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【ウィメンズディレクター宮下厚子の秋冬コレクション解説】
移ろう季節のささやきに耳を傾けて。


ときには進みつ戻りつ、ときには一足飛びに。まるでステップを踏むように、季節は日々移り変わっていきます。自然の呼吸を感じながら都市を往来し、モダンとクラシックの間をたゆたうような装いに身を包むーーそんな暮らしをイメージして、「Whispers in Transit」というシーズンテーマを2026年秋冬のコレクションに託しました。
穏やかな変化を楽しむ、知的な女性のワードローブ
四季の区別が曖昧になりつつあるといわれる現在も、気づけばいつしか影は長くなり、朝に流れる水は冷たく感じられます。そんな淡い変化も敏感に察知して、季節の情緒を込めた装いを楽しむ。ポール・スチュアートでは一貫して、そんな感性を大切にしてきました。シーズンテーマのWhispers in Transitとは、連綿と続く日々のなかで感じる季節や街並み、人々の気配といったものの穏やかな変化を、時の流れに響く静かな声に喩えた言葉です。クラシックをベースにしつつもさりげないアップデートを続ける、ポール・スチュアートのフィロソフィにも重なるフレーズではないでしょうか。

プレッピーテイストでいまのムードを表現
知性と気品を備えた大人の女性のためのワードローブという基軸は、今季のコレクションでも踏襲しています。そのうえで“いま”の空気を託したのは、プレッピーなエッセンス。ペイズリーやアーガイル、フェアアイルといった柄をハイライトにしています。とはいえ、モダンに感じさせるアレンジも効かせました。たとえばフェアアイルベストなら、ゆったりとしたシルエットとグレーを基調とした配色でアップデートを行なっています。トラッドスタイルの定番であるブレザーは、ブラウンの別珍素材で新鮮さをプラスしました。レトロ調プリントのワンピースで、クラシカルに着こなすのがおすすめです。

ドレスやブラウスに採用しているペイズリーは、プリントではなくカットジャカードで立体的なテクスチャーを加えています。コーディネートとしては、“韻を踏む”イメージで色や柄のリンクを意識しました。柄色を拾ってアウターと合わせたルックや、セットアップとブラウスをチェック・オン・チェックでコーディネートしたルックを組んでいます。今季はスカーフやベルト、ヒールでエレガントなスパイスを加えているのもポイントですね。首元・ウエスト・足元にアクセントをつけることで、装いに生まれるリズム感を表現しました。

今季は新しいアイテムも登場します。“ドレスコート”と名付けた一着は、ワンピース感覚でもアウターとしてもお召しいただけるのが特徴。フロントはボタンを隠した比翼仕立てで、ウエストベルトを採用しています。背中にはトレンチコートなどに見られるアンブレラヨークをしつらえました。ドレープが美しい生地を使っているので、カットソーなどの上に羽織っていただいてもいいですね。

秋口から初冬に登場するアイテムは、軽やかな素材にシックな色みをかけあわせて季節感を表現していますが、冬本番のルックはパステルカラーなど明るい色みを積極的に取り入れました。素材やシルエットにボリューム感が出てきますので、重く見えないように意識しています。

シーズンカタログのビジュアルでは、本を読んでいる様子やソファに腰掛けているところなど、ライフスタイルをイメージさせる写真を取り入れました。ポール・スチュアートとしては珍しいアプローチですね。アメリカを代表する文化都市・ニューヨークで生まれ、その歴史を紡いできたブランドですから、カルチャーや知的なムードを感じさせる表現にトライしてみました。

ご覧いただくとわかるように、ドラスティックな変化よりも穏やかなアップデートを基調としたコレクションになっています。日々移ろいゆく季節のように、ベーシックを少しずつアップデートしながらゆったりとした変化を重ねていく。そんなスタイルがポール・スチュアートの真骨頂ですね。(談・宮下厚子)