【AOYAMA FLAGSHIP STORE】CHRISTMAS SPECIAL Vol.3 杉山恒太郎が愛するウイスキーを“トゥワイス・アップ”でいただきながら


 

12月の夕方、「ポール・スチュアート 青山本店」に併設するバー「The COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」を訪れたのは、電通でクリエイティブディレクターとして活躍し、名作として誉れ高いサントリーローヤル(詩人ランボーシリーズ)やピッカピカの一年生(小学館)、“セブンイレブンいい気分”などを手がけたCM界のレジェンド、杉山恒太郎さん。ザ コッパー ルームのオーナー古田浩二さんとの“酒と男とクリスマス”話をお楽しみください。

 

Photo. Tatsuya Ozawa / Text. Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

 

 

人間同士は、向かい合って座るべからず

 

バーは、自分が大学生のときに父親に連れて行ってもらったのが最初です。京都には古くて良いバーがあって、お茶屋にも一緒に行きましたね。父親は遊び人ではなく、堅物なんですが、「こういう店が大人がゆっくり話をする場所」だと教わりました。

 

人って向かい合うと、欠点が見えてきたり、機嫌が悪いと相手のことを探ろうとしたり、必ず最後はケンカになるものなんですが、バーのカウンターは並んで同じ方向(時に同じ目的)を見て話すから、すごくいい距離感がある。だからバーのカウンターが好きなんでしょうね(笑)。バーのカウンターで食事をするのも大好きです。

 

 

12月らしさを楽しむなら、生ザクロを囓りながら……

 

杉山 お酒はウイスキーとワインが好きです。冬のカクテルなら「ジャックローズ(jack rose)」かな。リンゴのブランデーをベースにザクロのシロップを入れて、フレッシュですっきりした味なんですが、タイミングによっては生ザクロで作ってくれる。ザクロの旬は短いので、ラッキーですよ。生ザクロを囓りながら「アブサン」を飲むのもいいね。

 

古田 この店ではあいにく生ザクロのカクテルはお出ししていません。

 

杉山 それなら、身体を温めたいからウイスキーがいいかな。

 

古田 この「KING GEORGE Ⅳ」はいかがですか。今は生産されていないブレンデッドウイスキーです。甘いウイスキーがお好みなら、お口に合うはずです。

 

杉山 良い香りですね。ハチミツの香りだ。こういう良いウイスキーを飲むときの基本は、ちょっと水を垂らして、芳香を楽しむ“トゥワイス・アップ”ですね。

 

古田 香りが広がるのにどうしても時間がかかってしまうので、少量の水を加えることで香りが開きやすくなって、立ち上がってきます。

 

杉山 自分はウイスキーは“フロート(グラスに氷を入れて、水を7分目ほど注ぎ、マドラーに沿わせてウイスキーを注ぐ)”で飲むのが一番粋だと思っている。見ていてもきれいですよ。

 

古田 今はそういう飲まれ方をされる方は少なくなっていますね。今はストレートで飲む風潮です。

 

杉山 ザクロといえば、パリのリッツにあるバー「ヘミングウェイ」で、ヘミングウェイが考案したというアブサンとシャンパンの「Death in the Afternoon(午後の死)」を頼んだら、つぶつぶのザクロがおつまみで出てきたことがありましたよ。ベネチアにある「ハリーズ・バー」も好きでよく行きました。古田さんは「バー巡り」とかされるんですか。

 

古田 私は海外では、コレクターさんと会って飲んでいることが多いですね。

 

杉山 なるほど。


ブレンデッドウイスキー「KING GEORGE Ⅳ」

 

「どこかドレスダウンしていないと格好悪い」派です

 

ポール・スチュアートは、NY本店は何度か行ったことがありますが、東海岸というイメージです。僕はちょうど「VANを背伸びして着る生意気な中学生」のアイビー世代ですが、ブルックスブラザーズに比べてポール・スチュアートは大人のビジネスマンって感じですかね。大人になってからの「ニューヨーカーの洗練された服」というイメージでした。

 

基本はずっとアイビーですが、アンディ・ウォーホルの代表的なスタイルの「紺のジャケットとリーバイス501」がベースにあって、昔は結婚式にもそんな格好で出ていたこともあったね(笑)。紺は万能だと思っていて、でも、どこかドレスダウンしていないと格好悪いので、「どこでドレスダウンをするか」が基本にありました。僕はどこか崩していないと、気持ち悪いんです(笑)。

 

大人になったら、「なぜこんなに夢見がちじゃなくなったんだろう」(笑)

 

クリスマスの想い出ですか? 自分には娘が2人いて、中学生ぐらいまでサンタクロースの存在を信じていたから、「実は僕なんだよ」と明かすのに非常に悩みました。傷つけちゃいけないからね。サンタやトナカイの格好もしましたよ。

 

子供って、「育てているつもりが、育てられている」という言葉がありますが、子供を見ていると昔の自分を思い出して、「自分の考え方が固定化しているな」、「子供ってこういう感じ方をするんだ」というのを思い知らされる。そして、「なぜこんなに夢見がちじゃなくなったんだろう」(笑)と思うわけ。

 

奥さんには特別なモノはないけど、プレゼントは贈っていますよ。今年は自分にはプレゼントしようと思っているけど、それは企業秘密です(爆笑)。

 

 

身体が冷えた最初の一杯目にオススメの酒は?

 

杉山 12月というと、ホットウイスキーが美味しいよね。

 

古田 ホットワインも美味しいですよ。この店ではご用意していないんですが……。そういえば、クリスマスのカクテルってないんですよね。

 

杉山 「ブランデー・エッグノック」はホット系のカクテルですね。

 

古田 そうですね。ただ卵を使うので、食事を出すお店だと飲めるかもしれませんが、今のバーではなかなか難しいです。

 

杉山 それから冬の定番といえば、アイリッシュウィスキーにコーヒーを注ぐ「アイリッシュコーヒー」も美味しです。

 

古田 冬のフランスのカフェのテラスで、上品な男性がカルバドスやコニャックのショットとコーヒーを注文して、ショットを注ぐ分だけコーヒーを飲んで、カップにお酒を加えるのはよく見ますね。

 

杉山 朝のパリでエスプレッソにブランデーを入れて、角砂糖をつまみにして飲むのも、すごく身体が温まるし、かっこいい!

 

 

これからの夢は「バーマン」。246に背を向けて酒を飲んでいるのはとても非日常的

 

年末が押し迫っていますが、東京の感染は心配ですね。僕たちの世代は目の前でどんどん世の中が変わっていった世代で、パンデミックが14世紀にイタリアで始まり、ルネッサンスを興した原因の一つと言われますが、今は秘かにルネッサンスが興きているのかなとも思います。

 

STAY HOMEで改めて自分のことを考えたり、死を身近に感じたり、一生ってなんだろうと考えたり、みんな「小さな哲学者」になっている。固定化されている時代は、際だった才能は出てこないものですが、自分と向き合うことがあると、次にスゴイ才能が間違いなく生まれるものです。きっと新しい才能が出てくるのでしょう。

 

バーテンダーは独特の存在ですが、男は「いつか都会のバーマンになりたい」と夢見るものです。映画『シャイニング』(1980)に出てくるバーマンが理想なので、ぜひ映画を観てください。バーって「小さな非日常」ですよね。私たちは日常に囲まれているから、ふっと非日常のところに行きたくなるでしょ。そして、和ませてくれる。このバーは、246に背を向けて酒を飲んでいるので、とても非日常感があります。

 

バーマンになったら? カウンターを挟んで「若者をいじめたい」(笑)。自分がそういう大人たちに鍛えられてきましたからね。頑固ジジイのバーがあってもいいよね。

 

 

ポール・スチュアート 青山本店
TEL 03-6384-5763
〒107-6601 東京都港区北青山二丁目14-4 ジ アーガイル アオヤマ 1F
営業時間 11:00~20:00
併設するバー「The COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」
営業時間 18:00~24:00
※12/17(木)〜1/11(月)まで16:00〜22:00

Profile:杉山恒太郎(すぎやまこうたろう)
ライトパブリシティ 代表取締役社長

東京都生まれ。立教大学経済学部卒業後、電通に入社。クリエイティブディレクターとして活躍。1999年よりデジタル領域のリーダーとしてインタラクティブ広告の確立に貢献。電通取締役常務執行役員を経て、2012年4月ライトパブリシティへ移籍。2015年4月より現職。2017年経済同友会加入。カンヌ国際広告賞 国際審査員、大阪芸術大学客員教授。
主な作品に、小学館「ピッカピカの一年生」、セブインイレブン「セブンイレブンいい気分」、サントリーローヤル「ランボー」、ACジャパン「WATER MAN」他、国内外の広告賞受賞多数。2018年第7回クリエイターズ殿堂入り。