細谷　佐々木さんは三陽山長のキャリアも長いと聞いていますが。
佐々木　もうかれこれ10年以上は三陽山長で勤めていますね。玉川髙島屋S.C.も長くなります。
高塩　どの店舗でもそれぞれ違う雰囲気のお客様が多いですが、ここも独特ですね。二子玉川という地域性もありますが。
細谷　高級感がありますよね。となるとやはりビジネスシューズが人気なのでしょうか。
佐々木　実はカジュアル靴の方が人気なんです。ドレスシューズをお求めになる方は、パターンオーダーが基本で、既製品の中だと匠や極シリーズを購入される方が多いですね。
高塩　傾向がはっきり分かれますね。いい靴が欲しいと。
佐々木　そうですね。履く頻度も低いのでどうせならいいものが欲しい、というお声をよくいただきます。
高塩　必要なものとわかっていたらそこに投資を惜しまないんですね。
細谷　となると、カジュアル靴の方が時間かけて吟味される方が多そうですね。
佐々木　そうですね。でも、オーダーするとしても明確にこういうのが欲しい、という思いで来てくださる方が多いです。
細谷　パーティや会食のドレスシーンはもちろん、休日でもいい靴を履いていたいという考えなんでしょうね。
高塩　漠然としたイメージだけど、品格のある大人が多い印象です。
佐々木　でもここ最近は、玉川髙島屋S.C.のリニューアルもあって若いお客様が増えていますね。

細谷　え！？ そうなんですか？ 若年層にシフトしているのですか？
佐々木　どちらかというと、ずっと長く買い物をしてくださったお客様が、お子さんを連れてくるというのが多くなってきました。
高塩　革靴は継承できますからね！ サイズが合えばなおさら。それとともにプレゼントすることも多いんですね。となると、メインは30〜40代？
佐々木　そうですね。40代が多いです。50〜60代の方だとある程度の型は持っているから、個性的な靴やパターンオーダーが好まれます。
細谷　そういう方はきっと手入れも行き届いてるんだろうな〜。
高塩　ここ来る前に革靴履いている50代くらいの男性を見かけたんだけど、靴もきれいだし佇まいがカッコ良かった。
佐々木　やっぱり手入れは重要ですよね。
細谷　佐々木さんも見てしまいます？
佐々木　職業柄というのもありますが、足元をつい見てしまいます(笑)。
細谷　そう！ 今日はそういうのを伺いたかったんです！(笑) 　女性から見て、革靴履く男性の中でもどういう人が好印象かは気になります！
佐々木　ははは。まずは、サイズが合っていて手入れがされているかどうかですね。参考になるかわかりませんが(笑)。
高塩　そこは確かに気になります。
佐々木　いいスーツやカジュアルをうまく着こなせても、足元が疎かになっている方って意外と多くて。
細谷　あ〜わかります！
高塩　僕も仕事柄、銀座や丸の内、新橋とかよく行くんですけど、なんだか靴だけ惜しい！ って人をよく見かけるんですよ。
細谷　汚れていたり傷ついているまま履いていると、キメきれてない感じがしますよね。
高塩　ものすごく尖った靴とか昔流行ったりしていたけど、今は違うし。これはトレンドの話だけど、手入れできてるかどうかは関係ないからよりパーソナルな部分が見えてしまうんだよね。
佐々木　そうですね。だらしないのかな〜と、漠然とですがそういう印象を持ってしまいます。
細谷　手入れが行き届いてる人にはグッときますか？
佐々木　そうですね。好印象です。
高塩　靴一つとっても、物を大事にするとか気が利くとか、そういったいい印象を与えやすいですよね。
佐々木　そうなんです。でもこれって逆もまた然りだと思っていて。

細谷　逆というのは、靴だけ着飾ってるということですか？
佐々木　そうですね。意外と多いのは、靴だけすごくビカビカに手入れされすぎていて浮いてしまっているという……。
細谷　その分、今度はコーディネートが疎かになっているってことか。
佐々木　やっぱりバランスが重要かなって思います。
高塩　でも、こうした職人系の靴みたいなコレクションできるものは、男は好きなんですよね〜。ファッションに興味ないという人も少なくないですから、こうしたハマれるものって特に。
細谷　磨いた分だけ結果が目に見えてわかるし？
高塩　そう！(笑) 服に無頓着だから、靴はきれいでもパンツはシワだらけだったり……。
佐々木　ちょっと残念ですね。
細谷　バランスって難しいですね。
高塩　別にお金をかけろとは言わないけど、セオリーとしてのベーシックなスタイルや相性は知識として持っておくと印象は変わると思う。
佐々木　そうですね。それでいうと、手入れってトータルで服を買うよりコストがかかりませんから、そういった意味では手軽にできるお洒落の一歩だと思います。
細谷　確かにそれはそうですね。気持ちはわかるけど、やりすぎない範囲の手入れで(笑)。大人が革靴を着こなすのに手軽なものってなんですか？
高塩　圧倒的に白パンだね。歳を取れば取るほど似合うから、迷ったら白パン！ というレベル。
佐々木　なるほど！ そうですね。靴も含めて白パンをきれいに着こなす方は素敵だと思います。
高塩　しかも白パンって、本当に大人ならではなんですよね。若者が着ても違和感を感じてしまうというか。
細谷　それはあるかもしれませんね。大人の秘密兵器！ せっかくなので、佐々木さんにイチ押しのカジュアル靴を、高塩さんにはその靴をもとにオススメの白パンコーデを見せていただきたいです。

細谷　あれ？ 兼三郎復活したんですか？
佐々木　一時展開をストップしていたんですが、リニューアルしました！
高塩　細谷くんが買ったのって兼三郎じゃなかったっけ？
細谷　そうなんです。この連載で満を持して買ったんですが、その後すぐに販売なくなったと聞いて、複雑な気分になってました(笑)。
佐々木　ははは。兼三郎は人気の高いモデルだったので、細谷さんのようにまた販売ないのか？ というお声はいただいていました。新しいモデルは勘三郎ほどドレス寄りに作っておらず、汎用性も高い佇まいになってます。
高塩　カジュアル履きに最適だから、それこそ白パンと合わせると上品さとカジュアルさのバランスがいい塩梅にまとまるんですよね。
細谷　今はまだまだ暑いけど、これから革靴が気兼ねなく履ける季節がやってきますからね！
高塩　そうそう。秋冬はおしゃれが楽しくなるからね。これから活躍の場も増えるし、やっぱりスニーカーにはない好印象を得られると思うよ。
佐々木　そうですね。気を遣ってる方なんだな、と思うだけでポジティブな印象を感じます。

細谷　カジュアルでもこの振り幅を楽しめるのはありがたいですね。
佐々木　男らしさがありつつ、シックさも感じられて素敵です。
高塩　ラギッドな着こなしって、いわゆる女子ウケはしにくいんですがこのくらいのバランスなら、男っぽくなりすぎなくて好印象を得られるんじゃないかな。兼三郎の懐の深さがあってこそ。
細谷　艶っぽい光沢感が効いてますよね！ デニムも程よいテーパードだから荒々しく見えない。
高塩　これなら女性ウケいけると思いますがいかがでしょう！？
佐々木　そうですね(笑)。正直街で見かけたら見てしまうかも。まずは靴を(笑)。
細谷　ははは。でも実際、若い子もスニーカーより革靴の方が惹かれるって人少なくないんじゃないかな？
高塩　20代ならまだしも、30代も過ぎてくるとスニーカーもクラス感ある物を持っていて欲しいよね。それこそ、佐々木さんが仰っていたように最近は若いお客様も増えてるから、上品志向は高まってるはず。
佐々木　そうかもしれませんね。幅広いお客様が男女問わずにいらしてくださいますが、10代の女の子でも、いいスニーカーなのに汚れているだけで、ちょっと......と思ってしまうと言っていました。
高塩　いや、本当にそう！ 革靴の話をしているけど、手入れって結局靴全般の話なんですよね。
細谷　なるほど……。結論、好印象を与える最短の近道は“靴を手入れしよう”ってことなんですかね？(笑)
高塩　そうなっちゃうね。
佐々木　あとはサイズです！
高塩　そうでした。でも、まずやってみて欲しい！ 最初は面倒だなって思うかもしれないんだけど、いざやってみると楽しくて夢中になるから。
佐々木　やった分だけきれいになっていくのが目に見えてわかるから楽しいですよね。
高塩　自然に2足、3足と手が伸びるんですよね。なんなら、奥さんの靴もやっちゃったり……(笑)。
佐々木　わかります！
細谷　でも、ビカビカにし過ぎないように注意！ ですね。
佐々木　ははは。そうですね。