドレススタイルにおいて、黒はフォーマル、あるいは夜の装いを想起させる色とされてきました。近年はその固定観念もだいぶ薄れてきて、黒のジャケットやパンツなどが広く浸透してきていますが、保守的なファッション観を重視する方々の間では、今なお黒は昼間の日常着としてふさわしくないという意見も聞かれます。いっぽう、そういった保守的価値観への反抗を示す色として、黒い服を好んで着るムーブメントも1960年代あたりから始まりました。いずれにしろ黒という色はごく最近まで、ファッションにおいて特殊な位置づけであったといえるでしょう。

 しかし、さらに時代を遡ってみると、黒い服が至極一般的な装いとして親しまれている時代もあったのです。イギリスやイタリアの老舗生地メーカーで過去のアーカイブをひもといていると、1940年代くらいまでのスーツ生地は黒やチャコールグレーばかり。ストライプやチェックといった柄のバリエーションこそありますが、色彩のバリエーションは驚くほど少ないのです。その理由はいくつかあって、まず今のように洋服を頻繁に洗濯する習慣がなかったこと。つまりは汚れが目立たない色が好まれたというわけです。さらに布を染色する技術も20世紀前半は未発達で、今のように綺麗な色を表現すること自体が難しかったという背景もあります。

 余談ですが、“タキシードは黒のほかミッドナイトブルーも正式であり、その理由は夜の照明下において黒よりも黒く見えるから”という定説をご存じの方も多いと思います。
これも20世紀前半の技術的背景が関係していて、当時の生地は“真っ黒”の色出しが困難だったのです。夜の照明を受けると、赤みを帯びて茶色っぽく見えてしまう。それゆえミッドナイトブルーが“黒より黒い”と称されたわけですね。

  1950年代以降になると世の中は戦後の好景気に浮かれ、カラーテレビの出現によって世の中に彩りがあふれました。日本映画でいうところの総天然色時代です。そこに染色技術の進歩が重なり、ファッションの世界にも様々な色が花盛りとなっていくわけですが、それ以前の時代においては、黒やグレーの無彩色が巷の主流でした。そのほかの資料とあわせて総合的に考えても、1920年代ごろまでは黒のスーツが日常着として広く用いられていたことがわかります。今季のポール・スチュアートではそんな歴史もふまえつつ、改めて黒の魅力にフォーカスしたアイテムを揃えました」

「とてもしなやかなラムスエードを使い、イタリアのレザーファクトリーに生産を依頼して製作した一着です。
デザインは“ユーティリティジャケット”とか、海外では“チョアジャケット”ともよばれるタイプで、平たくいうとワークウェア。
本来はコットンなど素朴な素材で作られていた服ですが、それを上質なスエードに置き換えました。

 ちょっと気の利いた日常着として非常に重宝するアイテムで、春先ならシャツやニットの上に羽織るだけで格好がつきます。夏場なら、避暑地へ旅行に出かけたときなどに着ると絵になりますよね。
近年は暖かい時期が長いですから、秋口や初冬にも活用できると思います」

「ドレススタイルにおいて、黒はフォーマル、あるいは夜の装いを想起させる色とされてきました。近年はその固定観念もだいぶ薄れてきて、黒のジャケットやパンツなどが広く浸透してきていますが、保守的なファッション観を重視する方々の間では、今なお黒は昼間の日常着としてふさわしくないという意見も聞かれます。いっぽう、そういった保守的価値観への反抗を示す色として、黒い服を好んで着るムーブメントも1960年代あたりから始まりました。いずれにしろ黒という色はごく最近まで、ファッションにおいて特殊な位置づけであったといえるでしょう。

 しかし、さらに時代を遡ってみると、黒い服が至極一般的な装いとして親しまれている時代もあったのです。イギリスやイタリアの老舗生地メーカーで過去のアーカイブをひもといていると、1940年代くらいまでのスーツ生地は黒やチャコールグレーばかり。ストライプやチェックといった柄のバリエーションこそありますが、色彩のバリエーションは驚くほど少ないのです。その理由はいくつかあって、まず今のように洋服を頻繁に洗濯する習慣がなかったこと。つまりは汚れが目立たない色が好まれたというわけです。さらに布を染色する技術も20世紀前半は未発達で、今のように綺麗な色を表現すること自体が難しかったという背景もあります。

 余談ですが、“タキシードは黒のほかミッドナイトブルーも正式であり、その理由は夜の照明下において黒よりも黒く見えるから”という定説をご存じの方も多いと思います。これも20世紀前半の技術的背景が関係していて、当時の生地は“真っ黒”の色出しが困難だったのです。夜の照明を受けると、赤みを帯びて茶色っぽく見えてしまう。それゆえミッドナイトブルーが“黒より黒い”と称されたわけですね。

  1950年代以降になると世の中は戦後の好景気に浮かれ、カラーテレビの出現によって世の中に彩りがあふれました。日本映画でいうところの総天然色時代です。そこに染色技術の進歩が重なり、ファッションの世界にも様々な色が花盛りとなっていくわけですが、それ以前の時代においては、黒やグレーの無彩色が巷の主流でした。そのほかの資料とあわせて総合的に考えても、1920年代ごろまでは黒のスーツが日常着として広く用いられていたことがわかります。今季のポール・スチュアートではそんな歴史もふまえつつ、改めて黒の魅力にフォーカスしたアイテムを揃えました」

素材使いで変わる、多彩な黒のエレガンス

素材使いで変わる、
多彩な黒のエレガンス

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「ひとくちに黒といっても、実に多彩な表情があります。今日は僕、あえて黒ずくめの服装をしてみましたけれど、どのアイテムもそれぞれ違った個性がありますよね。たとえばジャケットにしても、シェトランドツイードなら深みのあるリッチな黒になりますし、リネンならフェード感のある軽やかな黒に見える。ディレクターの立場からすれば、黒をどんな素材で表現するかが腕の見せどころになるわけです。いくつか例をご紹介しましょう。

「ちなみにこちらのチョアジャケット、ブラウン系のスエードでもう1色作っています。
ほとんど同じように見えるかもしれませんが、こちらは黄色みの強いブラウンですので、実際羽織ってみると趣がガラリと変わります。コーディネーションの方向も違ってきますので、少しご紹介しましょう」

「ひとくちに黒といっても、実に多彩な表情があります。今日は僕、あえて黒ずくめの服装をしてみましたけれど、どのアイテムもそれぞれ違った個性がありますよね。たとえばジャケットにしても、シェトランドツイードなら深みのあるリッチな黒になりますし、リネンならフェード感のある軽やかな黒に見える。ディレクターの立場からすれば、黒をどんな素材で表現するかが腕の見せどころになるわけです。いくつか例をご紹介しましょう。

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JACKET ¥165,000

こちらは黒のウールで作ったショートジャケット。形は定番として継続展開しているものですが、生地が変わるだけでガラリと表情も違ってきます。綾織りにすることでほのかに光沢を加えているところがミソで、普段着としてサラッと着ていただけるとクールかと思います。

                   JACKET ¥165,000

こちらは黒のウールで作ったショートジャケット。形は定番として継続展開しているものですが、生地が変わるだけでガラリと表情も違ってきます。綾織りにすることでほのかに光沢を加えているところがミソで、普段着としてサラッと着ていただけるとクールかと思います。

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                                 SWEATER ¥39,600   SCARF ¥8,800

続いては、コットンカシミアニットポロ。共生地でスカーフも作っていて、合わせると新鮮な首周りを演出できます。これは今季のインスピレーションになった映画『ヴェニスに死す』のタッジオ少年をイメージしたものですね。ちなみにヴェニスと黒も深い関連があり、当地の水路をゆくゴンドラは船体が黒で塗られています。これはもともと貿易国として栄華を誇り、ビザンチン文化など異国情緒も入り混じって非常に豪奢な装飾が栄えるなかで、国からの倹約令が出された結果なんです。

JACKET ¥165,000

こちらは黒のウールで作ったショートジャケット。形は定番として継続展開しているものですが、生地が変わるだけでガラリと表情も違ってきます。綾織りにすることでほのかに光沢を加えているところがミソで、普段着としてサラッと着ていただけるとクールかと思います。

SWEATER ¥39,600 SCARF ¥8,800

続いては、コットンカシミアニットポロ。共生地でスカーフも作っていて、合わせると新鮮な首周りを演出できます。これは今季のインスピレーションになった映画『ヴェニスに死す』のタッジオ少年をイメージしたものですね。ちなみにヴェニスと黒も深い関連があり、当地の水路をゆくゴンドラは船体が黒で塗られています。これはもともと貿易国として栄華を誇り、ビザンチン文化など異国情緒も入り混じって非常に豪奢な装飾が栄えるなかで、国からの倹約令が出された結果なんです。

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SHIRT JACKET ¥44,000

近年注目されているシアー(透け)素材の羽織りものも作りました。Tシャツの上に重ねるだけで格好がつきますから、ちょっとしたお出かけ着に重宝すると思います。旅行のときに携えてもいいですね。

                              JACKET ¥44,000

近年注目されているシアー(透け)素材の羽織りものも作りました。Tシャツの上に重ねるだけで格好がつきますから、ちょっとしたお出かけ着に重宝すると思います。旅行のときに携えてもいいですね。

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VEST ¥59,400                 SHIRT ¥33,000

目新しいものとしては、パリのギャルソンを思わせる黒のオッドベストもおすすめです。ジャケットの下に合わせるのではなくて、アウターとして使うベストですね。

たとえばこんな茶系のバンドカラーシャツに重ねると、カジュアルな普段着でもどこかエレガントな印象にまとまります。ポケットが付いているのでスマホや小物を入れられるという機能的な特徴もありますね。

 話は変わりますが、ロンドンを訪れると漆黒の壁に黒い革張りのチェスターフィールドソファを設えた部屋を目にすることがあります。とてもクラシックであり、同時にエレガント。尖った印象をイメージしがちですが、黒の魅力は決してそれだけではないんだなと再認識させられます。僕にとって黒とは、クールの象徴。クラシックをアップデートするエッセンスとしても非常に有効だと思っています」

VEST ¥59,400

目新しいものとしては、パリのギャルソンを思わせる黒のオッドベストもおすすめです。ジャケットの下に合わせるのではなくて、アウターとして使うベストですね。たとえばこんな茶系のバンドカラーシャツに重ねると、カジュアルな普段着でもどこかエレガントな印象にまとまります。ポケットが付いているのでスマホや小物を入れられるという機能的な特徴もありますね。

  話は変わりますが、ロンドンを訪れると漆黒の壁に黒い革張りのチェスターフィールドソファを設えた部屋を目にすることがあります。とてもクラシックであり、同時にエレガント。尖った印象をイメージしがちですが、黒の魅力は決してそれだけではないんだなと再認識させられます。僕にとって黒とは、クールの象徴。クラシックをアップデートするエッセンスとしても非常に有効だと思っています」 

※ 価格は変動している場合がございます。

ポール・スチュアート 青山本店
TEL  03-6384-5763
東京都港区北青山二丁目14-4 ジ アーガイル アオヤマ 1F
営業時間 11:00~20:00
併設するバー「THE COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」
18:00~24:00