【Paul Stuart Culture CLUB ① MAGAZINE】 古書店『magnif(マグニフ)』店主、中武康法さんが解説 ファッション雑誌から読み解く、トラッドの源流(後編)
様々なカルチャーとファッションとの関係性を紐解く新連載【Paul Stuart Culture CLUB】の1回目として登場していただいたのは、神保町・すずらん通りにある雑誌を専門に扱う古書店『magnif(マグニフ)』の店主、中武康法さん。服飾メーカーのデザイナーやファッション雑誌編集者、専門学校の生徒たちが足繁く通う店には、貴重なファッション関係のヴィンテージマガジンが満載です。前編ではメンズファッションの原点というべき1931年発行の雑誌から、80年に発行されたプレッピーの指南書までの流れをご紹介。後編では、日本のファッションシーンをリードしてきた人気雑誌を取り上げます。
Photo. Yoshimi Seida / Text. Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN
「さあ、ボクたちの80'sアイビーを考えよう」というかけ声で始まった『POPEYE(ポパイ)』のアイビー特集
1980年(昭和55年)1月10日号の『POPEYE(ポパイ)』70号の特集は、「THE IVYBOOK これがポパイのアイビーだ!」です。メンズのアイビー・トラッドを牽引してきた『MEN’S CLUB』がアイビーリーグ校がある東海岸寄りだったのに対抗して、創刊から西海岸に着目してきた『POPEYE』なのですが、78年のヴァンヂャケット倒産辺りからアイビーに接近し、この号は満を持しての特集号となっています。
『POPEYE』3,000円(税抜)
一冊丸ごとアイビー特集で、「ここに行けば本物に会える」という特集ではNYの現地取材を敢行。ポール・スチュアートももちろん載っていますね。他にもラルフ・ローレンの紹介なども見ごたえがあります。
店頭では、最近、「フレンチアイビー」のことを聞かれることが多くて、『POPEYE』の1984年(昭和59年)9月25日号も紹介したかったのですが、あいにく手元になくて残念です。
ポパイの彼女版として登場した『Olive(オリーブ)』は、「Lady's IVY(レディス・アイビー)を特集
1982年(昭和57年)10月3日号、まだ第9号の『Olive(オリーブ)』で巻頭を飾るのは、「IVYプラスデザイナーブランドがオリーブのアイビーです」というファッション特集。松山猛さんが「女性のIVYを追求したらココ・シャネルを発見する」というエッセイを書いていたり、「お洒落が気になる女のコは、みんなIVYだった」という記事もあります。『Olive』がリセエンヌになる前なので、ポール・スチュアートのアイテムもたくさん載っています。
『Olive』2,000円(税抜)
イギリスからアメリカに渡った「アングロアメリカン」スタイルは、リラックスした大人のトラッド
トラッドの本家『MEN’S CLUB』の1990年(平成2年)5月号、352号の特集は「アングロアメリカンスタイルブック」。90年代に入って、「90年型トラッドはアングロアメリカンで決まり」、「アングロアメリカンを着こなすためのカタログ75」なども、いかにもメンクラです。
また、1992年(平成4年)5月号、376号では、アメリカン・ベーシックの復権「東海岸スタイルのすべて」を特集。イギリスから東海岸のニューイングランドを経由してアメリカで育ったアメリカントラディショナルを新しい視点で捉えています。
『MEN’S CLUB』各1,000円(税抜)
2000年代に入って、ファッションがストリート、モード、ラグジュアリーなどに細分化されていった時代
2000年代、多様化するファッションシーンを視覚化していた雑誌の一つが『HUGE(ヒュージ)』です。モードとストリートを融合し、やがてアートや様々なライフスタイルについても垣根なくミックスして紹介していました。もちろんトラッドスタイルにも言及し、2005年、2007年、2008年と複数回にわたって特集を掲載。トム・ブラウンなどの新しいアメトラブームもこの頃です。
『マグニフ』は2009年オープンで、今年で12年目を迎えます。オープン当時を思い出すと、「MEN’S CLUB」のバックナンバーが欲しいというお客さんが多かったですね。
『HUGE』各800円(税抜)
80年代、90年代初頭のポール・スチュアートのカタログも発見!
ポール・スチュアートカタログ 1986年秋冬1,500円、1990年秋冬1,000円(ともに税抜)
店頭のストックの中に、ポール・スチュアートの86年と90年秋冬シーズンのカタログを見つけました。ポール・スチュアートは、英国寄りのアメリカントラッドブランドという印象で、大学生向けではなく、ニューヨーカーのエスタブリッシュがビジネスで着用する服というイメージですね。
トラッドなアイテムは、その人の趣味性や好みなど、その人の内面に関わってくる
駆け足でメンズファッションの源流から、トラッド・アイビーの成熟までをご紹介してきましたが、時代が変わっていく中で、「これを残したい」と継続されているものがトラッドだと思います。流行によって多少の変化はあるものの、いつ見ても良いなと思えるものがあります。
それは没個性的な見方をされるかもしれませんが、むしろ逆で、ルールが決まっている分、あとはその人の趣味性や好みなどがわかりやすく反映されるのではと思います。人間性の表れる服、それがトラッドだと思います。
magnif(マグニフ)
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OPEN:11:00~19:00(定休日:不定休)
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