細谷　先日いきなりポンっとPRの方から写真だけ送られてきまして……。見たことのない靴だったので、思わず「これなんですか？」って即レスしちゃいました。
高塩　それが、店舗限定の新作だったと。
細谷　そうなんです！ 鼻息荒くして上村さんに「話聞かせてください！」と急遽お願いした次第です。
高塩　連載もちょうど半分だし、タイミング良かったね。
細谷　で、考えてみたら、そもそもの店舗限定とは？ 的なこともしっかりお話聞けてなかったなと思いまして、上村さんにお願いしました。
上村　それぞれの店舗だけの限定販売なだけあって、オンラインストアにも出回らずご紹介する機会もスタッフブログしかなかったのでぜひ！
高塩　店舗限定って毎年新作を出しているんですか？
上村　基本はそうですね。店舗によって出す時期は異なってきますが、年に1型は展開しています。
高塩　既製品の色違いや素材違いなのかな、とは思っていましたが、こうして見ると見たことのないモデルもありますね。
細谷　僕も同じように思っていたので、それが本当に気になって。
上村　ベースとなっているモデルは、基本的には既製品や過去に販売していたモデルです。高塩さんがおっしゃるように、素材違いや色違いがメインではありますが、もっとわかりやすく言うと、三陽山長が実施しているパターンオーダーに近いです。
高塩　なるほど。では、同じものをパターンオーダーでお客様が作ることも可能なんですね。
上村　はい。ただ、店舗限定の方が同じ内容に対してパターンオーダーよりも、お安く購入いただくことができます。
高塩　それはめちゃくちゃ嬉しいですね！ なんなら、今後自分がパターンオーダーをする際の参考にもできるからこれはいいかも。
 細谷　ん……？ ということは、この限定靴は既製品を作る企画チームが主導でやっているわけではないんですね。
 上村　はい。主導しているのは各店舗の店長になっています。
細谷　店舗限定というよりは、店長別注なんですね！ でも、お客様の要望や客層などを知り尽くしているからこそできる提案なのは嬉しいですね。どんな個性派が来るのか楽しみ。
高塩　そうだね。まずは一度全部見たいですね。
上村　では、それぞれご紹介させていただきます。
細谷　ありがとうございます！

上村　一気に話してしまいましたが、今季リリースするのはこちらの7型9足です。
高塩　店舗限定だけあって、三陽山長っぽさはありつつも、いい意味で三陽山長らしくないのがいいですね。
細谷　全部並べてみると一目瞭然ですね。取材してきた中で、その店長らしさを感じたり店舗イメージに合っていると思うから面白い。
高塩　そうだよね。同じブランドなのに店舗ごとにこうも違うのかと。
上村　やはりみんな靴が好きなので、それがありありと出ていますよね。
細谷　それは思いました！ これを半期に一回くらいのペースでやっているのもすごい。
上村　定期リリースになったのは実は３年程前からなんです。最初は各店舗のオープンや周年に合わせて記念モデル的に出していたのですが、おかげさまで長く続けてきたことでそういった店舗が増えてきまして。
高塩　それなら店舗限定企画としてまとめてやろうと。全体的にローファーが多くてカジュアルシューズが多いですが、テーマを設けてやっているんですか？
上村　そうです。テーマを設けたのは今季からです。今季は“カジュアルドレス”をテーマに各店舗へ投げて、各々から提案をもらったという流れです。元々ドレスシューズが強いブランドですが、最近はオンオフ兼用出来る靴の需要が高まっていて、そこを強化する意味で。
高塩　ローファーを多く出ているのも証拠になるけど、オンオフ考えるなら今はローファーが本当に役に立つんですよね。
細谷　ガチガチのフォーマルっていうのもそれこそ、ビジネスシーンより冠婚葬祭みたいな場に限られてきてますもんね。ビジカジの定着もあって。
高塩　仕事にも着ていけるキレイめなジャケパンや今人気のゆるいセットアップ、もちろんデニムやチノパンとも合う。こなれた上品さを演出するなら、ローファーが一番手軽だと思う。
上村　そうですね。それでもこうしてみるとそれぞれの個性があって面白いですよ。
高塩　上村さん的に驚いたモデルってあるんですか？
上村　驚いたというか、一番“らしさ”を感じたのは名古屋の縹一郎／HYOICHIROですね。池田店長のこだわりがこれでもかと詰まってますね(笑)。
高塩　あ〜わかる！(笑) 以前、取材でお会いしましたがすごくらしさを感じますね。あえて削ぎ落としてる感じというか。着こなしのハードルも正直高め、かな(笑)。
細谷　履いてそうですよね。
高塩　ワイドパンツぐらいじゃないかな。それもクリース入りのキレイめなタイプのもの。
上村　池田店長もワイドパンツに合わせた時をイメージしてると言っていました。
細谷　オンオフ履ける靴が多い中で、あえて着こなしを限定していくんですね(笑)。そこが池田店長らしいというか、名古屋店にくるお客様のファッション感度の高さを感じますね！
高塩　これってそれぞれどのくらいの数を作るんですか？
上村　モデルによって違いますが、だいたい各モデル10足くらいですね。サイズごとに1〜2足程度。
高塩　それは少ないですね！ スペシャル感が高まりますね。それに金額も抑えている。
上村　そこはかなり頑張っていますね。
細谷　高塩さんはどんなモデルが気になりますか？

高塩　僕は八重洲の兼二とグラングリーンの流三郎かなあ。
細谷　流三郎も変化球って感じでいいですよね。ライトブラウンだからクリーンなイメージもあるし。
上村　そうですね。フルサドルも昔はあったんですが今はやっていないので、一般的なローファーとは違った履き姿になると思います。
高塩　全体的にブラウンが多いのも店舗限定ならでは、という感じですね
上村　インラインではブラックやダークブラウンがメインなので、こうしたライトブラウンは目新しいと思います。
細谷　それに、店舗限定を手に入れるなら初めてのモデルではなくて、2〜3足目という方の方が多いですもんね。
上村　それも大きいですね！
高塩　それなら黒よりも茶を選択したくなるよね。
細谷　靴好きはもちろん、ファッション好きも選びたくなる色ですね。
高塩　一方で、この伊勢丹や日比谷のような今どきな一足も欲しい！ って気持ちはすごくわかる。間違いなく売れるアイテム。
細谷　チャレンジングではなくても絶対いい！ てことはわかりますからね。それこそ店舗の色が出ているなって思います。
高塩　共通しているのは、本当に靴好きが作ってるってところですね！ ジェントルマンズカットやウィングチップの細かいギザのようなツボを刺激するディテールから、ハーフラバーを貼った勘三郎のように実用性に寄ったところもまさに。
細谷　こういうの欲しかった！ が詰まってますよね。
高塩　そう。こういうのってパターンオーダーでは作れるんだろうけど、実際に作るのは難しかったりするからね。嬉しいと思います。
細谷　せっかくなので、今回は上村さんと高塩さんにライトブラウンの一足を着こなしてもらいたいなと！ というわけで、早速お願いします(笑)。
高塩　早！(笑)
上村　ははは。かしこまりました。

高塩　でも、見れば見るほど兼二が気になってきた(笑)。ここまで男らしい靴を三陽山長ではほとんど見ないから。
上村　そうですね。三陽山長では縹一郎とまた違った意味でイメージとは離れていますね。
細谷　八重洲店はサンヨーコートも置いているからか、フォーマルなお客様が多いと思っていたので意外でした。
高塩　でも、駅直結で海外の方をはじめ客層が一番幅広そうでもあるから、納得と言えば納得です。
上村　そうですね。フォーマルだけではなくて、カジュアルをお求めになる方も多いです。
細谷　近々八重洲店にもお伺いするので、この話を聞くのが楽しみです(笑)。
上村　店長自身が、こうしたカジュアル靴が合うようなアメカジテイストが好きな方なので。デニム穿いていることも多いですし。
高塩　あ〜じゃあもう、ね(笑)。
細谷　白Tシャツとデニムに履いて欲しいというコメントもね。兼二というより……栄作？
高塩　名前引っ張られすぎ(笑)。
細谷　袖を捲って、薄いブルーのデニム……。
高塩　それだともう豊だよ(笑)。
上村　ははは。確かにそうですね。
細谷　ちなみに過去作で、一番人気だったものってどんなモデルなんですか？
上村　反響が大きかったのは、2年前にリリースした“狩三郎／SHUZABURO”ですね。
高塩　あー、日本橋店別注の！ あれを企画したのはどなたなんですか？
上村　あ……私です(苦笑)。
細谷　知らなかったとは言え、これはナイスパスしてしまいましたね(笑)。
高塩　でもあれは本当にいいモデルだったから仕方ない！
細谷　あのシボ感とブラウンのUチップは、本当に完成度が高かったですもんね。
高塩　今回もかなり完成度の高いモデルばかりだから、楽しみですね。
細谷　これが店舗でしか買えないんですから、そのスペシャル感もいいですよね！
上村　そうですね！ インラインとともに店舗限定にも注目していただきたいです。