ビジネスからカジュアルまで、幅広い装いに「格」を備えてくれる革靴。現代のさまざまな事情を踏まえると、やっぱり気になるのはコストパフォーマンスではないでしょうか。そこで、今回はスタイリスト五十嵐さんと、三陽山長 日本橋髙島屋S.C.店の上村店長に、それぞれ特定の条件の下、“推しの一足”をセレクトしてもらいました！
ビジネススタイルのカジュアル化に伴って、革靴の幅も広がりオンオフ問わずに使えるモデルが多く展開される中、二人が選んだ“推しの一足”とは？ 購入の参考にしていただきたい次第！
ライター
細谷 駿人
埼玉県生まれ。メンズファッション雑誌で編集として勤務し、2018年に独立。ファッションメディアを中心に時計や美容の編集／ライターも務め、カタログや広告のディレクションも手がける。ごりっごりのゆとり世代のお調子者(笑)。
スタイリスト
五十嵐 堂寿
長野県生まれ。2011年に独立し、雑誌やカタログなど多くのファッションメディアの他、アーティストや俳優のスタイリングも多数手がける。若者から大人、ドレススーツからストリートまで、年齢層もジャンルも幅広いマルチなスタイリスト。
細谷 この連載ももう5回目です。半分ほど来て特に驚いたのは、今更ですが、バリエーションの多さなんですよ。
五十嵐 昔からあるモデル自体が多くて、大きく数が変わったってこともないけど、ベーシックモデルをベースにして変化したモデルは確かに増えてきたね。日の目を浴びるようになったとも言えるのかな。
細谷 本当にその通りだと思います。装いのボーダーも少しずつ緩和されて、オフィススタイルはスーツじゃなきゃダメってこともなくなりましたから、それに伴って「これもありなんだ」って思えるものが、シューズに限らず増えましたよね。
五十嵐 そうだね。極論だけど、ある意味なんでもアリになった。だからこそ、その中でどうコーディネートして、飾るのかが面白くなったよね。
細谷 それぞれの自分の魅せ方を知れるから、街を歩いても人の着こなし見ちゃいますもん。職業病でもあるけど(笑)。で！ ここまで幅が広がったことで感じるのは、本当に使える一足ってなんだ？ てことなんです。
五十嵐 オンオフ兼用ってこと？
細谷 それも一つなんですが、同時に昨今の経済的情勢で、買い物も気楽にできないじゃないですか。高いものならなおさら。そうなると、コストパフォーマンスに優れているかは重要なポイントかなと思っていて。
五十嵐 なるほど。オンオフ兼用含め、コストパフォーマンスに優れたシューズもいっぱいあるよね。
細谷 そう！ だからこそ迷っていて……。なので、五十嵐さんと上村さんに“推しの一足”を教えてほしいと思っています！ 条件ありで！
五十嵐 僕も上村さんの推しの一足は気になるなあ。その条件って？
細谷 それぞれ異なる条件を付けたくて。五十嵐さんにはこんな条件です。
五十嵐 休日のカジュアル用だけど、ってことね。最後のは……？
細谷 いや、重要でしょ！ モテたいでしょ！(笑)
五十嵐 そんなに鼻息荒くしないで(笑)。了解しました。
細谷 まず、どんな人を思い浮かべました？
五十嵐 この条件にハマる人物像として、知り合いが一人思い浮かんだかな。幼馴染なんだけど、ジュエリー関係の仕事をしていてメディアにも出るような人なんだけど、普段はスーツを着ていて。ファッションは好きなんだけど、そこまで自由になんでも買えるわけでもない。
細谷 自由に買い物できないのは僕と同じです。
五十嵐 靴も安いものを大事に磨いたり手入れしたりして、長く使い続けている人なんだよね。
細谷 素敵ですね。“30〜40代のファッション好きなビジネスマン”って感じですか。
五十嵐 そう。確かに毎日スーツなんだけど、タイドアップしなければならない場面も今は少ないじゃない？ そうなると、仕事でもその人のセンスを見られるようになってくると思う。
細谷 誰でも簡単にカッコよく見せられるのがスーツの魅力でしたが、カジュアル化したことで、多少なりともお洒落を考える必要は出てきましたよね。
五十嵐 そういう意味で休日のお洒落って、実は仕事着にも影響する。「こういうのいいかも」とか「この合わせ好きだな」程度でいいんだけど。
細谷 休日のお洒落が練習みたいなものってことですか？
五十嵐 そう。そんな人にオススメして履いて欲しいなってイメージで選ぶと、これかな。
細谷 “極 勘三郎”ですか。
五十嵐 カジュアルは言わずもがなだけど、現代のスーツスタイルにもバッチリ合う。正当なスーツスタイルには僕はこれを選ばないけど、スーツだけで終わらせるのはもったいないから、幅広さという意味でもこれがぴったりだなって。
細谷 そうですね。特に休日メインなら、これくらいカジュアルなのがいいかも。二足目、三足目のイメージですかね？
五十嵐 一足目ではないかな。30、40代なら今履いているものが馴染んでいるだろうし。
細谷 そうですね。誰と会うか、っていうのも想定した時にこれなら、デートでも社交場でもいけちゃいますね！
五十嵐 それが「極」シリーズの魅力だよね。
オーセンティックなUチップシューズを、重厚感たっぷりに刷新した「極 勘三郎」。縫い目のない“シームレスヒール”や手仕事の最高峰“スキンステッチ”が極上のエレガンスをまとわせつつ、従来の勘三郎に採用されている「R2010」ラスト同様のフィット感はそのままに、トゥまわりに厚みを持たせたカジュアルラスト「R2021」を採用したことでカジュアルシーンにも寄り添う汎用性を獲得。マロカーフの“水シボ”とよばれる繊細な表情と、スペードソールにダブルウェルト仕様の骨太な底周りもその要因に。
COORDINATION
COORDINATION
キレイめなジャケットスタイルにもマッチする好例。高級感あるUチップなら、インディゴのテーパードデニムによる、いい意味でのカジュアルダウンとの橋渡しの役目を担ってくれます。カジュアルパーティーやレストランディナーにうってつけ。
細谷 ちょっと意外でした。休日メインでセミドレスな場面もいけるってなると、ブローグシューズとか茶系の艶っぽいシューズをセレクトするかなと思っていました。少なくとも、ラバーソールを選んでいたなって。
五十嵐 実用性で言っちゃうと、レザーソールではないかもしれないね。
細谷 使用頻度が少ない、ここぞの休日お洒落用って感覚ですか？
五十嵐 いや、極論休日はいつもこれ、でもいいイメージかな。
細谷 そうなんですか！？
五十嵐 三陽山長の中でも、「極」シリーズは最高級ライン。インポートブランドと比べると手に取りやすい価格かもしれないけど、安くはないよね。しかも、エントリー価格の通常ラインの靴だってきちんと手入れをすれば長く履けるわけで。
細谷 それはそうですね。ずっと履けると上村さんも言っていました。
五十嵐 それって、この「極」でも一緒。こうしたリッチな靴を丁寧に手入れして大切に履き続けられれば、結果として「極」が一番コストパフォーマンスに優れていると思う。
細谷 長く高級感を楽しめる付加価値もありますしね！
五十嵐 単なる汎用性という意味でのコストパフォーマンスに、さらなるプラスαがあるし、こういう靴を持っていることって、モチベーションにも関わってくると思うんだよね。
細谷 誰だって高いものは大事にしますからね。バッグやジュエリーだって高いほど、保存に気を遣いますし。ただ、靴だと僕は履くのを躊躇ってしまいそう……(笑)。
五十嵐 それは違うよ！ 靴は履いて手入れして、初めて自分に馴染むからね。いつまでも履かれている感が残るのは、高級靴を履くメリットを潰しちゃうことになる。
細谷 たしかに。「頑張ろう」、「これに相応しい自分になろう」という努力をするようにはなる。
五十嵐 特に靴は、コーディネートの中で一番汚れるものだからね。
細谷 そういう意味では背筋が伸びますね。
五十嵐 高級靴を履くってそういうことだよね。
細谷 もう一つびっくりしたことがあって。実は、この前に上村さんのも聞いてきたんですよ。で、上村さんの“推しの一足”も五十嵐さんと同じUチップだったんです！
五十嵐 そうなんだ！ どんな条件を出したの？
細谷 上村さんには、五十嵐さんとある意味真逆です。
五十嵐 それで選んだのがUチップなんだ？
細谷 でも全く同じではなくて、選んだのが「兼三郎」の茶色で、シボレザーだった。
五十嵐 へぇ〜。どんな人物像を思い浮かべたんだろう。
細谷 それが、僕だったらしいです……(笑)。
五十嵐 そうなの？ じゃあもうこれ買うしかないじゃん！
細谷 やっぱり？(笑) でも、実際に、最近僕のような仕事でスーツを着ないお客さんが増えているみたいです。
五十嵐 それもたぶん若い人だよね。ということは、“仕事に余裕ができてきた30代”っていう人物像なのかな。
細谷 そうですね。
五十嵐 ダークブラウンっていうのが渋いよね。仕事用ってなるとブラックがセオリーだけど。
細谷 最もエイジングが味わい深くて、変化が楽しめるのが茶靴の特徴なんだそう。
五十嵐 条件にあるように、これから10年、20年と履いていった時を考えると、かっこいい仕上がりになるのはたしかにそうだね。流石です。
細谷 しかもシボ革を選んでくれるってのが、僕のことをよくわかってるよね(笑)。
五十嵐 ズボラさんでも大丈夫だからね。でも茶靴なら手入れのしがいもあるから革靴愛好家にもオススメできる。
重厚なリッジウェイソールに、タフな底周りを演出するダブルウェルト仕様を採用した、ボリューム感が魅力のUチップ「兼三郎」。カジュアルラスト「R2021」を用いているため、重厚で逞しい外観はそのままに、小振りなヒールカップと絞り込まれた土踏まずがしっかりとしたホールド感を実現しています。男らしさの中に色気を滲ませる、ダークブラウンカラーも見どころです。
シボ革はスムースレザー以上に耐傷性に優れ、元々のタフさがあります。それでも長く履くほどに味わいが増し色味も変化していくので、持ち主に寄り添ったエイジングを楽しめます。近年のビジネススタイルとなら相性もいいので、いろんなコーディネートとも好相性です。手入れ次第で表情の変化が如実に出るのも魅力で、履いても手入れをしても経年美化していく、革靴を楽しむには最適な一足です。
細谷 意外だったけど、話を聞くと納得の“推しの一足”でした。
五十嵐 バリエーションが多い中で、しかも条件も違う。それでも同じ型を選んだのは驚いた。これが正解ってことではないし、目的に合わせて買うのが一番なのは変わらないけど。
細谷 お二方が揃っているのを見ると、やっぱり今の気分、時代ってこういうことなのかも、と思いました。今あるものを大事にしながら新しいチャレンジをする点も、そんなチャレンジングな一足にも、機能性とか汎用性、高級感といった付加価値は絶対に欲しい。という考えが現代なんだなと。
五十嵐 限定的なスポット用で買うって感覚は減ってきているよね。快適さって一度味わうと捨てがたいから。
細谷 楽ちんから抜け出せないけど、挑戦はしたい。僕にとってそれがまさに革靴ですね。
五十嵐 もうそろそろ引っ張りすぎだよ？ 決めないと(笑)。春前に始まってもう夏だから！
細谷 もう引き伸ばせません！(笑) あ、夏で思い出したんですけど、三陽山長で夏の革靴が出たそうで。それを五十嵐さんと一緒に見たいなと。
五十嵐 グルカサンダルだね。革靴復権の流れから、今グルカサンダルも人気だよね。大人に履いて欲しいサンダルの定番。
細谷 スポーツサンダルにしろシャワーサンダルにしろ、どうしたってラフな雰囲気になりますからね。軽快で大人っぽいとなったら、これしかないって思います。
五十嵐 しかもこの「柔兵」は、軽すぎるくらい軽い！ サンダルと変わらないリラックスした履き心地があるよ。
今シーズン新たに登場したグルカサンダル「柔兵」は、三陽山長で人気のドレススニーカー、通称“ドレスニ”のコレクションにラインナップされています。非常に軽量で、インソールと履き口にクッション性を持たせているので、履き心地も実にコンフォート。木型は、マスターラスト「R2010」をドレスニ用に改良した「R2010CF」を採用。バッファローレザーの風合いと繊細なシボ感もあいまって、品格漂うドレスグルカが誕生しました。
COORDINATION
COORDINATION
来たる旅行シーズン。リゾートでは肩肘張らずに楽に行きたいところ。そんな時でも大人らしいエレガンスを香らせられるのが、グルカサンダル「柔兵」の魅力です。ショーツやリネンシャツといったリラックススタイルを、上品に彩ってくれるってわけ。もちろん、リゾートのみならず普段使いの兼用も可能。ラフに纏まりがちなサンダルも、これなら上品に楽しむことができます。
細谷 都会でも全然履けちゃいますね。
五十嵐 半袖＆短パンとか軽装になればなるほど、サマーカジュアルは子どもっぽくなりがちだから、特に足元は大事だよ。
細谷 単にレザーサンダルならいいっていうとそうでもないのかも。グルカサンダルはドレスシューズの延長線上にあるからいい、みたいな。
五十嵐 元々はネパールのグルカ兵が戦場で履いていたとされるミリタリーアイテムで、革靴とサンダルの合いの子。男心をくすぐるし、履いている人を見るとお洒落だなって思う人が多い。
細谷 お！ って思っちゃう。わかってる感が備わるというか。でもここのは、ドレスシューズとスニーカーのハイブリッドで出している“ドレスニ”のシリーズから出ているんだよね。混ざりすぎてる！(笑)
五十嵐 革靴とサンダルとスニーカーのいいとこ取りってことだ。
細谷 まさに三位一体！
五十嵐 ブラウンの色合いも味わいがある。でもブラックもモダンで捨てがたい。
細谷 値段も抑えられているから、まとめ買いもあり！ ってプロモーションしすぎ？(笑)
五十嵐 ははは。とは言え、実際完成度高いからね！
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