【Paul Stuart Culture CLUB ⑭ Welcome the new year with“BONSAI”】 人間の手技と知恵、自然、樹木の命と息吹が常に対話しながら作り出される盆栽ー 小島鉄平が語る「文化を継承し、進化するBONSAI」


 

 

みなさまには良き新春を迎えられたこと心よりお喜び申し上げます。
昨年1月は、料理教室「茂村料理教室」を主宰する茂村美由樹さんと茂村千春さん姉妹の「かしこまらないお正月料理」(https://store.sanyo-shokai.co.jp/blogs/feature/lps-special142)をご紹介しましたが、 2024年の“お正月記事”は「盆栽」にフォーカス。盆栽職人で、伝統を守りつつ既成概念を超えた、これまでにない盆栽の世界を伝える株式会社松葉屋/「TRADMAN’S BONSAI®︎」CEO兼プロデューサーの小島鉄平さんにご登場いただきます。

 

Photo. Shimpei Suzuki / Text. Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

 

 

「盆栽は、鉢の中で何百年も生きていく究極のヴィンテージです」

 

小島さんに会いに出かけたのは、築40年以上の古民家を約3年かけてフルリノベーションし、一般公開はしていないという「TRADMAN’S GALLERY」。 「TRADMAN’S BONSAI®︎」の秘密基地のような、アトリエのようなモダンな建物と隣接する敷地には、約500鉢の盆栽が整然と並び、他の場所にあるものも全部合わせると3000鉢ほどを管理しているそうです。

お正月というと、歳神様が各家を回るための目印となる門松やしめ縄などの松の飾りは定番ですが、「年末年始に正月飾りとしてエントランスに盆栽を飾りたい」というホテルやブティックなどの商業施設が年々増えているそう。TRADMAN’S BONSAI®︎はそういうリクエストにも応えています。

そういえば、入学式や卒業式などの演壇(ステージ)に、日の丸とともに立派な盆栽が飾られていたことを思い出しました。

 

 

 

 

小島鉄平さんは、1981年、千葉県生まれの42歳。アパレル業界でバイヤーとして活躍されていましたが、「伝統やトラディショナルなものには革新が必要」だと、日本の伝統文化である「盆栽」を世界に伝えるというミッションのもと、2015年に「TRADMAN’S BONSAI®︎」を結成(翌年に株式会社松葉屋を設立)。 富裕層のシニアが愛でる趣味としての印象が強い盆栽を、日本の若者や世界に向けてカルチャーとして発信し続けています。

 

 

 

 

 

 

また、小島さんは、「僕は“盆栽を見せる場所”にこだわります」と、商業施設やオフィスへの盆栽のリースをはじめ、イベントやポップアップ、アパレルショップなどでの盆栽ディスプレイ、国内外の名だたる企業とのコラボレーションまで幅広く手がけています。

 

 

【小島鉄平さんに教わる、盆栽の見方】
「盆栽は一つの空間の中での引き算の美学、人生に似ています」

 

「器=盆」の中に、自然を映し出す「植物=栽」を生かすのが盆栽。小島さんは、お気に入りの樹齢300年ほど、数千万円の値段が付く盆栽を例に、盆栽の見方を教えてくれました。

この盆栽は、みなさんが思い描く盆栽の代表格で、「真柏(しんぱく)」と呼びます。真柏は生命力が強く、枝や幹が様々な造形美を見せます。
まず、幹の太さを見てください。太い幹の荒れ具合を見て、たとえば、険しい、荒々しい、猛々しいなどの言葉が思い浮かぶと思いますが、盆栽は、時代を超えてきた印象を強く与えるものが価値があります。

 

 

 

 

この盆栽は、樹形の一つで「模様木」といい、幹が模様を描くように曲がっている樹を指します。生きている「水吸い」と呼ばれる部分が形成する緑と、白く枯れた幹の「舎利(シャリ)」、シャリに這うように生きている枝の「神(ジン)」のコントラストが、一つの鉢の中に表現され、まるで人間の生と死のコントラストのようです。

この鉢は、幹の模様が右に流れている「左勝手」といい、幹模様の外側に枝を配置していけば、幹の白い肌と緑色の葉との美しいコントラストを生み出し、樹形維持がしやすいのも特徴です。

約300年間、毎日水をあげ、光合成し、風通しを考え、毎日手を掛けることで、今のこの姿があります。一週間水をあげないでこのままにしていると枯れる(死んでしまう)。毎日の管理はとても尊いものです。

 

 

 

 

 

「自分が一番気に入っている盆栽は、501です」

 

「小島さんが一番好きな盆栽を教えてください」と尋ねると、即答で返ってきたのが、この「501」です。
自分は、父親から10歳の時にプレゼントされたリーバイス®501®にハマって、そこからアメリカの歴史や背景なども含めてヴィンテージの勉強をしました。それが自分の原点になっていますが、この盆栽は、僕が初めてまとまったお金で買った盆栽で、勝手に呼んでいたら「501」が通称になりました。

 

 

 

 

葉が五枚で一対となっている「五葉松(ごようまつ)」の盆栽で、特別な木ではないですが、基本がたくさん詰まっている木です。樹齢は80年ぐらいですね。手に入れたのは6~7年前で、これだけは自分でしっかり手入れをしています。

 

 

「若い人に盆栽に興味を持ってもらって、跡取り問題を打破したい」

 

自分がやっていることは、「盆栽を若い人に見てもらい、日本の伝統を知ってもらい、日本ってカッコイイことをTRADMAN’S BONSAI®︎で発信したい」という小島さん。

ポップアップや展示会などで盆栽を見たのをきっかけに、あるいはTRADMAN’S BONSAI®︎のSNSのDMから「職人になりたい」と履歴書を送ってくる若者も多いそうで、「その一歩目のアクションを起こせることを尊重していて、必ず会うようにしています」と言います。

小島さんは、「盆栽作家になりたい」という若者を、小島さんが認めている先生(職人)の元に送り出し、5年間の修業と1年間のお礼奉公&付き人を経験させますが、5~6年は無給修業期間が通例の盆栽の世界で、この世界の後継者を育てるために、給料を出しているそうです。

 

 

 

 

「自分はTRADMAN’S BONSAI®︎の初代なので、流派を気にすることなくいろんな手技や、見せ方を追求していくことができます。いろんな流派で学んできた職人がここに集まることで、新しい流派を作ることができる、新しい動きができるし、次の時代を拓くことができます。文化の継承はもちろん、進化するためには、賛否両論あって当然だと思うので、自分たちは新しいことを突き詰めていきます」

 

 

 

 

2023年12月2日に、青山・骨董通りにオープンした「松葉屋茶寮・方舟GALLERY」のキービジュアルとなる盆栽を担当し、今年4月には、丸の内・仲通りに「TRADMAN' STORE TOKYO」のオープンを予定しています。

「TRADMAN' STORE TOKYOは、白を基調としたインテリアで、“たたむ・しまう”をコンセプトにした店になります。盆栽の販売・ギャラリーとしてはもちろん、素晴らしい技術を持った日本の伝統文化・芸術との交流の場・発信の場にしたいと思うので、ぜひご注目ください」と、小島さんの視線は常に先を見据えています。

 

 

 

 

 

ポール・スチュアート 青山本店
TEL 03-6384-5763
東京都港区北青山二丁目14-4 ジ アーガイル アオヤマ 1F
営業時間 11:00~20:00
併設するバー「THE COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」
18:00~24:00 ※同一テーブルでの会食は4人以内
※酒類の提供を再開しております
これまで同様、感染防止対策を徹底し営業いたします。
ご不明な点がございましたら、ショップまでお問合せください。