

革靴偏愛エディター×三陽山長で作る
「次世代のオンオフ兼用靴」
五.
「理想のオンオフ兼用靴」
着回し実例集
“オールド・イタリア”というコンセプトのもと、木型から開発した私・エディター小曽根と三陽山長のコラボ靴。「理想のオンオフ兼用靴を作る」という大目標を立ててスタートしたものの、その成果やいかに? というわけで今回は、完成した3モデルを私が実際にオン&オフスタイルで着回してみました。

取材・文
取材・文
編集者 小曽根 広光
編集者 小曽根 広光
今回の記事制作にあたって何より衝撃的だったのは、自分の激太り具合。毎日鏡では見ていても、写真で客観視するといっそう厳しい……というわけで、その後ダイエットに一念発起。撮影から1か月ほどで、約4kgの減量に成功!……が、脂肪といっしょに免疫力も落ちたようで、今かつてないほどひどい喉風邪に苦しみながらこの原稿を書いています。
いろいろな紆余曲折も結果、功を奏しました
いろいろな紆余曲折も結果
功を奏しました


ファーストサンプルに修正を入れてから約1か月、三陽山長チームからついに、「セカンドサンプルが完成しましたよ!」との一報が。その声の調子がかなり明るかったので、“これは期待できるかも……!?”と胸を躍らせながらプレスルームへ赴きました。
「いい感じで仕上がりましたよ!」と出迎えてくれたのは、企画兼営業担当の濱田さん。ほ、本当ですか……!? と顔を綻ばせながら、早速仕上がりをチェック。おぉ、確かにこれはいい感じ! 前回はアッパーがダミーの状態でしたらが、本番の革が載ってくると全然表情が変わりますね。
「オールド・イタリアというコンセプトのもとで木型から新開発しただけあって、これまでの三陽山長とは趣の違う靴になっていますよね。我々としても新鮮です」と評すのは、同じく企画担当の上村さん。そう、この木型がかなり絶妙な仕上がりなんです。昔ながらのイタリア靴をイメージして、“素朴で力強いスクエアトウを”とリクエストしたものなのですが、実はファーストサンプルのチェック時、もう少しシャープなフォルムに修正してもらおうかなと迷いました。力強さを表現するためトウ周りにボリュームをもたせているのですが、それゆえ少々丸っこい印象に見えて、オールド・イタリアの方向性から離れているかな……と感じたんです。が、悩んだ末に丸さを残すことにしました。なぜなら、当企画のテーマは「次世代のオンオフ兼用靴」。フォルムをシャープにしすぎると、カジュアル使いが難しくなってくるからです。で、結果これが正解。予期していた汎用性に加え、単なるイタリア靴の模倣でない独特の佇まいも表現することができました。
ここで、前回入れた修正のチェック。最大のポイントだった“コバを角張らせる”という点ですが、ファーストサンプルよりは四角くなったものの、まだ丸みのある印象です。
「これはファクトリー側の主張を感じますね。これくらいボリュームのあるトウなら、丸みを残したほうがいいのでは? という提案だと思います。もちろん、もっとシャープなコバに追加修正することもできますが、どうしますか?」と上村さん。
う〜ん、そう言われると迷う……確かに、現状すごくいいバランスにまとまっているし、もっと角張らせるとカジュアル方面の使い勝手が変わってくるかも……いや、ここはキャラ立ちを優先して、コバはよりスクエアにしましょう!
「ではその方向でいきましょう。ウェルトをもう少し太いものにして、そこから削っていくと直線的なアウトラインを表現できると思います」
ということで、いよいよ本番の生産に突入! 発売は7月予定ですが、ひと足先に各モデルの全容を以下解説させていただきます。
外羽根セミブローグ「光二/KOJI」
外羽根セミブローグ
「光二/KOJI」

“レースアップ版タッセルローファー”的な便利さです
“レースアップ版タッセルローファー”
的な便利さです

今回企画した3モデルのなかでも、一番守備範囲が広い一足といえる「光二」。ヨーロッパでは外羽根のセミブローグをスーツに合わせるスタイルも浸透していて、ビジネスシューズとしても準定番的な位置づけゆえ、ドレス方向への対応力が高いんです。タイドアップした服装にもバッチリ合いますよ。フォーマル度の高いツヤっとした無地スーツにはさすがに不向きですが、それ以外なら大体OK。春夏ならフレスコやピンヘッドなどマットなウールスーツ、リネンやコットンなどのカジュアルスーツあたりが好適。太縞のダブルブレストのように重厚なスーツともマッチしそうです。

今回は、コットンリネンのデニム調ネイビースーツと合わせてみました。ややヘビーウェイトな生地ですが、靴にも重厚感があるのでちょうどいい塩梅ですね。このようにちょっとだけカジュアル感のあるビジネススーツスタイルの足元には、今までタッセルローファーやシングルモンクあたりが定石だったと思うのですが、その代わりとして使える一足になるかと思います。

今回企画した3モデルのなかでも、一番守備範囲が広い一足といえる「光二」。ヨーロッパでは外羽根のセミブローグをスーツに合わせるスタイルも浸透していて、ビジネスシューズとしても準定番的な位置づけゆえ、ドレス方向への対応力が高いんです。タイドアップした服装にもバッチリ合いますよ。フォーマル度の高いツヤっとした無地スーツにはさすがに不向きですが、それ以外なら大体OK。春夏ならフレスコやピンヘッドなどマットなウールスーツ、リネンやコットンなどのカジュアルスーツあたりが好適。太縞のダブルブレストのように重厚なスーツともマッチしそうです。
今回は、コットンリネンのデニム調ネイビースーツと合わせてみました。ややヘビーウェイトな生地ですが、靴にも重厚感があるのでちょうどいい塩梅ですね。このようにちょっとだけカジュアル感のあるビジネススーツスタイルの足元には、今までタッセルローファーやシングルモンクあたりが定石だったと思うのですが、その代わりとして使える一足になるかと思います。


ラギッド系のカジュアル服にもマッチ

外羽根セミブローグって、“どちらかというとドレス靴”という位置づけのものが多いと思います。その理由は主にラストのシェイプにあるわけですが、「光二」はトウにボリュームをもたせたスクエアトウゆえ、一般的な外羽根セミブローグよりも若干カジュアル要素が強まっています。何が言いたいのかというと、スーツやジャケットだけでなく休日服にも大変好相性ですよということ。「光二」のみスムースとスエードの2種類の素材で展開しているため、ここではスエードを合わせてみました。結構ラギッド寄りの服装なのですが、違和感ないでしょう?

裾幅23㎝のブリティッシュミリタリー調のパンツと合わせてもいい感じ。チノパンやヴィンテージジーンズ、カーゴパンツなどとも非常によくマッチします。僕は股下の関係でパンツ丈をノークッションにしていますが、裾を溜めても合いそうですね。ちなみにスエード=秋冬というイメージがありますが、実際は通年着用できる靴なのでご安心を。

外羽根セミブローグって、“どちらかというとドレス靴”という位置づけのものが多いと思います。その理由は主にラストのシェイプにあるわけですが、「光二」はトウにボリュームをもたせたスクエアトウゆえ、一般的な外羽根セミブローグよりも若干カジュアル要素が強まっています。何が言いたいのかというと、スーツやジャケットだけでなく休日服にも大変好相性ですよということ。「光二」のみスムースとスエードの2種類の素材で展開しているため、ここではスエードを合わせてみました。結構ラギッド寄りの服装なのですが、違和感ないでしょう?
裾幅23㎝のブリティッシュミリタリー調のパンツと合わせてもいい感じ。チノパンやヴィンテージジーンズ、カーゴパンツなどとも非常によくマッチします。僕は股下の関係でパンツ丈をノークッションにしていますが、裾を溜めても合いそうですね。ちなみにスエード=秋冬というイメージがありますが、実際は通年着用できる靴なのでご安心を。

外羽根プレーントウ「光一/KOICHI」
外羽根プレーントウ
「光一/KOICHI」

ジャケパンスタイルに万能の使い勝手!

続いては3アイレットの外羽根プレーントウ「光一」。今回の3モデル中では最もシンプルなデザインゆえ、当然汎用性も満点。合わない服を探す方が難しい……かと思いきや、実際合わせてみると結構オフ寄りの靴であることが判明しました。スクエアトウとはいえトウ周りにボリューム感があることと、履き口が広めで相対的に甲が短いことが主な理由かと思います。もちろんスーツにも合うのですが、ノータイあるいはニットタイなどのビジカジスタイルのほうが好相性。いっぽう、ジャケパンスタイルならほぼどんな合わせもOKで、タイドアップ・ノータイともに優れた汎用性を見せてくれました。ややくだけた仕事服が中心という方におすすめしたい一足です。
ここではコットン&和紙という少々変わったファブリックのグレーパンツを合わせていますが、もちろん普通のウールパンツにもよく合います。そのほかベージュのコットンパンツ、夏ならシアサッカーパンツ、秋以降ならコーデュロイパンツなどにもよさそう。


続いては3アイレットの外羽根プレーントウ「光一」。今回の3モデル中では最もシンプルなデザインゆえ、当然汎用性も満点。合わない服を探す方が難しい……かと思いきや、実際合わせてみると結構オフ寄りの靴であることが判明しました。スクエアトウとはいえトウ周りにボリューム感があることと、履き口が広めで相対的に甲が短いことが主な理由かと思います。もちろんスーツにも合うのですが、ノータイあるいはニットタイなどのビジカジスタイルのほうが好相性。いっぽう、ジャケパンスタイルならほぼどんな合わせもOKで、タイドアップ・ノータイともに優れた汎用性を見せてくれました。ややくだけた仕事服が中心という方におすすめしたい一足です。

ここではコットン&和紙という少々変わったファブリックのグレーパンツを合わせていますが、もちろん普通のウールパンツにもよく合います。そのほかベージュのコットンパンツ、夏ならシアサッカーパンツ、秋以降ならコーデュロイパンツなどにもよさそう。
どんなカジュアルスタイルにも好相性!

オフスタイルへの使い勝手は予想どおりで、本当にどんな服装にも合わせられます。ジーンズ、チノ、ミリタリーパンツ、ワイドなリラックスパンツまでなんでも来い! という感じ。グルカショーツのような短パンに合わせてもよさそうですね。今回は、ちょっと80's調なストレッチウール生地のパンツを選びました。テロンとしたドレープのある風合いなので、本来はスニーカーやサンダルのような軽い靴を合わせるものだと思いますが、「光一」なら違和感なくマッチします。
履き口が広いため、ソックスが覗きやすいのも「光一」の特徴。最近はショートヴァンプローファーの流行に伴ってソックスのコーディネートにもこだわる人が増えているだけに、足元のさりげないアクセントとして活用できるはず。


オフスタイルへの使い勝手は予想どおりで、本当にどんな服装にも合わせられます。ジーンズ、チノ、ミリタリーパンツ、ワイドなリラックスパンツまでなんでも来い! という感じ。グルカショーツのような短パンに合わせてもよさそうですね。今回は、ちょっと80's調なストレッチウール生地のパンツを選びました。テロンとしたドレープのある風合いなので、本来はスニーカーやサンダルのような軽い靴を合わせるものだと思いますが、「光一」なら違和感なくマッチします。

履き口が広いため、ソックスが覗きやすいのも「光一」の特徴。最近はショートヴァンプローファーの流行に伴ってソックスのコーディネートにもこだわる人が増えているだけに、足元のさりげないアクセントとして活用できるはず。
Uチップ「光三/KOZO」
Uチップ
「光三/KOZO」

“ぽっちゃり顔”が意外や奏功


最後はイタリアンUチップの「光三」。こちらは当初狙っていたよりも若干丸っこいフォルムに仕上がったのですが、コーディネートの幅という面では逆にそれが幸いしました。本来のイタリアンUチップはもっとシャープな印象が強いため、クラシックな服とベストマッチ……というかクラシック以外あまり合わないのですが、「光三」はちょっとだけ丸みのある“ぽっちゃりスクエア”のため、顔つきも幾分柔和に。鹿の子ポロシャツや少々ユルめなパンツも受け止める包容力が備わりました。とはいえ、しっかりクラシック感は残っていますので、ソラーロスーツにリネンシャツ、7つ折りのタイ、といったようなイタリア〜ンな装いにも合いますよ。
これまでオンスタイルは黒靴ばかりだったため、茶の足元が個人的に新鮮。派手な主張がしにくいビジネスシーンだからこそ、足元のちょっとしたヒネリが重要です。今回はジャケパンで合わせていますが、グレー系のスーツなんかと合わせても格好よさそう!

最後はイタリアンUチップの「光三」。こちらは当初狙っていたよりも若干丸っこいフォルムに仕上がったのですが、コーディネートの幅という面では逆にそれが幸いしました。本来のイタリアンUチップはもっとシャープな印象が強いため、クラシックな服とベストマッチ……というかクラシック以外あまり合わないのですが、「光三」はちょっとだけ丸みのある“ぽっちゃりスクエア”のため、顔つきも幾分柔和に。鹿の子ポロシャツや少々ユルめなパンツも受け止める包容力が備わりました。とはいえ、しっかりクラシック感は残っていますので、ソラーロスーツにリネンシャツ、7つ折りのタイ、といったようなイタリア〜ンな装いにも合いますよ。

これまでオンスタイルは黒靴ばかりだったため、茶の足元が個人的に新鮮。派手な主張がしにくいビジネスシーンだからこそ、足元のちょっとしたヒネリが重要です。今回はジャケパンで合わせていますが、グレー系のスーツなんかと合わせても格好よさそう!
フレンチUチップ感覚でも好相性

“ぽっちゃりスクエア”によってイタリア濃度が少しだけマイルドになったことで、カジュアル方向の使い勝手も大幅にアップ。ワークテイストな生成りのコットンパンツにバンドカラーシャツという、イタリア感皆無な服装にも馴染みます。近年リバイバルしている、スプリットトウのフレンチUチップ的な感覚でも履けるのが便利ですね。それから足を通して気づいたのですが、履き心地がものすごく柔らかい! アッパーは一見ラギッドなシボ革ながら非常にソフトな「ムース」という革ですが、ここまで履き心地がいいとは予想していませんでした。これはぜひ、実際体感してほしい!

最近廃れ気味?になっている素足履きで。スクエアトウながら柔和な顔つきゆえ、ヤンチャに見えないところがポイントです。余談ですが、三陽山長ってライニングの革質もびっくりするほどクオリティが高い。素足履きがこれほど気持ちいい靴は久々に出会いました。

“ぽっちゃりスクエア”によってイタリア濃度が少しだけマイルドになったことで、カジュアル方向の使い勝手も大幅にアップ。ワークテイストな生成りのコットンパンツにバンドカラーシャツという、イタリア感皆無な服装にも馴染みます。近年リバイバルしている、スプリットトウのフレンチUチップ的な感覚でも履けるのが便利ですね。それから足を通して気づいたのですが、履き心地がものすごく柔らかい! アッパーは一見ラギッドなシボ革ながら非常にソフトな「ムース」という革ですが、ここまで履き心地がいいとは予想していませんでした。これはぜひ、実際体感してほしい!
最近廃れ気味?になっている素足履きで。スクエアトウながら柔和な顔つきゆえ、ヤンチャに見えないところがポイントです。余談ですが、三陽山長ってライニングの革質もびっくりするほどクオリティが高い。素足履きがこれほど気持ちいい靴は久々に出会いました。

というわけで、いずれも“理想のオンオフ兼用靴”と胸を張って送り出せる仕上がりになったかと。そこでこれからは2か月ほど、この4足を徹底的に履き倒してみます。そこで見えてきたポイントを次回、包み隠さず正直にお伝えしましょう。ぜひご注目あれ!

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