

汗ばむ陽気の到来と共に、雨の日も増えてきて梅雨入り間近! 革靴にとっては天敵ともいえる季節がやってきた……と思いきや、どうやらそうでもないようです。しっかり対策と知識を備えれば、たとえ雨の日でも革靴を履きこなすことができるんだとか! ビジネスパーソンの多くは、天候関係なく革靴を履いて出かけなければならないでしょうから、しっかり押さえていただきたい次第。
そんな革靴アディクトが知っておくべき雨の日対策を教えてくれるのは、東京ミッドタウン日比谷店の小林さん。なんでも、三陽山長の中でも指折り数えられるほどのシューケア達人なんだとか! というわけで、スタイリスト高塩さんと共にお話を伺いに行ってきました!


三陽山長 東京ミッドタウン日比谷店 スタッフ
小林 亜弥子
三陽山長勤続8年、ブランド屈指のシューケア達人。普段から革靴を愛用し、その知識や経験による接客はお客様はもとより、スタッフからの信頼も厚い。「全ての靴を防水仕様にしてくれる美人職人」と、高塩&細谷が勝手に命名。

ライター
細谷 駿人
埼玉県生まれ。メンズファッション雑誌で編集として勤務し、2018年に独立。ファッションメディアを中心に時計や美容の編集/ライターも務め、カタログや広告のディレクションも手がける。ごりっごりのゆとり世代のお調子者(笑)。

三陽山長 日本橋髙島屋S.C.店 店長
上村 哲平
高身長のすらっとしたスタイルに爽やかな笑顔が特徴の店長。ファッション好きがこうじて三陽山長に入社し、その後革靴の沼にハマってその暦なんと16年。休日問わずに革靴を履き続けるほどにどっぷり浸かり、今では革靴を履かない日の方が違和感を感じるとか。

スタイリスト
五十嵐 堂寿
長野県生まれ。2011年に独立し、雑誌やカタログなど多くのファッションメディアの他、アーティストや俳優のスタイリングも多数手がける。若者から大人、ドレススーツからストリートまで、年齢層もジャンルも幅広いマルチなスタイリスト。


細谷 今回は来たる梅雨に向け、革靴の雨対策について取材したいと思っています。
高塩 狙ったかのようについさっき、雨に打たれてきました……。
細谷 え、そうなんですか! 僕はギリギリセーフでした。これからこういう日も増えてきますからね、ビギナーとしては知っておきたいところです。
高塩 ビギナーじゃなくても、勘違いしていたり知らないこともあるだろうから、いろいろ聞きたいです。
細谷 ということで、小林さん今日はよろしくお願いします!
小林 よろしくお願いします。まさか今雨が降っているなんて思いませんでした。
細谷 高塩さんは、ある意味“持っている”人なんです(笑)。
高塩 防水スプレーはしてきたから大丈夫なはず!
細谷 防水スプレーってスプレーの跡がつく気がしちゃうんですが、そんなことないですか?
高塩 それは経験ある。残っちゃって、オーストリッチレザーみたいなボツボツができちゃった。
細谷 それむしろ高級になってません?(笑)
小林 ははは。近距離でかけすぎるとそうなってしまうこともありますが、20cmくらい靴から離した状態でかけてもらえれば、跡になることはほとんどありません。試しに踵の内側にかけてみるのもオススメです。
細谷 なるほど。実際、防水スプレーってどのタイミングで使うのがいいんですか? かけてすぐ効果は出るものなのでしょうか。


小林 お出かけする30分前くらいにかけておくのがいいと思います。
細谷 それからどのくらい効果は持続するものなのでしょうか。
小林 およそ12時間前後といわれています。
高塩 え! そうなんですか!? 一度かければ2ヶ月くらい持つと思ってた……。
細谷 僕もそんなイメージはありましたね。ってことは、高塩さんの今履いている靴だめなんじゃ……。
高塩 そうだね……。一応拭き取ってはいるから大丈夫だとは思うけど。これは知らなかった。
細谷 では、通勤利用している方ならオフィスにも一本防水スプレーを置いておくのがいいんですね。
小林 それもそうなんですが、携帯用の小さいものがあるので、それをバッグに入れておいてもいいと思います。
高塩 疑問にも思わなかったけど、この持続時間を勘違いしている人は少なくないんじゃないかな。
細谷 正直、僕も一度やればOKくらいに思ってました。よくよく考えればそんなことないんでしょうけど。
高塩 防水という点では、スムースレザーよりスエードの方が防水力が高いっていうのは、防水スプレーあっての話なんでしょうか?
小林 そうですね。スエード自体は雨には弱いんです。ただ、毛足が長いので防水スプレーの粒子が付着しやすいぶん、効果が出やすいといわれています。
細谷 実際に雨の日に革靴を履かなければならない、という時はどんな靴を選ぶのがいいんでしょうか。基本的には履かない、という大前提ではあるんですが。

小林 まず、ラバーソールです。水が浸透してこないだけでなく、滑りにくさもあるので。
細谷 ソールから染みてきて、そこから水が入ってくるってことなんですね。
小林 水が浸透してくると、キュッキュッって音鳴りがしてきます。
高塩 レザーソールの場合、ちゃんとハーフラバーを張っておかないと雨の日は危険ですよね。尋常じゃないくらい滑る。
細谷 張っておくっていうのは?
高塩 市販の薄いラバーが売っているからそれを張るんだよ。
小林 当店でも取り扱いがありますが、ハーフラバーを張ることで耐水性と耐滑性をあげることができるんです。
細谷 でもレザーソールって、そのものの良さがあるから買ってすぐ張るのはなんだか気が引ける……。
高塩 むしろ、履き込んで傷が入ったソールのほうがいいって聞いたことがある。
小林 そうなんです。傷が入ってザラザラしている状態の方が、設置面に摩擦が生まれるので吸着力が上がるんです。
細谷 なるほど。それは全然知りませんでした。
高塩 だから、細谷が言うように買ってすぐ張る必要はなくて、ある程度楽しんでからがいいんだよ。
細谷 それはなんだか安心。いい靴のレザーソールから鳴る「カツッカツッ!」って音が好きなんですよね(笑)。
高塩 それはわかる。けど、基本的にハーフラバーを張っている人の方が多いと思う。
細谷 え、そうなんですか? それなら最初からラバーソールを選ぶ方がいいのでは?
高塩 そうでもないんだよ、これが。レザーソールの機能性はそのままだから。
小林 ラバーソールよりも返りがいいですから、足に馴染みやすく歩きやすいので。
細谷 それはそうか。ある意味いいとこ取りできるってことですね。
高塩 本当に張ったほうがいいよ。昔、レザーソールで石畳歩いて滑った時、散々だったもん。ちゃんとケガしたから(笑)。


小林 ええ! 大丈夫でしたか!?
高塩 いろんな人にめちゃくちゃ心配されました(笑)。
細谷 それを聞いてハーフラバーを張ったほうがいいってことを実感しました(笑)。ただ、実際に濡れちゃった後の手入れってどうすればいいんですか?
高塩 新聞紙を丸めて入れたりしてたなぁ。
細谷 でもそれだと、新聞紙のインクが写っちゃいません?
小林 そうですね。なので、新聞紙を丸めた上から布を一枚包んでもらえればいいと思います。それで水分を抜いてもらって。
細谷 シューツリーを入れる前にしたほうがいいってことですよね?
小林 シューツリーに吸わせるという方もいますが、無垢の木のものでないと吸わないので、そうなると水分の逃げ場がなくなって靴によくないんです。
高塩 水分を取り除いてから、シューツリー入れた後に通常の手入れをするって流れですか?
細谷 ちなみに水分を取らずに放置するとどうなってしまうんですか?
小林 クレーターと呼ばれるシミができて、革に含まれた塩分が滲み出てきます。
細谷 あの黒い服とかによくつく白い跡ですか!? それって取れないんですか?
小林 クリーナーで除去できます。ですが、クレーターが進行すると凹凸になるので、そうなってしまうと修理しないといけなくなってしまいますね。
細谷 なるほど。やはりケアすることが一番コスパがいいってことなんですね。
高塩 水分を取るのにどのくらい詰め物を靴に入れておけばいいんでしょう?
小林 丸一日くらいですね。
高塩 そういう意味では、ケアがしやすいぶんスエードの方が楽なのかも。
小林 そうですね。ブラシやスプレーで対応できるので。
細谷 そういうところも含めて、雨の日に履くならスエードってことなんですね。
小林 そうかもしれませんね。


高塩 ちなみに、防水スプレーっていろいろあると思うんですけど、どう違うんですか?
小林 当店で取り扱っているのは、いわゆるこれ一本あればOK、というものと、スエード専用のスプレーがあります。
細谷 じゃあ、オールマイティを一本買っておきたいですね!
高塩 でも、専用ってよくない?
細谷 でた! 専用好きだよね(笑)。
高塩 うん、好き(笑)。専用って聞くとどうしてもね……。それで家に物が増えてよく怒られます。
細谷 僕はもう、オールマイティの方で……。スエード靴持ってないし。
高塩 せっかくなので、防水スプレーの使い方実践という名目で、僕のブーツやってもらえませんか?
小林 かしこまりました。
細谷 あ、ずるい! 自分もお願いします!
小林 ははは。もちろんです。

細谷 ちょっと待って、このローファーってまさにスエード&ラバーソールでは?
高塩 ソールも軽量ラバーだから、これはガシガシ履けそう。今、ローファー人気だし。
小林 はい、おかげさまでご好評いただいています。
細谷 それと、この「源四郎」は? 日本橋店でもグラングリーン大阪店でも見たことないような……。
小林 お気づきになりましたね(笑)。こちらは日比谷店限定モデルですよ!
細谷 革の質感めちゃくちゃいいですね。
小林 これはユタカーフというオイルドレザーで、通常のカーフと比べて油分を多く含んでいるので耐水性もあり、雨の多い日本の気候には最適な素材です。ちなみに、三陽山長の企画担当・上村は、雨の日はユタカーフの靴を意図的に選んで履いていますよ! もちろん自己責任ですが(笑)。
細谷 そうそう! 雨に強い革靴ってこういうことが言いたかった(笑)。
高塩 この「源四郎」はレザーソールだけど……。
細谷 そこはハーフラバーを張りましょう!(笑) ってことで、高塩さん。この2足で、春コーデをお願いします!
高塩 あ、はい(笑)。

重厚感を感じるブラックでも、アンライニング仕立てのスエードローファーなら軽やかな印象に。インナーにブラックを入れ統一感を出しつつも、白パンが爽やかさと軽快な雰囲気にまとめてくれます。グレンチェックのグレーブルゾンで上品な男らしさを漂わせれば、春の大人コーデの完成。
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アンライニングローファー「悠弥」は、ブラックスエードとあって通年履くことが可能。汎用性も高く、ラバーソールが軽快さを後押し。カジュアルスタイルの格上げにもってこいです。履き口にあしらったレザーのパイピングがさりげないアクセントに。

アンライニングローファー「悠弥」は、ブラックスエードとあって通年履くことが可能。汎用性も高く、ラバーソールが軽快さを後押し。カジュアルスタイルの格上げにもってこいです。履き口にあしらったレザーのパイピングがさりげないアクセントに。
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シューズに合わせたブラウンスーツの上から羽織ったのは、レインコートにもなるネイビーのナイロンコート。豊かな光沢が艶っぽさをアピールし、エレガントなダブルモンクストラップ「源四郎」の雰囲気とも好相性。ブラウンとネイビーのコントラストが洒落感を漂わせます。
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アッパーにユタカーフを採用した、東京ミッドタウン日比谷店限定のダブルモンクストラップ「源四郎」。適度にスクエア型のシボが入ったダークブラウンレザーが唯一無二の存在感を引き立て、重厚感のある雰囲気を薫らせます。ドレスシューズの定番たるダブルモンクですが、この外観ならカジュアルスタイルにも好相性です。

アッパーにユタカーフを採用した、東京ミッドタウン日比谷店限定のダブルモンクストラップ「源四郎」。適度にスクエア型のシボが入ったダークブラウンレザーが唯一無二の存在感を引き立て、重厚感のある雰囲気を薫らせます。ドレスシューズの定番たるダブルモンクですが、この外観ならカジュアルスタイルにも好相性です。
BUY細谷 ここまで聞いてきてなんですが、ちなみに小林さんはやっぱり雨の日も革靴を?
小林 あ、履かないです。
一同 爆笑
細谷 ははは。基本はそうですよね!
高塩 そりゃね。
小林 あくまで急な雨対策ということで……(笑)。

ライター
細谷 駿人
埼玉県生まれ。メンズファッション雑誌で編集として勤務し、2018年に独立。ファッションメディアを中心に時計や美容の編集/ライターも務め、カタログや広告のディレクションも手がける。ごりっごりのゆとり世代のお調子者(笑)。

スタイリスト
高塩 崇宏
栃木県生まれ。2009年に独立し、雑誌やカタログなど多くのファッションメディアの他、アーティストのスタイリングも手がけ、マルチに活躍するスタイリスト。ヤング誌から大人向けのメディア、アウトドアやゴルフも手がけており、ジャンルも多岐に。
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