【Paul Stuart Culture CLUB ② MUSIC】 「ポール・スチュアート 青山本店」のために松浦俊夫が選んだ音楽


 

「新しいポール・スチュアート 青山本店にふさわしいBGMを選ぶとしたら……」というテーマに挑んでいただいたのは、音楽プロデューサーでDJ・選曲家として活躍する松浦俊夫さん。メンズ、ウィメンズ、そしてバーのそれぞれにふさわしいアルバム・楽曲をチョイスしていただきました。「曲は、お店の空気感も含めて選びましたので、ぜひYouTubeのリンクから聴いてください」とメッセージ。様々なカルチャーとファッションとの関係性を紐解く新連載【Paul Stuart Culture CLUB】の第2弾は「MUSIC」です。

 

Photo. Shimpei Suzuki / Text. Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

 

 

メンズ・ウィメンズ・バーのために選んだのは、昨年リリースされたフレッシュな曲

 

表参道にあった旧店はシックで格好良かったのに比べて、外苑前の新しいポール・スチュアート 青山本店は、以前のイメージより明るくモダンになって、コンパクトにまとまっていて商品も見やすいと思います。店内奥にバーがあるのも大人の隠れ家的で、上手に使えば楽しみ方が広がりますね。

 

ポール・スチュアートといえばNYですが、僕が初めてNYへ行ったのは90年代初頭で、“これが人種のるつぼのNYなんだ”というインパクトがありました。人の賑やかさやクルマの喧噪など、街にあるノイズがまさにNYの音で、根底に自由な思想とアートフォームがありつつ、ノイズが音楽に繋がっているというイメージが強くあります。

 

今回セレクトしたミュージシャンやアルバムは、初めて聴く人にも、肌触りとしては懐かしい感じもあることをポイントに、2020年にリリースされたばかりのアルバムや楽曲から選びました。

 

 

【MEN’S】JARROD LAWSON『BE THE CHANGE』
いろいろモヤモヤしている中で、スーッと入ってきたとても心地良い音楽

 

メンズのBGMとしてお薦めするのは、JARROD LAWSON(ジャロッド・ローソン)の6年ぶりのニューアルバム『BE THE CHANGE』で、音楽通の中では評価の高いアメリカの若手シンガーソングライターの2作目です。

 

 

ポール・スチュアート 青山本店ではオーセンティックなジャズが流れていますが、そこに少しひねりを加えて、白人でゴスペルを歌っていたという経歴を持つジャロッド・ローソンを選びました。日本のリスナーからするとAORを感じるのが、ポール・スチュアートとの接点があるようにも思います。

 

自分は仕事柄、時代の先を行く先鋭的な人や曲を中心に探したり、聴いたりしていますが、このアルバムは幅広いリスナーに受け、昼でも夜でもフィットするのが心地良いですね。一年近く続くコロナ禍でモヤモヤしている皆さんにぜひ聴いてほしいです。

 

 

【WOMENS】SUZANNE VEGA『An Evening of New York Songs and Stories』
30年以上に渡って我が道を貫いているスザンヌ・ヴェガのライブ盤がカッコいい

 

スザンヌ・ヴェガは80年代から活躍している女性シンガーソングライター・ギタリストで、今回ウィメンズのBGMで選んだのは、NYをテーマにした最新ライブレコーディングアルバム『An Evening of New York Songs and Stories』です。

 

 

スザンヌ・ヴェガの名前を知っている方は多いと思いますが、30年以上、我が道を行く女性アーティストで、このアルバムの収録曲では、彼女の亡き友ルー・リードの「Walk on the Wild Side」がとてもカッコいい。ラジオやDJでかけると、「え、なに?」という反応が返ってきます。

 

2019年にNYのカフェ・カーライルで行ったライブレコーディングですが、歓声以外の現場の空気感が、聞こえてこないけど感じることができるのが、ライブ盤の魅力ですね。

 

 

【BAR:The COPPER ROOM】KURT ELLING『STEPPIN' OUT』
ジョー・ジャクソンの名曲をジャズヴォーカリストがアレンジして“夜感”がアップ

 

ジョー・ジャクソンが1982年にリリースして大ヒットしたアルバム『NIGHT AND DAY(ナイト・アンド・デイ)』。当時彼は離婚直後にNYに移り住んで、NYの生活の昼と夜を録音して作ったアルバムです。そんなNYにまつわるストーリーと、バーにフィットする音楽ということで、アルバム収録曲の「STEPPIN' OUT(ステッピン・アウト)」を2011年にジャズヴォーカリストのカート・エリングがカバーしていたジャズ・ヴァージョンを選びました。

 

 

この7インチEPは、11月3日の「レコードの日」に、自分が担当するInterFM897「TOKYO MOON」の10周年を記念したアナログ再発プロジェクトとしてリリースしたもので、世界初アナログ化の限定盤です。いぶし銀のジャズヴォーカリストが名曲「STEPPIN' OUT」を歌い上げることで“夜感”が増して、バーに相応しいと思いセレクトしました。

 

 

コロナ禍の生活の中で、「何か足りない=音楽」だったと気づいた人が多い

 

長く続くコロナ禍で、音楽や演劇などいわゆるエンターテイメントは不要不急だと言われていますが、ニューノーマルに変わっていく暮らしの中で、「音楽に救われた」という声はよく聞こえてきます。「会社では音楽は聴けないが、リモートワークで音楽を聴きながら仕事をしたら気持ちが落ち着いた」など、「音楽はなくてもいいものだけど、実は重要なものだった」ということに多くの人が気づきました。

 

自分が参加するインターネットラジオ「WW TOKYO」も世界中のリスナーがロックダウンの時に一気に増えるなど、コロナ禍の不自由な生活の中で「何か足りない」ものが「音楽」だと気づき、自分のライフスタイルの中に音楽も一つのエレメントとして加えていく人が増えています。僕自身も、ものすごく真剣に音楽を聴くようになり、「気合いを入れてリラックスして」聴いていますね。

 

今回、昨年リリースされた新しい音楽の中から選んだ理由は、新しく魅力的な音楽はどんどん生まれてきているので、音楽から遠ざかっていた人にも新しい時代を感じてほしいことと、今だからこそ「自分の中の欠けたピースに、音楽という新しいピースを入れていくチャンス」だと感じてほしいという願いも込めました。そういう入口にしていただけたらうれしいですね。ポストコロナでは、「自分自身が新しくなっていくことが大事」なことだなと最近実感しています。

 

 

ポール・スチュアート 青山本店
TEL 03-6384-5763
東京都港区北青山二丁目14-4 ジ アーガイル アオヤマ 1F
営業時間 11:00~19:00
併設するバー「The COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」
営業時間 14:00~20:00(※ラストオーダーは19:00)

 

 

Profile
松浦俊夫(まつうらとしお)

音楽プロデューサー・DJ・選曲家

1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。5作のフルアルバムを世界32ヶ国で発表し高い評価を得る。2002年のソロ転向後も国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。またイベントのプロデュースやファッション・ブランドなどの音楽監修を手掛ける。2013年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクトHEXを始動させ、Blue Note Recordsからアルバム『HEX』をリリース。
2018年、イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーしたプロジェクト、Toshio Matsuura Groupのアルバムをワールドワイド・リリース。

InterFM897 「TOKYO MOON」(毎週日曜17:00)
Gilles Peterson’s Worldwide FM 「WW TOKYO」(第1&月曜21:00) 好評オンエア中。
http://www.toshiomatsuura.com/