【Paul Stuart 2025 SPRING&SUMMER COLLECTION】 ─メンズディレクター鴨志田康人が語る春夏シーズンカタログ─
ウッディ・アレン監督・脚本の映画『Midnight in Paris(ミッドナイト・イン・パリ)』(2011)をご覧になった方は、ポール・スチュアート メンズ2025年春夏コレクションカタログの表紙を見て思わずにんまりされているはず。
ハリウッドで売れっ子脚本家として成功していた主人公が、1920年代のパリにタイムスリップし、憧れの作家ヘミングウェイや画家のピカソらと巡り合う奇跡の日々を綴る……という映画のタイトルをシーズンテーマに、メンズディレクター鴨志田康人による恒例のカタログ解説は、「ファッションは時代を映す鏡」という話から始まります。
Photo. Shingo Goya / Text. Makoto Kajii Edit. FUTURE INN
【Paul Stuart men】2025年春夏シーズンのテーマは「Midnight in Paris」
「ロストジェネレーション(失われた世代)は、1920年代から30年代に活躍したアメリカの小説家を指す語ですが、フィッツジェラルドの小説『グレート・ギャツビー』(1925年)やヘミングウェイの『日はまた昇る』(1926年)などはロストジェネレーションの文学と呼ばれました。
第一次世界大戦が終わった当時は、アメリカ人の文化人や芸術家たちの多くがパリに逃避していて、まさに“アメリカ人から見たパリ”は憧れの的でしたが、今シーズンはポール・スチュアートの視点で、映画『ミッドナイト・イン・パリ』が放つ匂いが、今の気分だなとテーマに据えました」。

【Paul Stuart men】アメリカとヨーロッパ(パリ)を対比させる面白さ
「1930年代には、アメリカで大恐慌が起こり、禁酒法時代のギャングスターたちは襟幅の広い男らしいスーツを着ていましたが、かたやヨーロッパ(パリ)では20年代からエレガントなリヴィエラスタイルが流行り、悦楽な人生を送りたい知識層・富裕層たちがフランスを訪れます。この時代はファッション視点で見ても一番面白いですね。
そして60年代後半には、アメリカでヒッピーが台頭してピーコック革命が起こり、ファッションが一気に自由になりますが、パリではサンローランに代表されるような華やかなフレンチモードが花開き、それから80年代になって、自分のルーツにもなっているパリの上流階級的なシックで趣味の良いフレンチ流アイビーのBCBG(ベーセーベージェー)から次第にリアルクローズに変化していきます。
ポール・スチュアートはアメリカのブランドですが、今シーズンは、ノンシャランなフレンチ独特の雰囲気を取り入れて、着こなしでアップデート。“アメリカ人の目から見たパリ”をスタイリングしました。
社会の経済状況とファッショントレンドの移り変わりを丹念に見ていくと、今ファッションとしてどう表現するかはもちろん、これからの予測にもつながって、まさにファッションは時代を映す鏡です」。

【Paul Stuart men】春夏カタログで表現したかったこと
「時代とともに変わっていくクラシックの面白さと、20年代、70年代、80年代のどの時代も独特な魅力をもつフレンチスタイルを掛け合わせながら、今シーズンはスタジオでの撮影で、色の特徴やコーディネートの新鮮さを表現。
色ではダスティーパステルやアースカラーを、素材ではリネンを主体にした素材感で、“ナチュラルなテイストに粋さを感じさせるスタイリング”にまとめています」。

ポール・スチュアート メンズ2025年春夏コレクションカタログより
「ポール・スチュアートはビジネススタイルを中心としたワードローブですが、コレクションラインでは大人のカジュアルを充実させたい。自分の役割、使命として“ビジネスシーンでも通用する、色を使うドレスアップ”は提案し続けます。
色を着ることで気持ちがアガることは伝えたいし、スーツに黄色いソックスを合わせるだけで、気分や季節を感じる力はガラッと変わってきます」。

ポール・スチュアート メンズ2025年春夏コレクションカタログより
【Paul Stuart men】これまでにない粋なスタイルが楽しめるチョアジャケット
「春夏シーズンなので、素材は家庭でも洗える機能素材や、シワになりにくい合繊などが主流になりますが、クラシックの楽しさは、素材のテクスチャーを味わうことなので、ナチュラルな素材感や独特の風合いの“リネン素材”はぜひ袖を通していただきたいもの。
素材本来の心地良さや快適さは今の時代、皆さんが求めていると思うし、着ると落ち着くと思います。素肌に着たり、シワを楽しんだり、心に響いてくるもので本当の満足感を得てください」。

「自分のお気に入りは、このリネン素材で仕立てたA2型ブルゾンと、作業着という意味のチョアジャケット。男性にもワイドパンツが徐々に受け入れられている今、これぐらいのショート丈の羽織り物が一番相性が良くて、一番映えます。今までにない粋なスタイリングをお楽しみください」。

「このカーキのスーツもお気に入りで、カタログではブルーのシャンブレーシャツとネクタイを合わせていますが、白のシャツに黒のネクタイにすればビジネスシーンで着こなせるし、TPOによっていろんな色の組み合わせが楽しめます」。
【Paul Stuart men】カタログの最後の見開きにご注目を
「カタログがお客様のお手元に届いて、一番反響があったのが最後の見開きです。メンズカタログでは初めて女性が登場していますが、これも服の楽しみ方の一つ。“ミッドナイト・イン・パリ”というシーズンテーマのエピローグとして、ストーリーを締めくくっていますので、ぜひまた見返してください」。
ポール・スチュアート 青山本店
TEL 03-6384-5763
東京都港区北青山二丁目14-4 ジ アーガイル アオヤマ 1F
営業時間 11:00~20:00
併設するバー「THE COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」
18:00~24:00