核心に触れるデザインは、
ものを尊重する気持ちに
繋がる。
磁器照明作家
飛松弘隆
HIROTAKA TOBIMATSU
磁器照明作家・飛松弘隆さんが手がけるのは、懐かしさを感じさせつつ新しい魅力も備えた、あたたかみのある磁器の照明。長く暮らしに根付いていくロングデザインを追求するその思いは、100年コートが大切にするものづくりの哲学とも深く重なっていた。
- コートにはどんなイメージを持っていますか?
- 僕は照明や住宅の仕事をしているのですが、コートは建築でいうとファサードのような存在だなと感じています。インナーが内装なら、コートは外観。内と外を決定づけ、自分自身を守る境界でもあります。だからコートを着ることは、安心感につながっている。そこがすごくいいなと思っています。
- 100年コートを羽織ってみた印象を教えてください。
- これまでロングコートは、自分の体格には少し大きすぎるという印象があって、子どもの頃に父親の服を着たような「着せられている感覚」があるイメージでした。でも今回このコートを着てみたら、とても自然になじんだんです。普段も薄手のコートは着ますが、こういうしっかりとしたコートがしっくりきたのは初めてでした。100年コートの中では軽めのタイプというのもあってか、着心地が良く着やすかったです。
- 飛松さんの作品と100年コートのコンセプトには通じるところがあると思います。
- 100年コートが目指しているロングデザインという考え方に強く共感しました。流行を追うのではなく、長く愛されるものをつくる姿勢は、僕が照明づくりで大切にしていることと重なっています。僕が照明をつくり始めた原点も、「100年後まで残るものを作りたい」という思いでした。骨董市で100年前のものを見て学び、その中で古いミルクガラスの照明と出会ったんです。途絶えかけた文化を継承し、新しい形で発展させたいという思いでスタートしました。
- 時代を超えて残っていくものには、どんな魅力があるのでしょうか。
- 本当に長く残るものは、表面的なデザインをしているのではなく、もっと深いところまでデザインしていると思います。核心に触れるところをテーマにしてデザインされたものはずっと使えるし、ずっと大事にしていきたいと思わせる。一番重要なのは「残したい」と思える気持ちに繋がるかどうか。例えば僕の照明は実際に割れることがあるけれど、100年以上残る素質もあるんです。それは物理的な強さではなく、それを使う人の“尊重する心”が破損リスクから遠ざけてくれています。それを「尊重強度」と呼んでいるんですが、誰がどんな思いで作り、どう受け継がれてきたのか、そのストーリーを知ることで、ものへの敬意が育っていく。そして、ものを長く生かしていくのだと思います。
- 日本らしいものづくりとは、どういうことだと思いますか?
- 日本の文化は、長い時間をかけて海外の文化を受け入れながら育ってきました。僕の照明は、よく「懐かしいのに新しい」と言っていただけるのですが、海外でも同じように評価していただくことが多いです。それはガラスシェードのルーツが西洋にあるからでしょう。西洋から日本へ渡った文化が、日本式に醸成されて、再び西洋へ戻っていく。面白いですよね。コートも元は西洋の文化ですが、日本で独自に発展し、日本のものづくりとして根付いています。だからこそ、日本でつくり続けることに意味があると思っています。また、海外ではプロダクトをデザインだけして作るのは他の国に任せるという流れが更に加速しています。基本的に「自分たちの手でつくる」というこだわりを保つことは日本の強みだと思います。
- ものを選ぶときに重視している視点はありますか?
- 仕事柄、いつも色だけでなく「明度」を意識しています。今回の撮影でも、ベージュのコートに合わせて何を着ようか迷ったのですが、モノクロ写真になることを考えて、白いシャツを選びました。中に同じ明るさの服を着るより明度差をつくったほうが、メリハリがついてコートのフォルムが際立ちます。さらに白は光を反射するので、裏地の美しさまで引き立ててくれる。そういう細かな見え方も考えて、ものを選んでいますね。
- 10年後、20年後も大切にしたい美学があれば教えてください。
- 一番は、自分に正直でいることです。人の顔色ばかりうかがっていては、本当に面白いものは作れません。一方で、伝統に固執しすぎるのも違うと思っています。昔ながらの技術や文化を大切にしながら、時代に合わせて更新していくことも必要です。やってみて違ったら変えればいい。挑戦しないまま判断するのではなく、まず試してみる姿勢を持ち続けたいですね。古いものを守りながら、新しい価値へと育てていく。その積み重ねが、100年先まで残るものづくりに繋がると思います。
飛松弘隆/磁器照明作家
1980年、佐賀県生まれ。多摩美術大学工芸学科陶プログラム卒業後、陶芸家のもとで研鑽を積み、2014年より照明作家として本格的に活動を開始。大正から昭和初期のミルクガラス製ランプシェードに着想を得た、磁器による鋳込みという手法でつくる照明を 「飛松灯器」の屋号で発表している。蝋燭や夕日を思わせる、磁器の透光性を生かした柔らかい灯り、伝統と現代を繋ぐデザインが評判を呼び、海外でも個展やインスタレーションを展開。日本のものづくりを世界へ発信している。