ポール・スチュアート NY クリエイティブディレクター ラルフ・オリエンマ


 

ポール・スチュアートに今必要なのは能動的な変化です

 

『ポール・スチュアート』のクリエイティブディレクター、ラルフ・オリエンマ(RALPH AURIEMMA)が、日本におけるディレクターに就任した鴨志田康人が手がけたファーストコレクションを語った。

 

Photo. Shimpei Suzuki / Text. Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

 

 

 

ブランドらしさは保ちつつ、「コンテンポラリー・クラシック」を表現

 

――ストレートに訊きますが、鴨志田ディレクションのコレクションを見ていかがでしたか。

 

ラルフ・オリエンマ(以下オリエンマ) 最初に見たときに、「ポール・スチュアートにはこの変化が必要だったんだな」ということを感じました。世界的に有名な鴨志田さんが、ポール・スチュアートの日本におけるディレクターとして参加することを聞いたとき、驚きと同時に興奮も覚えました。彼が手がけた直営店限定「KAMOSHITA COLLECTION」は、ブランドらしさは保ちつつも、コンテンポラリーな要素をしっかり表現していて、ポール・スチュアートの素晴らしい変革と進化を感じました。

 

――ルックの中で一番好きなコーディネートは何ですか。

 

オリエンマ タートルネックセーターとパンツ、足元はブーツで、コートを纏った着こなしですね。コートを脱いだときにきれいな色のセーターとパンツがあらわれて、エレガント&グラマラスと同時にカジュアルな要素も感じます。洗練された素材と色使いはクラシックとモダンの真ん中を絶妙に表現していて、1930年代のムービースターのようです。このような直営店限定アイテムが店頭に並ぶことで、コレクションの世界観がより広がりました。

 

 

――あなたのデザイン哲学と共通する部分を感じますか。

 

オリエンマ メンズドレスが隆盛だった30年代のグラマラスな時代のスタイルにヒントを得ているのは共通ですが、表現の仕方は違うかなと思います。日本とアメリカで同じ生地を見ても、それをどう使うかは違って当然ですが、鴨志田さんのコレクションを見て、新しい刺激を受けています。

 

――この直営店限定アイテムをアメリカで販売したらどんな反響が予想されますか。

 

オリエンマ ブランドのピュアな部分は継承しているので、お客さまにはすぐ伝わると思いますよ。特にコートやダブルブレストのジャケットなどは良い反応が期待できそうです。鴨志田流のタイムレススタイルの提案である「コンテンポラリー・クラシック」は、NYの目の肥えたお客さまにぜひ見せたいですね。

 

ポール・スチュアートでの私の一番の夢は……

 

――ポール・スチュアートは昨年ブランド80周年を迎えました。

 

オリエンマ 1938年からNYマンハッタンのあの場所で一つのブランドが80年間続いてきたことには素直に驚きます。鴨志田さんとのトークショーで、店の住所「Madison Ave. at 45th St.」の前に番地が付かないことを話しましたが、それは何より凄いことで、大好きなエピソードでもあります。

 

――ポール・スチュアートの真髄はどういう部分に感じますか。

 

オリエンマ ポール・スチュアートが表現するのは、アングロ・アメリカスタイルです。たとえばメンズドレスの世界にはカジュアルな着こなしもありますが、私たちはラグジュアリーな素材ときれいな色を掛け合わせて、カジュアルな中にエレガンスを残したスタイリングが得意。それはただのカジュアルではなく、「テーラード・スポーツウェア」と呼ぶべきものです。着るほどにエキサイティングな気持ちになれるので、30年代のムービースターのような気分で着こなしてほしいですね。

 

――では、オリエンマさんの「夢」をお聞かせください。

 

オリエンマ まず、ビジネスの目標として、ポール・スチュアートがもっとハイレベルになってほしい。そして一番の夢は、自分の名を冠したブランドをやりたいですね。

 

 

Profile

 

ラルフ・オリエンマ(RALPH AURIEMMA)

米国系の会社で米国市場向け製品の開発を担当後、シャツの「ロレンツィーニ」とトラウザーズの「インコテックス」で米国市場向けのデザインと企画を9年間担当する。その後、「ラルフ ローレン・パープルレーベル」のデザインを担当。2006年にポール・スチュアートに入社し、「フィニアス・コール」の2007年秋冬コレクションに参加し、デザインディレクターを務める。2014年に新CEOが就任し、ポール・スチュアートのクリエイティブディレクターに指名される。