粋 since 2001 days and artisans

粋 since 2001 days and artisans

三陽山長と粋

確かにいる、必要としてくれる人のために。
流されず、自分が信じたことを信じる。
一朝一夕ではなかなかうまくいきませんが、
そう繰り返した日々は必ず先につながります。
ようやく、20年が経ちます。
伊達でも気障でも華美でもなく、粋であること。
少しずつですがその在り方がわかってきました。
これからも私たち三陽山長は
そんな粋の持ち主と強くつながっていたい。
培う
色川 裕哉

代官山青果店ディレクター /
KEIMEN

色川 裕哉

2020年にオープンした代官山青果店のディレクター。また2021年5月にファーストコレクションを発表した農業にフィーチャーしたアパレルブランドKEIMEN(カイメン)のプロデュースに深く携わる

畑違いを開墾した青果店

代官山青果店はアパレル会社によって運営される異色の八百屋です。発起人である色川さん自身もまた、青果店立ち上げまで野菜販売の経験や農業に関する知識などはありませんでした。しかしよくある「アパレルが別業態へと進出」話で終わらないのは、これまで得てきた経験を生かしながら愚直に前へと進む色川さんのものづくりに対する姿勢によく表れています。
「友達の周りにいる農家さんで野菜が売れず困っていると聞いたのがきっかけでした。最初は何か販売のお手伝いができないものかと考えたんですが、いっそ自分たちで販売できたほうが早いと思ったんです。ただ野菜に関する知識が全くなかったのでまず農家さんに畑を見せてもらうための連絡を取って。素人で何もわからないまま畑に行き、ナメるなとか、野菜の名前も知らないのかとか、怒られながら勉強させてもらっているうちに受け入れてもらえるようになりました。それとは別に野菜がどうやって作られているのかわからなかったので自分で畑を借りることにしました。農業は土に種を植えるだけでも育ちません。土の中で微生物らが発生し水や空気や光も必要で、環境に大きく左右されます。さまざまな要素が組み合わさって成立しているものは単純にはいかないことを、農業を通じて改めて理解することで考え方なども大きく変わりました」。
自分流儀な仕事のスタンスで農家とコミュニケーションを取りコミュニティを形成した色川さん。現在代官山青果店では農家からの産直と仲卸からの仕入れ、神奈川県三浦市にある自社ファームでの収穫物や加工食品も販売していますが、そのほとんどは持ち前の明るさと機動力がもたらしたものです。ちなみに代官山にお店を開いたのは農業体験開始からわずか3ヶ月ほどしか経っていないタイミングだったと言うのでその行動力に驚きです。

規格外だとダメ、は理由にならない

青果店を通じて農業と触れ合うようになった色川さんはある問題に直面します。それはフードロスについて。農家の手助けになる道を選択した側として理想的な姿とは何かに知恵を絞ります。
「八百屋は品揃えにある程度のボリュームがないと成り立たないのですが、切り盛りするのが素人では発注から販売し終えるまでにどうしても鮮度が落ちてしまいます。鮮度が落ちたものを販売できないし、かと言って仕入れを抑えればお店が回らない。そこでお弁当や加工品へ回してフードロスを防ぐことにしたんです」。
このアイディアがうまくいき、ロスの回避や発注がかけやすくなること以外にお弁当が認知されはじめて販売数も次第に伸びていきました。しかしまだ課題は残ります。
「確かに循環は良くなったんですが実は仕入れによるフードロス以外に、畑の土の上に放置されている規格外の野菜などもあります。自分で畑をやるようになって気づいたんですがそれを見た時にすごく悲しくなったので加工品へ回すようにしています。規格外の野菜は言ったら個性。本質は変わらないので人間と同じくいろいろな形があって良いと思うんです。それをより多くの人に伝わるコーナー展開や実際に規格外の野菜を食べられるコンセプトカフェも作りたいですね。農家さんに寄り添う形でやれることを企画していきたいと思います」。

足で得た以上に
感情が動かされるものはない派

青果店について掘り下げてきましたが色川さんがいる会社はアパレルが本業、そのノウハウを所持しています。自身の農業体験で得たものをさらに違う形で発信できる背景を最大限に活用した、農業に特化するブランドKEIMEN(カイメン)を仲間と一緒に動かします。
「ホームセンターでよく売られているナイロンのセットアップやワーク系のウェアを着ていたんですが、やっぱり自分たちの好きな格好で作業できたほうが気持ちも上がると思って。でも僕が見た限りではそれと農作業の機能面を両立させている服があまりなかったので作ろうと思ったのがまずひとつです。もうひとつはそれを着ることによって農業に興味を持つ人が増えたら嬉しいです。耕作放棄地と言われる空いた畑もあって今後それが増えると農業はさらに縮小してしまうので、若い人たちがそこへ入っていく循環を作りたいという気持ちがあります。二拠点生活を送る人も増えているので、各地方の農家さんたちと協力し合って農業に興味を持った人をつなげて雇用を生み出す企画も進めています。畑もそうですし、職人さんたちに直接会いに行くといろいろなことに気づかされます。アパレル業界でもSDGsやサステナブルをよく耳にしますがオフィスでそれを話しているようでは何も変えられないと思うんです。今のファッションの兆候やムードは全く関係なくて、結局のところ実際に足を運んだ結果何を感じたのかが一番ですし、何より僕自身がそうしたいタイプなんだと思います」。

源四郎 日々照らされる細やかな気配り
源四郎

作業道具が入る大きなポケット。動きやすい肩周りやシルエット。汚れの目立たない配色。農業側から覗かなければきっと見落としてしまう日常着のアイディアは、実際に作業している色川さんたちだからこそ生まれた視点です。科学的技術に支えられたものはもちろん快適ですが、機能的とはそれだけを指し示しているわけではありません。私たちの生活は無機物の上ではなく土の上で成り立っている。そんな言葉が聞こえてきます。

「源四郎」はシューレースがないダブルモンクストラップシューズです。着脱がしやすくデザイン性の高いディテールを持つモデルであり、脱ぎ履きの多い日本文化に寄り添えるようライニングは濃色に設計されています。勝手が良い、という日本語がありますがそれは作り手が目的を果たすための機能以外に、使う側の気持ちに沿ったものづくりをデザインしていることが大きく関係しています。日常を楽しく快適にしていくための発想に目を向けてみればいつもとは違う新鮮な考えに出会えるはずです。

源四郎 / GENSHIRO

ダブルモンクストラップ

¥94,600