

革靴偏愛エディター×三陽山長で作る
「次世代のオンオフ兼用靴」
四.
ついに完成!
「理想のオンオフ兼用靴」
オンオフ兼用靴の新しい理想形を求めてスタートした私・エディター小曽根と三陽山長のコラボ靴がついに完成! “オールド・イタリア”というコンセプトを掲げ、木型から新規開発した力作だけに、胸を張って皆さまへお披露目できます。ということで、今回は激しく自画自賛が連なりますがご容赦を。だって、本当にいい出来なんですから!

取材・文
取材・文
編集者 小曽根 広光
編集者 小曽根 広光
現在発売中のムック本『日本が生んだ傑作100選』(世界文化社刊) で、三陽山長の最高峰シリーズ「零」にまつわる記事を書きました。その名の由来にもなっている“継ぎ目ゼロ”仕立ての製作風景を本邦初公開! 尋常じゃない手間のかけっぷりに改めて驚かされました。乞う、ご高覧!
いろいろな紆余曲折も結果、功を奏しました
いろいろな紆余曲折も結果
功を奏しました


ファーストサンプルに修正を入れてから約1か月、三陽山長チームからついに、「セカンドサンプルが完成しましたよ!」との一報が。その声の調子がかなり明るかったので、“これは期待できるかも……!?”と胸を躍らせながらプレスルームへ赴きました。
「いい感じで仕上がりましたよ!」と出迎えてくれたのは、企画兼営業担当の濱田さん。ほ、本当ですか……!? と顔を綻ばせながら、早速仕上がりをチェック。おぉ、確かにこれはいい感じ! 前回はアッパーがダミーの状態でしたらが、本番の革が載ってくると全然表情が変わりますね。
「オールド・イタリアというコンセプトのもとで木型から新開発しただけあって、これまでの三陽山長とは趣の違う靴になっていますよね。我々としても新鮮です」と評すのは、同じく企画担当の上村さん。そう、この木型がかなり絶妙な仕上がりなんです。昔ながらのイタリア靴をイメージして、“素朴で力強いスクエアトウを”とリクエストしたものなのですが、実はファーストサンプルのチェック時、もう少しシャープなフォルムに修正してもらおうかなと迷いました。力強さを表現するためトウ周りにボリュームをもたせているのですが、それゆえ少々丸っこい印象に見えて、オールド・イタリアの方向性から離れているかな……と感じたんです。が、悩んだ末に丸さを残すことにしました。なぜなら、当企画のテーマは「次世代のオンオフ兼用靴」。フォルムをシャープにしすぎると、カジュアル使いが難しくなってくるからです。で、結果これが正解。予期していた汎用性に加え、単なるイタリア靴の模倣でない独特の佇まいも表現することができました。
ここで、前回入れた修正のチェック。最大のポイントだった“コバを角張らせる”という点ですが、ファーストサンプルよりは四角くなったものの、まだ丸みのある印象です。
「これはファクトリー側の主張を感じますね。これくらいボリュームのあるトウなら、丸みを残したほうがいいのでは? という提案だと思います。もちろん、もっとシャープなコバに追加修正することもできますが、どうしますか?」と上村さん。
う〜ん、そう言われると迷う……確かに、現状すごくいいバランスにまとまっているし、もっと角張らせるとカジュアル方面の使い勝手が変わってくるかも……いや、ここはキャラ立ちを優先して、コバはよりスクエアにしましょう!
「ではその方向でいきましょう。ウェルトをもう少し太いものにして、そこから削っていくと直線的なアウトラインを表現できると思います」
ということで、いよいよ本番の生産に突入! 発売は7月予定ですが、ひと足先に各モデルの全容を以下解説させていただきます。
骨太さが醍醐味! オールド・イタリアUチップ
骨太さが醍醐味!
オールド・イタリアUチップ


最もイタリア色を強く打ち出したスプリットトウのUチップ。小ぶりなエプロン(U字の内側部分)と、それに伴う長めのスプリットトウステッチ、そして力強いつまみ縫いが特徴です。三陽山長のUチップといえば「勘三郎」が代表作ですが、あちらは英国テイストを感じさせる佇まいゆえ、キャラクターはかなり異なっています。実際履き比べていただければ、その違いがよくわかるはず。

アッパーのレザーはイタリア・イルチア社の「ムース」。力強いシボが一見カタそうに見えますが、実際触ってみると“ふわっ”“もちっ”とした風合い。これは気持ちよさそう……と足を入れてみたところ、想像以上の柔らかに驚きました。反りのいいラバーソールを装着していることもあって、まるでスニーカー!……とまではいかないものの、普通の革靴よりも断然コンフォートな履き心地です。ちなみにこのあと、U字のエプロン部分をもう少しだけコンパクトに追加修正しました。製品が発売されたら、違いを比べてみてください。

履き口の周りにぐるりと切り替えを施しているのも、古いイタリア靴のデザインにならったもの。ちょっとしたデザインのヒネリですが、これがあるだけでカジュアル感が高まり、オンオフ兼用靴としての汎用性に貢献しています。

アッパーのレザーはイタリア・イルチア社の「ムース」。力強いシボが一見カタそうに見えますが、実際触ってみると“ふわっ”“もちっ”とした風合い。これは気持ちよさそう……と足を入れてみたところ、想像以上の柔らかに驚きました。反りのいいラバーソールを装着していることもあって、まるでスニーカー!……とまではいかないものの、普通の革靴よりも断然コンフォートな履き心地です。ちなみにこのあと、U字のエプロン部分をもう少しだけコンパクトに追加修正しました。製品が発売されたら、違いを比べてみてください。
履き口の周りにぐるりと切り替えを施しているのも、古いイタリア靴のデザインにならったもの。ちょっとしたデザインのヒネリですが、これがあるだけでカジュアル感が高まり、オンオフ兼用靴としての汎用性に貢献しています。

万能ぶりならこれがナンバーワン
万能ぶりなら
これがナンバーワン


続いてはこちらの3アイレットシューズ。オンオフ兼用を念頭に製作した当シリーズのなかでも、一番万能に合わせられるデザインだと思います。スクエアトウのシャープさ、デザインのシンプルさを活かしてスーツやジャケパンとコーディネートしてもハマりますし、オフィサーシューズ感覚で色落ちしたジーンズに合わせても馴染むはず。

アッパーはイルチア社のボックスカーフ「セタニール」に、後加工で型押しを施したオリジナルの革。当初はフランス・アノネイ社が手掛けるロシアンカーフ調グレインレザー「アルカザール」を採用する予定でしたが、ここまできたら革もイタリア産にこだわろうと、日本最大級のタンナー「山陽」全面協力のもと誕生した新素材を採用しました! 上の「ムース」よりもシボが細かく、感触もややハードですが、シンプルなプレーントウシューズの魅力を損なわず、それでいてさりげない個性が光る素材です。

ほかの2モデルに比べて履き口を広くとっているのも特徴で、最近流行りのショートヴァンプローファーのような雰囲気も備えています。履き口が広いと足をホールドする面積が小さくなるため、フィッティングが難しくなりますが、そこは三陽山長クオリティ。低めに抑えた甲とコンパクトなヒールでしっかり足を掴むため、フィット感も上々です。

アッパーはイルチア社のボックスカーフ「セタニール」に、後加工で型押しを施したオリジナルの革。当初はフランス・アノネイ社が手掛けるロシアンカーフ調グレインレザー「アルカザール」を採用する予定でしたが、ここまできたら革もイタリア産にこだわろうと、日本最大級のタンナー「山陽」全面協力のもと誕生した新素材を採用しました! 上の「ムース」よりもシボが細かく、感触もややハードですが、シンプルなプレーントウシューズの魅力を損なわず、それでいてさりげない個性が光る素材です。
ほかの2モデルに比べて履き口を広くとっているのも特徴で、最近流行りのショートヴァンプローファーのような雰囲気も備えています。履き口が広いと足をホールドする面積が小さくなるため、フィッティングが難しくなりますが、そこは三陽山長クオリティ。低めに抑えた甲とコンパクトなヒールでしっかり足を掴むため、フィット感も上々です。

これぞイタリアの元祖ダッドシューズ!?
これぞイタリアの
元祖ダッドシューズ!?


セミブローグなのに外羽根、しかもスクエアトウという、今ではなかなか見かけないデザインも作りました。個人的には、こちらが一番気に入っています。トウのボリューム感ともあいまって、どこかローマ靴のような佇まい。結構おじさんっぽい感じなのですが、それがたまらないんですよね。スーツに合わせると、見る人が見れば“おっ”と思うハズシになり、カジュアルにも意外なほど万能にマッチしますよ。

アッパーはイルチア社の「セタニール」。透明感あるツヤときめ細かな風合いが特徴のボックスカーフです。この靴に関しては、超王道の素材を選んでみました。そしてもうひとつのこだわりが、大きめの穴飾り。ファーストサンプルでは、カントリーブーツなどに使われる直径4㎜の穴飾りを選びましたが、そこから少しだけ小さくして3.5㎜径にしました。ちなみにパーフォレーション部分は、穴ひとつひとつ(親子穴の部分は1ペアずつ)手打ちです!

「今の主流は圧倒的にラバーソールですよ」という助言に従って薄手のビブラムソールを選んだ当シリーズですが、この一足だけはクラシックにこだわってレザーソールを採用しました。従うべきは時流より我流! という硬派な方におすすめです。

アッパーはイルチア社の「セタニール」。透明感あるツヤときめ細かな風合いが特徴のボックスカーフです。この靴に関しては、超王道の素材を選んでみました。そしてもうひとつのこだわりが、大きめの穴飾り。ファーストサンプルでは、カントリーブーツなどに使われる直径4㎜の穴飾りを選びましたが、そこから少しだけ小さくして3.5㎜径にしました。ちなみにパーフォレーション部分は、穴ひとつひとつ(親子穴の部分は1ペアずつ)手打ちです!
「今の主流は圧倒的にラバーソールですよ」という助言に従って薄手のビブラムソールを選んだ当シリーズですが、この一足だけはクラシックにこだわってレザーソールを採用しました。従うべきは時流より我流! という硬派な方におすすめです。

見た目も履き心地もソフトになったスエード版
見た目も履き心地も
ソフトになったスエード版


外羽根セミブローグは一番気に入っていたデザインだけに、アッパーの革を選ぶ際ずいぶん悩んでいた私。そんな姿を見かねて、「じゃあバリエーションで作ってみましょうか」と温情をかけていただき生まれたのがこちら。同じデザインでも、スエードになると雰囲気が大きく違ってきます。ちょっと可愛らしい雰囲気も出て、これがまたいい! スエード=秋冬というイメージがあるかもしれませんが、ベージュやオフ白のパンツと合わせれば夏でもマッチします。

スエードはイルチア社「アリカンテ」のダークブラウン。“銀付き”とよばれるトップグレードのスエードゆえ、非常にしなやかな風合いです。履き心地もスムースレザーのものよりソフトなので、コンフォートさも大切にしたい方にはこちらをおすすめします。

靴底はビブラム社製のラバーソール。見た目は極力クラシックになるよう、薄く凹凸が目立たないものを選びました。Uチップと3アイレットシューズにも同じソールを採用しています。

スエードはイルチア社「アリカンテ」のダークブラウン。“銀付き”とよばれるトップグレードのスエードゆえ、非常にしなやかな風合いです。履き心地もスムースレザーのものよりソフトなので、コンフォートさも大切にしたい方にはこちらをおすすめします。
靴底はビブラム社製のラバーソール。見た目は極力クラシックになるよう、薄く凹凸が目立たないものを選びました。Uチップと3アイレットシューズにも同じソールを採用しています。

3タイプのデザインで新モデルを製作決定!


……という具合に、それぞれ大満足の仕上がりでホッと一安心。と同時に、早く洋服と合わせてみたい! という欲求が燃え上がってきました。が、ここからがまた長くなるので続きは次回。オンオフ兼用靴としての実力を徹底検証します!

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