粋 since 2001 days and artisans

粋 since 2001 days and artisans

三陽山長と粋

確かにいる、必要としてくれる人のために。
流されず、自分が信じたことを信じる。
一朝一夕ではなかなかうまくいきませんが、
そう繰り返した日々は必ず先につながります。
ようやく、20年が経ちます。
伊達でも気障でも華美でもなく、粋であること。
少しずつですがその在り方がわかってきました。
これからも私たち三陽山長は
そんな粋の持ち主と強くつながっていたい。
交ぜる
茂木 康之

LIVRER代表

茂木 康之

クリーニング店LIVRER(リブレ)代表。店舗と同名のオリジナル洗剤ブランドを立ち上げて販売、洗濯講習会やポップアップなども積極的に行う。またアーティストのライブ衣装クリーニングも請け負っている

好きならば殊更。
クリーニング店の洗剤

「洋服にとっての一番はついた汚れをいかに早くケアするか」。クリーニング店でも、家庭洗濯でも、この本質は変わりません。必要なものを自ら用意して誠実に伝えている茂木さんは、洋服好きな洗濯のプロ。
「クリーニング店が自分で作った洗剤をお客様に持ち帰ってもらい、クリーニング代を安くしたほうがいいと勧めるなんて普通ならしません。でもそれは僕たちが洋服が好きで、いかに長く着るか、いかに大事にケアできるかをコンセプトにしているからなんです。そのために用途に応じた洗剤を開発し、販売してきました。ドライクリーニングの衣類も家庭で洗えるとお伝えしてきた甲斐もあり、今では学生服などを出される方は少なくなってきて、ダウンを家で洗ってきれいになったというお客様の声も頂戴しています。ですがその分家庭での洗濯に手間をかけなければならないことも事実です。やってみるとわかりますがダウンを手洗いするのはすごく大変です。シミだって簡単に落ちたりしません。ボタンを押すだけの従来の洗濯以上の作業を体感してもらうことで、クリーニングへの見方も少しずつ変わっていくはずだと思っています」。
クリーニングと家庭洗いの関係は反対の“対”ではなくペアとしての“対”。洋服を大切にする気持ちを共有し合うことからはじめた茂木さんの行動は、少しずつ渦を大きくして周りを巻き込んでいきます。

環境に機能する洗濯の文化

茂木さんはお客様に衣類は家庭で九割洗えると伝えています。それは前述したお客様のコスト軽減やクリーニング店の価値創造につながっていますが、他にも理由があります。茂木さんの考える、洗濯が担うことについて。
「地元の洋品店さんと、漂白剤を使わずに白いシャツをいかにきれいにするかをテーマにセミナーを開催しました。来ていただいた方以外にも多くの方が白シャツや白Tに対して長く着られるイメージを持っていないと思います。僕自身もくすんでしまったりでどうしても廃棄することが多かったのですが、白いシャツを白いまま着ることはモノを大事にすることであり、モノを大事にする日本人の文化でもあると改めて感じて。そして洗濯もまた文化なので、受け継ぎつつ今後に必要なカルチャー作りをしていければと思います」。
ローカルでの触れ合いを大切にする一方で、茂木さんは世界の動向にも気を配ります。洗濯業界においても環境に対する取り組みは日本より海外のほうが進んでいるそうです。しかし環境も水質も異なる立場を流行として捉えても生活への根付きにまで至りません。茂木さんは自分たちの環境化における機能的な商品を固定観念に縛られることなく発案します。
「サーフィンが好きなので何かできないかと考えてきましたが、最近廃棄するサーフィンのウェットスーツを使った洗濯ネットを開発したんです。ネクタイなどデリケートな衣類は通常手洗いで面倒ですが、その洗濯ネットを使って洗濯機に入れるだけで全然ヨレずに洗えます。特許も取れたのでこれから商品化していく予定です」。

広がり、つながる。ケアへの意識

オープン当初からすれば、有名劇団やアーティストの衣装をクリーニングするようになるとは思ってもいなかったと話す茂木さん。しかし全ては仕事に対する熱量が物語っています。「クオリティが高くなければ、プロ失格」。洗うことへの飽くなき追求心を持ち続け、先を見据えます。
「現在クリーニングの主力は八~九割方ドライ、つまり石油洗いになります。ドライは移染しないメリットがあるので大量生産を背景にするクリーニングにとって効率は良いのですが、汗など水溶性の汚れは落ちにくく、何より石油は枯渇していく地下資源です。僕らは今後も洋服と環境、どちらにも配慮も考えながら水洗いへのシフトを進めていくつもりです。その世界観をさらに伝えていくために東京の三宿エリアに新店舗をオープンしました。手洗いを主とした水洗いコースやオリジナル洗剤の販売に加えて、ワークショップスペースを設けた発信地として運営していくことで、閉鎖的なクリーニング業界への関心をより深めていければと思います。また海外ではすでに取り組まれていますが、移動式の洗濯機を積んだ車を広めたい思いもあります。日本は災害が多い国でもあるので、洗濯という文化を通じてさまざまな面をケアできる存在になっていきたいです」。
茂木さんの洋服を大事にしたい気持ちは、業界全体や社会的な問題とつながっています。胸に矜持を抱き、課題や改善点と向き合う洗濯のプロ。それは私たち三陽山長のよく知る、まさに職人の姿そのものでした。

弥伍郎 デイリーユースな機能性
弥伍郎

身につけるものが汚れていたり着心地や香りに不快感があればその日の気分はすっきりしないでしょう。洗濯は見た目と心の両面に作用しています。また、洋服と洗濯の関係性は自分を支えてくれるパートナーとそのケアと言い表すこともできます。リブレの洗剤がドライや油汚れ、匂い、色落ちなどそれぞれの用途に分かれているのは相手の性格やコンディションに対する気配り。それもまたパートナーとして大切な役目ということでしょう。

シューレースがないため脱ぎ履きがしやすく最も手軽なデザインで知られるローファー。それ故“怠け者”という意味が由来とされてもいますが、この「弥伍郎」の背景に一切の手抜きはありません。職人が一針ずつ手作業で縫い上げたハンドモカステッチは凛とした表情を引き締め、低めに設計された甲と小ぶりなヒールカップで足元をしっかりと包みます。それでいて気負うことのない愉しみが、経年変化とともに日常で機能していきます。

弥伍郎 / YAGORO

ローファー

¥94,600