着るほどに価値を増していく服、
トレンチコートとともに。
ファッションエディター・スタイリスト
大草直子
NAOKO OHKUSA
テキスト 山下英介
今やファッションやライフスタイルのみならず、その人生哲学にまで注目が集まる、スタイリスト&ファッションエディターの大草直子さん。大人の女性たちが彼女に憧れる続ける理由が、そのトレンチコートスタイルには凝縮している。
- さすが大草さん!初めて袖を通されたとは思えない似合いっぷりでした。
- いや、SANYOCOATさんの『100年コート 極KIWAMI』は、うちのメディアの撮影でも紹介させていただいていますから、よく知っています。
- いきなりモデル名が出てくるとは、かなり通ですね(笑)。やはりトレンチコート自体はずっとお好きなんですか?
- 10数年前に、トレンチコートを40〜50着くらい集めたファッション誌の特集を担当したことをきっかけに、自分でも着るようになりました。フィジカル面でもメンタル面でも、自分が大人になってきたタイミングと重なったのか、それ以来大好きなコートですね。
- 大草さんの中で、トレンチコートのアイコンみたいな女性はいたんですか?
- 私にとってのトレンチって、やっぱり凛とした大人の女性が着る服ですよね。映画でいえば『シェルブールの雨傘』(1964年)のカトリーヌ・ドヌーヴよりも、『クレイマー、クレイマー』(1979年)のメリル・ストリープに魅力を感じてしまう。それって実は、私の母が1970年代に着ていたトレンチコートのイメージそのものなんです。トレンチコートを着て保護者会に出席したり、デパートの食堂へ連れて行ってくれた母の姿と、どこかリンクしているのかもしれません。
- トレンチコートの格好よさって、時代を超越していますよね。
- 着るほどに価値を増していく洋服って、私はレザーとトレンチコートだけだと思っているんです。ある意味新品状態が一番価値が低くて、着る人の歴史や経験、観てきた景色とレイヤーすることで、徐々に価値を増していく。だからこそ、時代に流されない上質なものを選ばなくちゃダメなんです。そういう点では、トレンチコート本来の歴史的なディテールを全て備えた『100年コート 極KIWAMI』は、まさにタイプな一着です(笑)。
- ありがとうございます。私たちがつくるクラシックなトレンチコートを、モダンに着こなす大草さんのテクニックにも感服しました。新品を着られているのに、なぜか着慣れた雰囲気が漂っています。
- トレンチコートがまだ新しいうちは、コートに着られちゃいがちですよね。特に『100年コート 極KIWAMI』は生地がとても上質で、ハリもすごいし。だから今日は、あえてベルトを抜いて、代わりにシルクジャージーのスカーフをベルトループに通したり、色の褪せたデニムを合わせて、コートを自分に引き寄せています。これが10年も着ていれば、生地やベルトもくったりして光沢も抑えられるから、また着こなしも変わるんでしょうね。
- 袖をグッとまくるアレンジも、すごく効いていました!
- もともと男性のミリタリーアイテムだったトレンチコートを女性が着るとき、どうしたら柔らかくカジュアルな雰囲気に落とし込めるかなって考えると、こういう工夫が生まれてくるんですよね。
- 大草さんのトレンチスタイルは女性のみならず、男性が着こなす上での参考にもなりそうですね。
- 死ぬほどページをつくってきましたから(笑)。もちろん新品でまっさらなときも素敵だけど、年齢や経験を重ねたからこそ生まれてくる魅力も楽しみたい。それは人生もトレンチコートも同じですよね。
大草直子/ファッションエディター・スタイリスト
東京都出身。大学卒業後、現ハースト婦人画報社へ入社。雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わった後に独立。現在は、ファッション誌、新聞、カタログを中心にエディトリアルやスタイリングをこなすかたわら、 トークイベントの出演や執筆業にも精力的に取り組む。近著には『飽きる勇気』(講談社)がある。2019年には自身のメディア『AMARC(アマーク)』をスタート。「〝私らしい〟をもっと楽しく、もっと楽にするために」をテーマに、ファッション、ビューティ、生き方のレシピを毎日読者に届けている。2021年には、紙の雑誌『AMARC magazine』を刊行。