

革靴偏愛エディター×三陽山長で作る
「次世代のオンオフ兼用靴」
六. 理想のオンオフ兼用靴、 2ヶ月間履いてみたら……
「理想のオンオフ兼用靴を作る」という目標を掲げて製作した私・エディター小曽根と三陽山長のコラボ靴が、ついに発売となりました!滑り出しはかなりの好調ということで、感謝感謝でございます。“ちょっと気になるけど、どうしようかな〜”と思案中の方もいらっしゃることでしょう。そこで当連載の最終回は、およそ2ヶ月前に完成したサンプルを私が徹底的に履き倒したレビューをお届け。少しでも参考にしていただければ幸いです!

取材・文
取材・文
編集者 小曽根 広光
編集者 小曽根 広光
前回こちらで書いたとおり、目下ダイエットに猛烈邁進中。これまで未体験だったスポーツジムにも週3〜4のハイペースで通っています。自転車で行ける距離ゆえ行き帰りもスポーツウェア着用なのですが、今は「2ヶ月間は山長しか履かない!」と心に決めた身。速乾ポリエステルのTシャツ&短パンに足元だけ高級革靴という少々異様ないでたちで、見事誓いを全ういたしました(運動中は裸足)。
この4足だけで2ヶ月、
過ごしてみました
この4足だけで2ヶ月、過ごしてみました

冒頭から個人的なお話で恐縮ですが、私、子供のころから大のレビュー記事好き。某ゲーム誌のクロスレビューコーナーは毎号熟読していましたし、大人になってからも家電やオーディオ、カメラなどは購入前に必ずレビュー記事で下調べしていました。中でも好物なのが、“じっくり使ってわかったホントのトコロ”的なロングレビュー。初見の印象ではなく実体験からの解説ゆえ、説得力が違うんですよね。というわけで当プロジェクトの最終章は、完成した4足の靴を約2ヶ月間、徹底的に履き込んだ感想をお届けします。身贔屓は一切なし、本音を包み隠さずお伝えしますので、どうぞご注目ください。では一足ずつ見ていきましょう!
エイジングの美しさは現状No.1…… 外羽根プレーントウ「光一」
エイジングの美しさは
現状No.1……
外羽根プレーントウ「光一」

さて、まずは外羽根プレーントウの「光一」。スーツからジーンズまでマッチする万能の使い勝手!という印象は今でも変わりません。が、この2ヶ月を振り返ってみると、ドレス色の強いタイドアップスタイルよりも、カットソーにジャケットのような“ちょいドレス”、あるいはTシャツにワイドパンツのようなカジュアルスタイルに合わせることが多かったように感じます。今回の3モデル中では一番プレーンなデザインなのに何故? 理由は、アッパーのレザーにありました。スムースレザーではなく、イルチアのボックスカーフ「セタニール」に型押しを施した革を選んだのですが、これが想像以上に効いています。これがツルッとした普通のカーフだったら、おそらくもっとドレス方向の活用が増えていたはず。
とはいえ使い勝手が悪くなったかいうと、決してそんなことはありません。むしろシンプルな軽装が中心になる今の季節は、足元にちょっとしたアクセントが効く一足として非常に重宝しました。もちろん秋を迎えても、カントリーテイストな型押しレザーは大いに活躍してくれるはずと見込んでいます。

そして特筆すべきは、エイジングの美しさ! 履き始めて2ヶ月の現時点では、一番いい味わいを醸し出していると思います。ヴィンテージテイストがお好みの方は、この表情にグッとくるのではないでしょうか。ちなみに手触りでは4足中、最も硬い印象だったアッパーですが、実際履くと意外なほどソフトで、履きジワのところで甲が擦れて痛い……なんてことは一切ありませんでした。今はより柔らかく変化していて、ラギッドな表情とは裏腹に履き心地は快適です。
私の着用率No.1はコレでした……
外羽根セミブローグ「光二」(カーフ)
私の着用率No.1はコレでした…… 外羽根セミブローグ「光二」(カーフ)

以前から「個人的にはこちらが一番のお気に入り」と明言していた「光二」ですが、やっぱりヘビロテ率もトップでした。リネンスーツにタイドアップといったドレススタイルはもちろん、ワイドレッグのジーンズにもぴったりハマり、結果最も振り幅の広いコーディネートで愛用。当初はややドレス寄りの使い勝手を想定していただけに、これは嬉しい誤算でした。その要因は、スクエアトウながらぽってりとしたトウシェイプ、そして大きめに設定した穴飾りにありそうです。この2要素によって、カントリーシューズ的な感覚でも合わせられたということですね。
ちなみに履き心地はというと、新品のときには4足のなかでこちらが一番タイトに感じました。木型は一緒なので、アッパーがスムースレザーであることの影響ではと思いますが、少しコルクが沈み込んでくると圧迫感を感じなくなり、とても快適なフィット感に。今回開発した「R3021」ラストはつま先周りの空間が広めにとられていて、かつ内向きのカーブを若干強めにしているため、ボールジョイント部分をしっかりフィットさせても指先は動かせるくらい余裕があります。これも窮屈さを感じない理由なんですよね。

アッパーはイルチア社の「セタニール」。プレーントウ「光一」に使った革のスムースレザーバージョンです。履きジワも大変美しいですね。正直、ここまで綺麗に履きジワが入る靴は最近少ないと思います。三陽山長っていい革使っているんだなぁということを改めて実感いたしました。
目下の売れ筋No.1!……
外羽根セミブローグ「光二」(スエード)
目下の売れ筋No.1!……
外羽根セミブローグ「光二」(スエード)

「光二」はちょっとした特別扱い(?)で、カーフに加えてスエードバージョンも製作しました。素材決めのとき、アッパーを決めかねて散々迷っている私を見かねた三陽山長チームが“じゃあ2素材でやりましょう”と言ってくれたおかげなのですが、作ってもらってよかった! この原稿を書いている発売約2週間後の時点では、4足のなかで最も売れているそうです。外羽根セミブローグという少々わかりにくいデザインで、しかもスエードが売れているというのはちょっと予想外。ご購入いただいた方に感想を伺ってみたいところですね。

カーフの「光二」はレザーソールですが、スエードバージョンはラバーソール。比較的薄手のものを採用しているため、底周りの厚みはあまり変わらないのですが、履き心地は全くの別物。こちらは新品時から非常にソフトで、リラックス感があります。6〜7月は雨が多かったので、ラバーソールはやはり安心感がありました。
柔らかさNo.1!……Uチップ「光三」
柔らかさNo.1!……
Uチップ「光三」

最後はUチップの「光三」。スクエアトウのドレス木型に小さめのエプロン、つまみ縫いのスプリットトウと、オールド・イタリアの典型的な意匠を詰め込んだ一足です。後から聞いたのですが、このつまみ縫いは手縫いでないと行えないらしく、しかも三陽山長の職人さんたちにとってはあまり馴染みのない仕様のため、かなり生産に苦心したとか。ご迷惑おかけしてすみません! キャラの濃いデザインですが、合わせてみると意外とクセが目立ちすぎず、オフホワイトのリラックスパンツ、ジーンズ、黒のリネンパンツなど色々な服に合わせて履きました。個人的には、わりと裾幅広めなパンツと相性がいいように感じます。本来のオールド・イタリアUチップはスーツやジャケットに合うのですが、こちらはよりカジュアル方向に使える一足ですね。
そして特筆すべきは、圧倒的に柔らかい履き心地。アッパーにはイルチア社の「ムース」という革を使っているのですが、これが名前そのままに大変ソフト。まるでスエードのようなリラックス感を感じられます。「光二」のスエードも履き心地抜群ですが、見た目とのギャップも含めてこちらを“柔らかさNo.1”とさせていただきました。

アッパーの柔らかさをさらに引き立てているのが、屈曲性の高いビブラム社のラバーソール。薄手ながら凹凸を備えているので、グリップ性にも優れています。私の歩きグセなのですが、2ヶ月履いたら少しだけつま先部分の出し縫い糸に摩耗が。三陽山長のお店では、ラバー素材で継ぎ足す「つま先補修」が可能とのこと。ソールの厚みが2/3ほどになってきたら、お手入れのひとつとして修理を検討してみてもいいかな、と思っています。
最後にちょっとだけ仕様もチェンジ
最後にちょっとだけ
仕様もチェンジ

ちなみに今回私が履いたサンプルに比べて、実際に販売する製品はちょっとだけ仕様をアップデートしています。まず、コバの変更。サンプルよりもコバを若干張り出させつつ、スクエアシェイプを強調しています。そして右端の「光三」はエプロンをさらに小ぶりにアレンジしました。よりキャラが立ってきたかなと思いますが、いかがでしょうか?
さて、半年にわたってお届けしてきたメイキングストーリーもこれにて完結。長らくお付き合いいただき、誠にありがとうございました。靴の企画に携わるのは今回初めてでしたが、三陽山長チームの手厚いサポートのおかげで想像以上にいい靴ができたと思います。ぜひ、店頭で実物もお試しください!
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