ポール・スチュアートの歴史を変えるヴィターレ・バルベリス・カノニコとのコラボレーション
イタリア北部ビエラ地方を本拠とするイタリア製ウール服地では最大のファブリックメーカーの「ヴィターレ・バルベリス・カノニコ」(以下VBC)とポール・スチュアートのコラボレーションを記念したイベントを伊勢丹新宿店メンズ館で開催した。VBCブランドアンバサダーでジャーナリストの長谷川喜美さんを司会に、クリエイティブディレクターのラルフ・オリエンマと日本におけるディレクターの鴨志田康人が、VBCを代表する機能性素材を用いたポール・スチュアートのコレクションを語り合った。
Photo. Shimpei Suzuki / Text. Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

ストアネームに加えて「VBC」のタグも付いた歴史的コレクション
VBCは1663年創業のファブリックメーカーで、最高品質の原毛の買い付けから紡績、染色、機織、仕上げまでを一貫して自社工場で行い、輸出先は90か国を超える。耐久性に優れ高品質なVBCの生地は、軽くなめらかな肌触りで、イタリア製生地らしい発色と光沢の良さも特徴だ。
今回のVBCの機能性ファブリックを用いたポール・スチュアートのスーツ、ジャケット、コートは全国48店舗とオンラインストアで取り扱われているが、ポール・スチュアートがファブリックメーカーの名前を公表したコラボレーションも大きなトピックとなっている。

ポール・スチュアートの比類なきスタイルに映えるVBCの魅力
鴨志田康人(以下鴨志田) ポール・スチュアートはアメリカのメンズウェアを代表するブランドで、長くセレクトショップの仕事をしてきた自分たちにとって素晴らしいお手本です。特に、ポール・スチュアートの基本方針のひとつに、「ファブリックメーカーやファクトリー名を決して出さない」というのがあります。それによってポール・スチュアートのストアネームが信頼を得てきました。それが、今回のVBCとのコラボでは、メーカータグを付けたアイテムが展開されています。これは画期的なことですよね。
ラルフ・オリエンマ(以下オリエンマ) 1938年に創業したポール・スチュアートは、40年代後半までは買付先の名前を出していましたが、58年にクリフォード・グロッドが社長になってからは一切名前を出すことがありませんでした。

鴨志田 クリフォード・グロッドさんはポール・スチュアートにとって伝説的な人物ですね。
オリエンマ クリフォード・グロッドは、アイビーリーガーのための紳士服店だったポール・スチュアートを、クラシックなアングロ・アメリカンスタイルを代表する有名店へ変えるなど、発展に大きく貢献しました。また、イギリスやイタリアをはじめ世界中から選りすぐった上質の商品をストアネームを付けて展開しました。
鴨志田 他社とのコラボレーションは、ラグジュアリーの演出には効果的だったのでしょうね。ラルフにとって今回のVBCとのコラボのポイントは何ですか。
オリエンマ VBCは、信頼がおけるファブリックメーカーで、革新的なファブリックを作り続けています。特に今回採用した機能性ファブリックの「SUPERSONIC(スーパーソニック)」と「Earth,
Wind & Fire(アース、ウィンド&ファイアー)」は、現代のビジネスマンのパフォーマンスとポール・スチュアートに非常に適した生地だと思います。

ラルフ・オリエンマが“自分が着てみたい”スタイリング
オリエンマ 今日は「シンプルだけど非常にエレガント」なコーディネートを組んでみました。クラシックなNYスタイルを代表するネイビーブレザーとホワイトフランネルを組み合わせて、30年代のハリウッドのムービースターであるフレッド・アステアやケーリー・グラントをイメージ。ピンクのシャツにタイドアップして、ブラウンのスエード靴を合わせたのは、“ミスター・ブラウン”鴨志田さんに敬意を表しました。全体的にグラマラスでソフィスティケーテッドされたスタイリングになっていると思います。




鴨志田康人が“自分が着てみたい”スタイリング
鴨志田 クラシックというのは基本がきちんとあって、アレンジにパーソナリティが出るのが魅力ですが、ラルフはまさに“ミスター・アメリカ”的な永遠のエレガントさを、1920年代後半から脈々と続くアイテムで上手く表現しています。ラルフ自身もいつもネイビーブレザーを着ていて、そのストイックさがカッコイイのと同時に、スタイリングやコーディネーションで時代感を出すのはさすがですね。
オリエンマ お褒めいただきありがとうございます。鴨志田さんのコーディネートも充分、“ミスター・ブラウン”が発揮されていますよ。



鴨志田 ビジネスマンが着る色は主にネイビーとグレーですが、自分は天の邪鬼な性格で、人と違う格好が好きなんですね。人が着ない色を着て自己主張したいなと思ったときに傾倒していったのがベージュや茶系で、それでミスター・ブラウンなんて呼び方もされています。ワードローブの半分以上が茶系ですが、最近、改めてネイビーの無地がカッコいいなと思って仕立てました(笑)。
オリエンマ 鴨志田さんのネイビー、ぜひ今度見せてください。
鴨志田 このコーディネートは、ハウンドトゥースの少し茶味のある生地が好みですね。着こなしは少しひねって、ベージュのシャツにトレンドのプリントタイを合わせました。茶系はどんな色のシャツでも合うので、Vゾーンの色合わせも自由に楽しめるのが大きな魅力。ぜひ参考にしていただいてスーツの着こなしを楽しんでください。