【Paul Stuart 2024 FALL&WINTER COLLECTION】 ─メンズ&ウィメンズディレクターが語る秋冬シーズンカタログ─ 生きている楽しさを、装うことの面白さを、多くの人に伝えたい


 

 

皆さまのお手元に届いたポール・スチュアートの秋冬カタログをめくりながら楽しんでいただける、恒例の「ディレクターによるカタログ解説」。
今回は、今シーズン着任したウィメンズのディレクター宮下厚子が初登場です。メンズのディレクションを担当する鴨志田康人も、ウィメンズの宮下厚子も、お客様に伝えたい思いは同じ。メッセージを受け取っていただき、新しい季節の到来を楽しみましょう。

 

Photo. Yoshimi Seida / Text. Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

 

 

【Paul Stuart men】すべての男たちに、ドレスを愉しむ人生を

 

―鴨志田さんがメンズディレクターになって、2024年秋冬シーズンで10シーズン目を迎えました。これまでの道のりはいかがでしたか?

 

鴨志田康人(以下、鴨志田) 1930年代にある程度完成されたスーツはもう100年の時を生き残っています。もちろん、形やディテールは時代によって微妙な差異、さじ加減、ニュアンスがあって、スーツが持つ普遍性と、時代とともに変わっていく様が深くて面白い。だからテーラードの世界が大好きです。
ディレクターとしては、新しい着こなし方や崩し方、色使いの提案をはじめ、肩幅・身幅・パンツの裾幅など、ディテールの変化でも、時代の気分を表したいと思っています。
スーツは時代が変わっても、常に時代を象徴するものなので、コーディネートの“ツイスト=ひねり方”を効かせたいと挑んできた10シーズンでした。

 

 

 

ポール・スチュアートを“濃く”したい

 

―そういう道のりの中で、ポール・スチュアートをどう表現したいと思っていますか。

 

鴨志田 まず、自分が若いときに感じたポール・スチュアートのインパクト、あのシビれる感じを表現したい。ポール・スチュアートには、典型的なアメリカン・クラシックとは違うオシャレと刺激があります。
トラッドやクラシックは時に凡庸になりがちですが、表層的な派手さではなく、今の気分を乗せて、男性のスタイルを表現していきたい。クラシックを鴨志田流の解釈で、ユニークでオリジナリティがある、他にはない服を提案していきたいですね。

 

ポール・スチュアート メンズ2024年秋冬コレクションカタログより

 

 

2024年秋冬シーズンのテーマは、「The Dapper」

 

―では、今シーズンのテーマ「The Dapper」について教えてください。

 

鴨志田 ポール・スチュアートは、“ビジネス・エグゼクティブに向けた社会性のある服”というのを真ん中に据えていますが、ブランドのもう一つの役割として、文化的でカルチャーを感じさせるスタイルを表現することも重要です。
今シーズンは、“もっと自由に遊んで着てほしい”という思いを込めて、「The Dapperな男たち」をテーマにしました。
The Dapperは日本語にすると、小粋な、軽快な、こざっぱりしていると解釈できますが、たとえば、英国のミュージシャン、ポール・ウェラーのように、ドレスアップをするというより、古着なども混ぜながら、遊び感覚でジャケットやスーツを着て、革靴を履いて、さり気なく、こざっぱりした雰囲気を醸し出す……、それが今の気分です。
男性は、時代や流行などいろんなものを超えて揺るがない世界に憧れますが、その中でも男のスタイルとしていろんな着こなしがあることを「The Dapper」で表現しました。

 

 

―秋冬カタログを見ると、カタチにとらわれないでドレスを楽しんで着ている男たちがいます。

 

鴨志田 これまでポール・スチュアートのシーズンカタログは、テーマや世界観を出しやすいロケーションで撮影してきましたが、今シーズンは「スタイルそのものをストレートに見てほしい」と思い、スタジオで撮影。
背景がない中で、いろんなタイプのモデルを使って、ユニークなキャラクターを浮かび上がらせるのが狙いでしたが、良い雰囲気で出来上がりました。

 

―特にシンボリックなスタイリングは?

 

鴨志田 自分が気に入っているのは、ワークジャケットベースにした「choreジャケット」(下写真・左)です。“テーラードジャケット未満”のややカジュアルなデザインですが、ドレッシーな素材を使って、チーフを挿すなどいろんな楽しみ方ができるジャケットになっています。

 

ポール・スチュアート メンズ2024年秋冬コレクションカタログより

 

 

もう一着は、ロング丈のカナディアンコート(下写真・中央)。オリジンはお尻が隠れるぐらいの丈ですが、膝丈のレングスにしてロングコートに仕上げました。
今シーズンのテーマ「The Dapper」は、「このコートを作りたい」というのが起点となってコレクションが広がっていったので、The Dapperを象徴するコートです。

 

ポール・スチュアート メンズ2024年秋冬コレクションカタログより

 

 

―では、新しいオシャレのシーズンを迎えるお客様にメッセージを。

 

鴨志田 ドレススタイルを装うことは、知識やキャリアが必要で、壁が高く感じるかもしれませんが、メンズの服は年齢は関係ありません。若い世代には好奇心を持って触れてほしいし、40代・50代の働き盛りには、今ドレスを着る楽しさを味わってほしいと思います。

 

 

【Paul Stuart women】袖を通すときに、豊かな気持ちになれる洋服を……

 

―ポール・スチュアートのウィメンズのディレクターに就任されて初めてのインタビューになります。宮下さんは長く女性のキャリア系ブランドを手がけられてきました。

 

宮下厚子(以下、宮下) 働く⼥性の着こなしやスタイルの変化を捉えながら、時代に応じたコレクションを提案してきました。私がデザイナーとして働き始めた頃と比べて、今は⼥性が⾃信を持って働ける環境があり、能⼒に応じた⽴場も得られ、⾃分の魅⼒を表せる時代になったと思います。別な言い方をすれば、⼥性が本格的に活躍する時代になったということではないでしょうか。

働く⼥性の着こなしの⾃由度も高くなっていますが、ポール・スチュアートのシグニチャーアイテムにもなっているジャケットは外せません。品のある素材で丁寧に作られた着⼼地の良いシルエットを⼤切に、肩肘の張らないジャケットにしたいと思っています。

 

―ポール・スチュアートのブランドの印象は?

 

宮下 ポール・スチュアートとの初めての出会いは、NYの本店で、若い頃に頑張って購⼊した白いボタンダウンのシャツです。「トラッドのニュアンスのあるクラシックな服」の印象がありましたが、洗練された大人の香りに惹きつけられたことを覚えています。その時の思いに今の時代感を加えて、エレガントなクラシックの中にも、ひと雫(しずく)のモダントラディショナルを重ね合わせたブランドにしていきたいです。

ディレクターとしてはチームとの協業で、よりポール・スチュアートらしい、あるいは新しいポール・スチュアートといったケミストリーが起こるきっかけを提案していきたいと思います。

 

 

 

2024年秋冬シーズンのカタログで表現したかったこと

 

―新しいシーズンカタログが出来上がりましたが、出来映えはいかがですか?

 

宮下 私がディレクターになって初めてのカタログ制作でしたが、制作スタッフが信頼できる旧知であったこと、“強い意志と女性らしさを持ち合わせている”モデルをキャスティングできたこと、背景を削ぎ落としたスタジオ撮影にしたことで、洋服によりフォーカスでき、ポール・スチュアートの新たな一面を見ていただけるカタログになったかと思います。

 

―シーズンテーマの「LAYER OF SEASONS」のことを教えてください。

 

宮下 LAYER(レイヤー)は「重ねる」という意味ですが、重なってできる色や素材の陰影、アイテムの重ねで表現できる⾃分の個性など、変化する表情や気づきをテーマに込めました。あわせて、季節のうつろいにマッチするレイヤードアイテムを展開しており、カタログのコーディネートを参考にしていただけるとうれしいです。

 

上質な素材や色を重ねて、“韻を踏む”ファッションが好き

 

ポール・スチュアート ウィメンズ2024年秋冬コレクションカタログより

 

 

―上の写真のスカートは、いままでのポール・スチュアートにはない新鮮なアイテムです。クラシックな中に大人のエレガンスを感じますね。

 

宮下 そうですね、今までならプリントのスカートを合わせていたでしょうか。メンズの丁寧な物づくりを参考にして作ったブランドを象徴するハンサムなネイビーブレザーには、⾼密度で織られたコットンブロードを贅沢に使⽤したスカートと、ソフトなロンドンストライプのボウタイブラウスを合わせ、フレッシュなエレガンスを目指しました。ニュアンスのあるボウタイの結び⽅やレイヤードした朱色のカーディガンがアクセントになっています。

 

ポール・スチュアート ウィメンズ2024年秋冬コレクションカタログより

 

左上は、クラシックなガンクラブチェックのジャケットですが、エレガントさを表現したく軽く仕上げています。シアー感のあるブラウスとプリーツスカートをコーディネートしていますが、秋の始まりはTシャツで、深まった秋にはブラウスのインナーにハイネックニットなどを重ね、シーズンを通して着用していただけます。

右上は、光沢のある上質なウールのジレに白いシャツをレイヤードして、凛としたスタイ リングに。重くなりがちな秋冬のコーディネートの中に白のアクセントを⼊れることで全体が引き締まります。

 

ポール・スチュアート ウィメンズ2024年秋冬コレクションカタログより

 

上はどちらも、ポール・スチュアートならではの上質なカラーリングと素材の手触りを感じられるスタイリングです。同じ色でも素材により表情が違うので、奥⾏きのあるコーディネートが完成しました。

左上は、ボリュームのあるニットの同素材レイヤード、全体的な⾊数は抑えていますが、ニットと同系色のストールと靴の色に“韻を踏んで”変化をつけています。

右上は、カシミヤを入れたコートとニットですが、表面の表情に違いを持たせてそれぞれの陰影を変えています。単調になりがちなコートのコーディネートにはインナーにひと 工夫を。上質で、長く着られて、⾊褪せないアイテムは、モノを⼤事にすることに通じて、サステナブルにも繋がりますね。

 

エレガントな中にひそむモダンさを、試着して感じてください

 

―では、新しいオシャレのシーズンを迎えるお客様にメッセージを。

 

宮下 洋服は肩幅やウエストの高さなど、ほんの少し変化するだけでその時代を映し出します。季節を感じながら、袖を通したときに豊かな気持ちになれるポール・スチュアートでありたいと思います。

今シーズンは基本を⼤事にしながら、定番のジャケットやパンツもパターンを⾒直しました。今までを大切にしながら、ほんの少しの新しいことへ挑戦していきます。実際にご試着いただき、エレガントな中にひそむモダンさをぜひ感じてください。新しいご自分を発⾒できるお⼿伝いができたらこれ以上うれしいことはありません。

 

 

ポール・スチュアート青山本店「JAZZ CONCERT」開催

8月31日(土)14:00~14:30と15:00~15:30の2回、ポール・スチュアート青山本店でジャズコンサートを開催します。無料でご覧いただけますので、ぜひご来店ください。
詳細はこちら

ポール・スチュアート 青山本店
TEL 03-6384-5763
東京都港区北青山二丁目14-4 ジ アーガイル アオヤマ 1F
営業時間 11:00~20:00
併設するバー「THE COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」
18:00~24:00 ※同一テーブルでの会食は4人以内