【Paul Stuart Culture CLUB ⑨ Japanese New Year Dishes“Osechi”】 美人料理家ユニット・茂村姉妹が描き出す2023年新春――伝統とともにある「かしこまらないお正月料理」


昨年1月は、銀座『マルディグラ』和知徹シェフが表現する“ピエスモンテ”( https://store.sanyo-shokai.co.jp/blogs/feature/lps-special106)
で幕を開けましたが、2023年は、季節の食材を使った料理を月替わりで紹介する料理教室「茂村料理教室」を都内のアトリエで主宰する茂村美由樹さんと茂村千春さん姉妹に「かしこまらないお正月料理」をオーダー。新しい年を祝ってお正月に食べる、日本人には馴染み深い料理の“今”をご紹介します。

 

Photo. Shimpei Suzuki / Text. Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

 

重箱という小宇宙から解放されて、生き生きと輝く、縁起の良い料理たち

茂村姉妹が用意したおせち料理は、
黒豆 一年を健康で丈夫に過ごせますように
数の子 子孫繁栄
鮭の黄金焼き 黄金色に輝く財宝にたとえて、財に恵まれる豊かな一年に
たたき牛蒡(ごぼう) ごぼうをたたいて開くことから「開運」に
くわい 「芽が出ますように」と出世を願う気持ち
菊花蕪(かぶら) 長寿を願う
田作り 豊作の願い

 

ごまめ(田作り)は顔の向きを揃えてバットや保存容器に。お重の補充やゲストが来たときにすぐに盛り付けができるように

 

上の写真の片口イワシの顔の向きが揃っているのは、「家族が同じ方向を向いて頑張れますように」という意味があるそうです。おせち料理に込められている願いは知るほどにありがたいものです。

 

黒豆は松葉に通して。クリスマスを過ぎるとフラワーショップに並ぶ松。黒豆をこんな風にして盛り付けするとお正月らしくなります

 


家族みんなの一年の健康と豊作を願って食べるおせち料理

茂村姉妹が手がけた「かしこまらないお正月料理」というテーマの一番のポイントは、おせち料理を重箱に詰めずに、お皿に盛り付けること。縁起の良い料理が重箱にきれいに収められて、箱庭のごとく絵画的なビジュアルを楽しむのもお正月の粋ですが、なかなか大人数が集まれない今、日本の伝統に則った料理を皿に盛り付けるだけで、新しい風が吹いたように感じます。

 

左が妹の千春さん、右が姉の美由樹さん

 

姉の美由樹さんは、「料理をアレンジすることは簡単ですが、私たち二人は伝統を大事にしています。料理教室には、私たちの母世代から若い人まで年齢を問わず来ますが、私たちが教えるのは、“おうちでもワンランクアップ”できる料理。1月には、節分の恵方巻きを作るクラスなどもあります」と言います。

 

お重に詰めるのが難しいときは大皿に。四方紅を下にその上に裏白をあしらいます。裏白はひとつで一対。切り離さないよう、表裏を間違えないように

 

ユネスコ無形文化遺産に登録されている「和食」ですが、おせち料理に限らず、家庭にどんどん中食(惣菜や弁当などを買って帰って家で食べること)が入り込み、いざ作ろうと思ったときに調理法がまったく分からない、特に年に一度のおせち料理など想像もつかないという人も多いそう。「たとえば、教室でとてもシンプルな“蛸とキュウリの酢の物”などを作ると、非常に喜ばれます」と妹の千春さん。

 

皿に盛り付けるときは、ボリュームのあるものを奥に。手前に向かって低くなるイメージで盛り付けていくとバランス良くしっくり整います

 

 

私たち姉妹が料理を始めるきっかけがおせち料理でした

茂村姉妹は、人がたくさん集まる家に生まれ育ち、大人になって自宅でおせちを作ったとき、「みんなが集まって食べるのがうれしくて、たとえれば、マラソンを走った後の充実感と達成感に似て、こんなに楽しいことはない! と思ったのが料理の勉強を始めるきっかけでした」と言います。

料理教室を始めたときも、おせちに思い入れがあったので、おせち作りからスタートしたそうです。

 

 

「教室でおせち料理を作って、“おせちを初めて美味しいと感じました”と喜んでくれた女性が最近お母さんになられて、今度はお子さんのためにおせちを作って、その味がお子さんに伝承されていくというのも料理の素晴らしい一面です」と美由樹さん。

「おせちはお正月に家族全員が集まって、よし、今年一年も頑張るぞ! と気持ちを新たにする大切な習わし。お料理はトラディショナルに、盛り付けは思い思いに楽しんで味わうことが大切です」と千春さん。

 

古い帯をテーブルランナーに。お正月のテーブルのお花は低めに活けられるのがおすすめ。 乾杯するときやお酌をするときに、
お花が邪魔にならないように。お手持ちの低めのグラスにシンプルなアレンジですが松葉を少し入れるとお正月らしくなります

 

お二人に2023年の夢を聞くと、「アトリエで洋菓子を作って販売したい」と美由樹さん。そして二人の夢は本を出すこと。「それが夢であり、目標です」と語ってくれました。

 

茂村料理教室
https://shigemuracooking.com/

 

“難を転ずる”南天(ナンテン)を箸置きにして、お正月のおせちを食べるための「祝い箸」までしっかりコーディネートされた茂村姉妹の「かしこまらないお正月料理」を見たときに感じたのは、故十八代目中村勘三郎の有名な「型があるから型破りができる。型が無ければそれは単なる形無し」という言葉。

私たちは新しいことに価値を見いだし、新しいことを楽しみますが、実は古くから脈々と伝承されてきた「型」を知ることが最も大事です。便利な世の中に甘えず、日本人としての生き方をきちんと見据えて、次世代に受け継いでいくものは料理のほかにもたくさんあるはずです。

 

 

ポール・スチュアート青山本店「VIOLIN RECITAL」を開催中

毎週日曜日にポール・スチュアート青山本店でヴァイオリン リサイタルを開催しています。プロのヴァイオリニストをお招きして、14:00~14:30と15:00~15:30の2回の演奏を予定しています。
1月8日(日)はヴァイオリニストの山川 絢子(やまかわ あやこ)さん、1月15日(日)と1月29日(日)はヴァイオリニストの熊谷 真紀(くまがい まき)さん、1月22日(土)はヴァイオリニストの橋本 彩子(はしもと あやこ)が登場します。ぜひご来店ください。

ポール・スチュアート 青山本店
TEL 03-6384-5763
東京都港区北青山二丁目14-4 ジ アーガイル アオヤマ 1F
営業時間 11:00~20:00
併設するバー「THE COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」
18:00~24:00 ※同一テーブルでの会食は4人以内
※酒類の提供を再開しております
これまで同様、感染防止対策を徹底し営業いたします。
ご不明な点がございましたら、ショップまでお問合せください。