粋 since 2001 days and artisans

粋 since 2001 days and artisans

三陽山長と粋

確かにいる、必要としてくれる人のために。
流されず、自分が信じたことを信じる。
一朝一夕ではなかなかうまくいきませんが、
そう繰り返した日々は必ず先につながります。
ようやく、20年が経ちます。
伊達でも気障でも華美でもなく、粋であること。
少しずつですがその在り方がわかってきました。
これからも私たち三陽山長は
そんな粋の持ち主と強くつながっていたい。
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谷口 弘武

谷口化学工業所 代表取締役

谷口 弘武

1910年創業の老舗靴クリームメーカー谷口化学工業所の五代目代表。ライオン靴クリームを筆頭に、足元を美しく支えるためのシューケア用品の企画・製造・販売まで自社で行っている

100年経ち変わったこと、
変わらないこと

明治43年に谷口化学工業所の代名詞であるライオン靴クリームが発売されたころ、世界の背景は大戦時代真っ只中。日本に紳士靴の概念が根付く以前から靴クリームを作り続けてきた老舗は、長い歴史に驕らず常に今を大切に生きています。
「革を長持ちさせる、保湿させる、美しくさせるという目的やものづくりに対しての取り組み方は100年以上経った今も変わっていません。はじめて開発した靴クリームの製造方法も堅守し続けています。反対に変わってきていると感じるのは靴クリーム、靴磨きの在り方です。これまでの革靴はビジネスマンのフォーマルなスタイルで革靴自体も高価な時代が長く続きました。靴磨きはせっかく購入した靴を長く履くための日用品のお手入れとして身近な存在としてあったと思います。そこから靴磨きを趣味にする方が少しずつ増えていったことによる嗜好品としての在り方を変化として実感しています」。
100年以上の歴史で変わらないことは、お客様の手に届いた時に感動を生み出したいという気持ちを込めた製造方法。続いて谷口さんは自社製品に関しての特長を教えてくれました。
「靴クリームは有機溶剤というガソリンに近い原料を使用していることから石油のような匂いもしますが、我々の製品は原料を厳選し自社開発した香料を混ぜることで靴磨きの際に良い匂いがするように製造しています」。
2020年からは自然由来の原料を使った製品開発も開始。時代と足並みを揃えながら業界をリードしていく存在として、谷口化学工業所の意志は時代ごとに強さを増しているように感じ取れます。

丁寧な手作業の象徴“三度注ぎ”

谷口化学工業所で行われている工程のほとんどは手作業によるものです。中でもひとつひとつの靴クリームに液体を複数回分けて注ぐ三度注ぎには特にこだわりを持っています。それは会社に残る伝統的手法であり、丁寧なものづくりを続けていくための精神的支柱のような役目も担っているからです。
「製造から仕上げまでの工程を全て自社で行っていて製造部門に2人、仕上げ部門に4人の6名体制です。その人数で冬の繁忙時期には1日1000個以上のアイテム数を製造しています。注ぎは丁寧度を高めるとそのぶん時間もかかりますが、お客様が蓋を開けた時、表面に光沢を感じる仕上がりになるよう創業からずっとこだわっています。検品体制やラベル貼りもひとつずつ手作業で行います」。
谷口さんは5年ほど前にIT業界から家業であるシューケア用品の製造業へ転職してきました。技術面も精神面も、先代や先輩社員たちから教わりながら今に至ります。自身でも家業を継ぐと決意してから毎日のように靴を磨き、使う側の立場になって考えてきました。丁寧さを欠くことなく製品をより良くする発想について。これからの靴磨きの在り方について。

敷居は低く、目標は長く

「靴磨きが趣味嗜好の対象に変わってきたことは非常に喜ばしいことで突き詰めていく動向になります。一方で革靴を長く履くために日常的にケアしていた背景こそ今の時代に合う考え方でもあります。革靴はさらにフォーマルな存在として自分の大切な場面で選ばれるものになっていくように感じています。我々はメーカーとして革靴の品格を整えながら、決して敷居の高い業界ではなく身近であることを次世代に向けて発信していきたいと思っています。若い世代からの注目度は上がっていて職人として携わっていきたいという方も増えていますが、業界全体で見れば私の同世代はまだまだ少ないように思います。革靴も靴磨きも広く知られている存在のようで実はまだ知られていないことが多い世界なので、我々の製品がきっかけのひとつになれたら嬉しいです」。
2019年の父の日、谷口さんは親子靴磨き教室というイベントを開催しました。150人近くが集まり靴磨きに興味を示してくれる人の多さを実感するのと同時に、子供が父親の靴を磨いてあげたいという気持ちに心を温められたそうです。学童期の子供たちが靴磨きと触れ合う機会の創出は次世代に向けた発信の第一歩。ご自身は家業でなければ趣味の筋力トレーニングが生かせる体を動かす仕事関係に就いていたかもしれない、なんて余談には笑ってしまいましたが、少なくとも谷口さんの中でこうした活動を継続したい気持ちが芽生えたことは確かです。今後革靴を履くことが心の切り替えとなるならば、靴磨きは心を整えるために必要な時間になる。大切な人と大切な時間が過ごせるシューケア用品へ。谷口さんの丁寧なものづくりは続いていきます。

友ニ郎 誠実であり続けるオリジン
友ニ郎

三度注ぎに使われているジョウロや靴クリームのラベル、出したいニュアンスを達成するまで何度も繰り返すカラーテスト。自社で生産工程を完結させるため工場にはさまざまな道具がありますが、どれも丁寧な手作業に由来したものばかりです。三陽山長でも一緒に靴クリームを作らせてもらいましたが、創業当初から継承されてきた谷口化学工業所の真心は長年愛される存在として幅広い層に受け入れられています。

三陽山長を知る皆様から最も長く愛されているモデルが「友二郎」です。創業から歴史をともにしてきたブランドの原点であるこのストレートチップシューズは、コンフォート化が進む現代においても紳士靴の定番として堅牢なポジションを確立しています。アイレット横のスワンネックステッチはもちろん、細ピッチに縫い上げられた古典的な意匠は紳士靴作りの伝統であり、時代に左右されることのない道標です。

友二郎 / TOMOJIRO

ストレートチップ

¥91,300