粋 since 2001 days and artisans

粋 since 2001 days and artisans

三陽山長と粋

確かにいる、必要としてくれる人のために。
流されず、自分が信じたことを信じる。
一朝一夕ではなかなかうまくいきませんが、
そう繰り返した日々は必ず先につながります。
ようやく、20年が経ちます。
伊達でも気障でも華美でもなく、粋であること。
少しずつですがその在り方がわかってきました。
これからも私たち三陽山長は
そんな粋の持ち主と強くつながっていたい。
整える
高橋 康太朗

Wisdom Tool代表 /
ビスポークテーラー

高橋 康太朗

原宿に居を構える完全予約制テーラーWisdom Tool(ウィズダム ツール)の代表。時代に左右されないオーダーメイドのスーツは美学を持つ新世代の人物たちを中心に幅広く支持を集めている

着てからがお付き合いの本番です

革靴とスーツの関係は紳士服の観点から切っても切れない間柄というのは言うまでもありませんが、それだけ固まったイメージもしやすい存在と言えます。高橋さんがスーツへ抱いた最初の感情もまた「格好悪いもの」でした。そんな負のイメージをプラスに働かせる新世代のテーラーはとてもフラットに物事を捉えています。
「スーツに対してある種のコスプレ感を抱いたのは確かですが、もっと自然に着られる存在になれば格好良く見えるんじゃないかと考えていました。なのでまずスーツも洋服として楽しんで着てもらえるようにしていきたいと思ったんです。僕の場合は単純に洋服が好きという思いが根底にあって、この仕事にのめり込んだきっかけも洋服を売るだけではない面白さを感じたことにあります。オーダー服は既製服を黄金比とするのに対して、黄金比を崩していく作業です。多くの人に合うことだけを正解とせず、お客様ひとりひとりと話をして少し形を変えてみたり気になるパーツを見えなくしたり、良いものを一緒に作っていく感覚があります。そして作って渡して終わりではなく、着てからお付き合いがはじまるところにも面白さを感じました」。
良い洋服の価値観はそれぞれで違います。値段もあれば着心地もあり、立ち仕事か座り仕事かで選び方が変わることもあります。普段どんなことをして何を考えているのか。高橋さんは着る側にとっての最良を考えるために短くても1時間、長ければ2時間近くコミュニケーションを取ります。その全てはお客様に対して何ができるかという一点に集中しています。人生に寄り添いながら、少しでも長く手助けできる存在であり続けるために。

「Wisdom Toolぽいな」
と言ってもらえるように

「ビスポークやテーラー、オーダーメイドなど普通つくであろう肩書きはつけませんでした。それをつけることでひとつに括ってしまうような気がして。業界内の陣地取りではなくてもっと広がることを選びたかったんです。自由に楽しめるのがウィズダムツールですが今も“うちっぽさ”は何だろうといろいろ学びながら常に考えるようにしています。ここはスーツをオーダーできるお店でスーツという洋服を介して自分を整える居場所というようにも捉えているので」。
高橋さんやスタッフの皆さんは好みのテイストや知識をしっかりと持ち合わせており、スーツ好きなお客様との深い話も弾みます。反対にスーツのことをまだよく知らないお客様には系統や仕立て方を話す前に、なぜ必要なのかしっかり聞くことを大切にしています。
「女の子と食事に行くためでもいいですし、成人式や結婚式、ビジネス用でも何でも、自分のためというより相手のためという気持ちがあると思うんです。なのでその気持ちに沿えるものを作るためにたくさん話をします。その上でここへ来た全員が必ず何かを買う必要はありません。買わないことが良い選択の場合だってあるので、まず話をしに来てくれるだけでも嬉しいですね。ただそのせいもあるのか完全予約制のお店ですが普通にフラッと入ってきたりもします(笑)。盆栽アーティストの濱本祐介さんの作品を置かせてもらっているので盆栽の写真を撮りに来るだけの方もいたりして、そういうところもうちっぽい面白さかなと思っています」。
こうあるべきだという慣習はできるだけ取り除くことを選択した高橋さん。そしてもうひとつ、他のお店に引けを取らない熱量で取り組むオリジナリティがあります。それはヴィンテージ生地の仕入れ。一着分しか取れない生地も多々あるため他と被りにくい唯一の魅力があります。「在庫によるリスクはありますが小さくカットされた生地見本より実際の生地で見たほうがイメージしやすく印象も変わるので」と高橋さんはさらりと話します。

ファッションに対して
“いいね!”のオープンマインド

ウィズダムツール開業当時は20代半ばだった高橋さん。ファッションを含めた多文化への柔軟な感性は近い価値観を持つ同世代を中心に支持されて、その輪はスーツに毎日袖を通す人の洋服として、一生に一度の晴れ舞台に相応しい洋服として確実に拡がっていきました。
「この業界は良い意味ですごく真面目で物事に対するリスペクトがあり、知識や歴史を重んじる傾向が確かに存在します。そういう意味で僕たちは若手でまだまだの身だとも痛感しています。人から良く見られたい欲求もあるので、基本的には洋服好きのかっこつけなのかもしれません。でもそれならもっと格好良くなりたいし、精神的に尖っていても変に尖らずにいろいろなファッションに対していいねと思える心を大事にしていきたい。自分から枠を狭めるようなことはしたくありません。今後スーツは相手にとっての礼儀やその場に相応しい格好という機能は備えつつ、今まで以上に自己表現のひとつとして数えられていく存在になっていくのだと感じています。僕たちはそのサポートをする仕事を通じながら、来てくれるお客様ひとりひとりと長く付き合っていくための信頼関係を築いていきたいと思います」。

友也 信頼の置ける新顔
友也

ウィズダムツールで起こっていることは新世代によるダンディズムの継承、そして刷新なのだと感じました。トラディショナルなものには男性を惹きつける普遍的な美しさがあります。しかし過去のままで思考を止めては時代に取り残されてしまうこともあるでしょう。常にフラットな価値観で物事を捉え、考えを巡らせながらアップデートをしていく。日常もものづくりも、良いほうへと転がる化学反応には前向きな気持ちが必要不可欠です。

端正なフォルムの新たなストレートチップ「友也」は、三陽山長の基盤木型であるラウンドトゥ【R2010】とスクエアトゥ【R309】を融合したショートノーズスクエアトゥ【R3010】を採用しています。これまで培ってきた経験や得た知恵をもとにフィッティングの良さと曲線美を追求して生み出されたこの国産一文字は、熟練の職人が丹精込めて仕上げた雑味のないシンプルな表情とともに、新しい5アイレットのオーセンティックとして足元の印象を引き締めてくれることでしょう。

友也 / TOMOYA

ストレートチップ

¥91,300