どんなモードにも対応してくれる
素に近いコート

大宮エリー ELLIE OMIYA(画家)
テキスト:山下英介

大宮エリー ELLIE OMIYA

――大宮さんは、こういったクラシックなコートはお持ちなんですか?

好きなんですけど、今までレザーっぽい生地や刺繍が入っているようなものばかり着てきたから、こういったクラシックなコートは持っていなかったですね。でも、すごく着やすいですよ。シンプルだけど、襟や肩の線が柔らかかったり、背面のプリーツが深かったりして、とても女性らしい。この佇まいよく見える感じは、やっぱりイギリスっぽいなあ、と思いました。昔、ロンドンで、老舗ブランドのダウンコートを色違いで2着も買って、着倒したことを思い出しました。すごくシンプルだったから、ずっと着られた。

――私たちがこだわっているところを見抜いていただき、ありがとうございます! もちろん私たちのデザインのベースは英国にあるのですが、SANYO COATはすべてMADE IN JAPAN。青森の七戸十和田駅のすぐ近くにある自社工場でつくられているんですよ。「100年オーナープラン」というサービスをご用意しておりまして、3年ごとに定期診断やメンテナンスをさせてもらいつつ、末長くお付き合いいただければと思っています。

おお!青森!青森といえば、2016年に、十和田市現代美術館で5ヶ月も個展をさせていただきました。ご縁を感じますね。七戸十和田駅、ふるさとみたいなもんです! 「sincerely yours」というお手紙みたいなきもちで個展をさせていただき、街中でもパブリックアートをして現在もそれが残っているんです。

――大宮さんと青森でつながれるとは、思ってもいませんでした(笑)。そういえば大宮さんは、以前別のインタビューで「洋服はスイッチのようなもの」と仰っていましたが、ファッション観について伺えますか?

え、そうでしたっけ? ぜんぜん覚えてない(笑)。でも確かに、いつもはなんでもいいやって感じなんですが、個展だったり、誰かにお呼ばれした会だったり、スイッチ入れるために洋服は考えますね。誰かに会う時、その人、時、場所へのマナーみたいなところはありますね。また演出の意味もあります。現在、スパイラルで海をテーマにした、「海は楽しい気持ちをくれる」展(※現在は終了)や、インターセクトbyレクサスにて、カラフルな蝶々のオブジェに乗れる「Dreamy Island」展(※現在は終了)をしていますが、そういう場合は、カラフルな、楽しい気持ちになるような服を着て在廊します。また、過去にやった、タカイシイギャラリーでの「Sacred Space」という神聖な場所を被写体にした写真展には、黒い服ばかり着ていきました。緊張感を保ちたかったので。

――大宮さんの場合、驚くほど幅広いジャンルのお仕事をされているから、切り替えが大変そうですね(笑)。

今年のベネチア映画祭のVR部門で、私の作品「周波数」が、ノミネートされました。 レッドカーペットとかそういう華やかな場所は、やはり、切り替えないといけないですね。建築家の妹島和世さんに、洋服のアドバイスをいただきました。なるほどなぁと。確かにいつものラフな格好じゃダメだなと。ワンピースドレスを仕立てることになり、妹島さんから型紙も頂き仕立てた、今までと違う、華やかモードです。

――〝切り替え〟という意味でいうと、今日はこのコートをどんなモードで着こなしていただけたんですか?

このコートはフォーマルにもカジュアルにも着られるし、特別なものというよりは、シンプルで自分の素に近い存在なんですよね。いつもあれ着てるねって言われるような。今回はいろんな職業の方が登場されると伺ったので、あえてカラフルなインナーで遊んでみました。コートがしっかりしてるから、何着たっていいもんね(笑)。

PROFILE

大宮エリー/大阪出身。東京大学薬学部卒業後、CMディレクター、作家、映画監督、演出家として活躍。2012年モンブラン国際文化賞受賞の福武總一郎氏へのお祝いとして、急遽ライブペインティングを依頼されたことから絵画制作のキャリアをスタート。2015年に初の個展「emotional journey」(ヒルサイドテラス・小山登美夫ギャラリー)を成功させると、2016年には美術館で始めての個展「シンシアリー・ユアーズ—親愛なるあなたの大宮エリーより」を十和田市現代美術館で開催。2019年には、香港で海外ギャラリーにでの初個展「A Wonderful Forest」を手掛けたほか、アートバーゼルにも参加。2022年には、ロンドンのGalerie Boulakia(ギャラリー・ブラキア)で個展「LOUNGING AROUND」を開催。同年には瀬戸内国際芸術祭にも出展作家として参加し、犬島にて常設の立体作品『フラワーフェアリーダンサーズ』『光と内省のフラワーベンチ』を発表した。

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