これだけは押さえておきたい
“フォーマル度”の基礎知識
スタイルに適した革靴を選ぶ際に欠かせない視点が“フォーマル度”。デザイン・色・素材の掛け合わせによって決定される、非常に複雑な概念ですが、とりあえず押さえておきたいポイントをここでご紹介。
Level★★あたりまでは必修事項といえますので、ビギナーはぜひチェックされたし。
ライター
細谷 駿人
埼玉県生まれ。メンズファッション雑誌で編集として勤務し、2018年に独立。ファッションメディアを中心に時計や美容の編集／ライターも務め、カタログや広告のディレクションも手がける。ごりっごりのゆとり世代のお調子者(笑)。
三陽山長 日本橋髙島屋S.C.店 店長
上村 哲平
高身長のすらっとしたスタイルに爽やかな笑顔が特徴の店長。ファッション好きがこうじて三陽山長に入社し、その後革靴の沼にハマってその暦なんと16年。休日問わずに革靴を履き続けるほどにどっぷり浸かり、今では革靴を履かない日の方が違和感を感じるとか。
スタイリスト
五十嵐 堂寿
長野県生まれ。2011年に独立し、雑誌やカタログなど多くのファッションメディアの他、アーティストや俳優のスタイリングも多数手がける。若者から大人、ドレススーツからストリートまで、年齢層もジャンルも幅広いマルチなスタイリスト。
革靴のコーディネートは、
フォーマル度の理解が基本
たとえば上の２足。革靴知識ゼロの状態で見ると、どちらもほとんど同じ“黒い革靴”に見えるはずです。しかし左のストレートチップは、ドレスシューズのなかでも極めてフォーマル度の高いデザイン。かたや右のUチップは、カジュアル専用の靴に位置づけられます。ゆえに、前者はカッチリとタイドアップしたスーツスタイルに、右はジーンズやカントリーコートなどと相性抜群。逆はちょっと考えにくいはずです。
昨今は装いの自由化が進み、“このスタイルにはこの靴を合わせるべし”というルールもかなり薄れてきました。とはいえ、基本を知ったうえであえてハズすのと、考えなしにセオリーを破るのとでは大きな違いが出てくるはず。革靴コーディネートの大基本であるフォーマル度を知っておくに越したことはないのです。
Level★
「内羽根」はフォーマル、
「外羽根」はカジュアル
靴のフォーマル度を決定づける最大の要素が“羽根”の構造。靴紐を通す穴をレースステイよび、レースステイが並ぶパーツを羽根といいます。これが甲と一体化しているもの（左上）が「内羽根靴」、甲の上に被せるような形で付いているもの（右上）が「外羽根靴」とよばれます。前者はフォーマル、後者はカジュアル靴とみなされ、これによって靴の位置づけが大別されるというわけです。
Level★
「黒」はフォーマル、
「茶」はカジュアル
羽根の構造と並んで靴のキャラクターを左右するのが革の色。同じデザイン・同じ風合いの革なら、黒のほうがフォーマルとみなされます。
たとえば上の２足は全く同じモデルで、ともにカーフというスムースレザー製。どちらもスーツやジャケット＆パンツスタイルに合わせる靴ですが、左はパリッとしたドレッシーなスーツスタイル、右はリネンスーツや起毛素材のスーツなど、ややカジュアルなスーツ＆ジャケットスタイルにマッチします。ちなみにかつては、“イギリスでは都会で茶靴を履かない”というセオリーもありました。
Level★★
「穴飾り」が少ないほど
フォーマル
革靴にはさまざまな穴飾りが施されることがあり、そのデザインごとに「セミブローグ」「フルブローグ」などといった名前が付けられています。基本的には、穴飾りが少ないほどフォーマル。
たとえば上の4足だと、一番左の「ストレートチップ」はタキシードにも合わせられる最もフォーマルな靴、左から2番めの「パンチドキャップトウ」はドレッシーなスーツやジャケットスタイルに、トウに紋章のような穴飾り（メダリオン）が施された「セミブローグ」はタイドアップしたスーツやジャケットスタイル全般に、右端の「フルブローグ」はノータイスタイルに合わせるのが定石となります。
Level★★
「スムースレザー」はフォーマル、
「スエード」はカジュアル
上の2足はともにストレートチップとよばれるデザイン。普通は表面がスムースなカーフで作られるもので、前述のとおり冠婚葬祭まで通用する最もフォーマルな靴となります。しかし同じストレートチップでも、右のようにスエードとなると話は別。
こちらはどちらかというとハズシの足元という印象が強くなり、カジュアル靴という分類になります。スエードはカントリーやスポーツに由来する素材だから、というのがその主な理由です。ちなみに同じくカントリー由来の型押しレザーもカジュアルな靴という立ち位置。
Level★★★
靴底は薄いほうが
フォーマル
ウィメンズシューズの場合、ヒールの高さによってフォーマル感が変わってきますが、メンズの革靴においては靴底全体の厚みに注目。
左のように薄いレザーで作られた靴底はフォーマル度が高く、右のように厚底のものはカジュアルな顔つきになります。ちなみに右のソールはラバー製。同じくらいの厚みでレザーソールのものもありますが、どちらも同様にカジュアルな靴といえます。
Level★★★
フォルムが細いほうが
フォーマル
こちらは両方とも外羽根のプレーントウとよばれるデザインですが、左のほうがフォーマルな印象。革の違いもさることながら、左のほうが右に比べてスラリとしたフォルムであることもフォーマル度を高める要因になっています。
とはいえ、細ければ細いほどフォーマルというわけではありません。たとえばクラシックなイギリス靴においては、ある程度丸みのあるフォルムでもフォーマルシューズとみなされるものが数多く存在します。
Level★★★
紐なし靴は、デザインによって
フォーマル度もまちまち
ストラップで甲をホールドするバックルシューズやローファーについては、フォーマル度の判断が難しいところ。左端はダブルモンクストラップシューズと呼ばれ、Monk＝修道僧という名前からフォーマル寄りと捉える向きもありますが、実際はオンオフ兼用シューズという位置づけです。
ローファーの大定番であるコインローファー（左から2番め）は基本的にカジュアルシューズ。写真のように細身のものならスーツにもマッチしますが、クラシックマナーに長く親しんだ人たちの間では、今でも“スーツにコインローファーは合わせない”という声がしばしば聞かれます。
ただし、タッセルローファー（左から3番め）は別で、こちらは古くからスーツにも合わせられてきました。近年増えているストラップローファー（右端）は、ノータイのスーツやジャケットスタイルに合わせるのが現在一般的です。
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