FACTORYサンヨーソーイング 青森ファクトリー

“コート一筋”で育んだ技術と感性、
ものづくりへの探求。


安定したフロント部分、左右対称に広がるラペル、細かく正確なステッチなど、「100年コート」が人々を魅了する理由はたくさんある。このハイクオリティなコートを生み出しているのがサンヨーソーイング 青森ファクトリーだ。1969年、三陽商会の自社工場として創業して以来、コートを専門に生産。現在はサンヨーコートの約7〜8割の製品を手がけている。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

コートに特化した工場というのは世界的にも珍しい。寸法が大きく、パーツも多いコートは“もっとも複雑な衣料品”と言われていて、縫製や組み立てに時間がかかり、人の手をたくさん必要とするからだ。だが、「世界に通用するコートを作る」と掲げた三陽商会が積極的に生産・販売を続けてきたことで、サンヨーソーイング 青森ファクトリーでは国内随一のコート作りの技術を確立することにつながった。技術を支えるのは平均勤続年数20年の職人たち。中には、工場設立時から在籍するスタッフもいる。一枚のコートが出来上がるまで300から400もあるという工程は、熟練の職人たちが同じ工程を担当している。そうすることで生産効率を上げ、美しい仕上がりを実現できる。つまり、100年コートには連綿と受け継がれた職人たちの卓越した技術が凝縮されているのだ。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

工場を見守る青木豪工場長は「質の高いコート作りに欠かせないのは、現場で迷わずに縫製するための工業パターン技術、熟練工たちによる高度な縫製技術、特殊な仕上げ技術」という。パターン技術とはCADによる正確な型紙の作成・加工のこと。無駄な生地が出ないよう幅や長さを考えるだけでなく、生地の収縮率や縫い縮みを計算したり、前身頃と見返しを縫い合わせる時に発生するズレを防ぐため、0.5mm控えた分量を盛り込むなど、緻密なコートの設計図が必要となる。この型紙によって現場の作業時間がぐっと短縮できる。「ここで作っているのは一点ものの芸術品ではなく、工芸品です。たくさんの製品を同じクオリティで作り続けることが求められる。だから、現場で時間をかけて丁寧に縫うのではなく、迷うことなく正確に縫うことが重要なんです」。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

このパターンを元にして専用の裁断機を使って生地を裁断。切り取られたパーツのうち、必要なものには裏地に芯を接着させ、補強する。同じ規模の工場であれば1、2台の接着機があれば十分だそうだが、ここでは4台を要する。それだけ多くのパーツに補強を行う。パーツが揃ったら縫製ラインへ。全社員のうち6割のスタッフが縫製を担当し、前身頃、背身頃、袖、襟を縫い、それらをつなぎあわせてコートを組み立てる。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

職人たちはミシンを体の一部のように自在に操り、流れるように縫っていく。だが、単純作業だけではない。「引き縫い」という特殊な技術も必要とする。生地は縫い始めた時点で糸に引っぱられて縮んでしまうから、その縫い縮みを見込んで、絶妙なテンションで生地を引っぱりながらミシンをかける。どれくらいのテンションをかけるかは言葉で説明ができない。熟練した職人たちの感覚によるものだからだ。そうやって長年培った高い縫製技術が美しいステッチワークに反映されている。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

その後、コートのシルエットを作る仕上げの作業。日本で唯一のラグラン袖専用のプレス機を含めた三種類のプレス機をコートの形状にあわせて使い分け、一枚ずつ立体的に仕上げていく。ハンドアイロンを使う工程ではコートの表面にテカリがでないよう、裏側からアイロンをかける「裏掛けプレス」を行う。熱、蒸気、温度を調整しながら裏からアイロンを当て、生地の風合いを損なわずに仕上げる。コートの顔となる襟のアイロンがけは最初と最後、二度入念に行い、裏と表の表情を整える。こうやって一枚のコートが出来上がるまであちこちで手間がかかるが、あえてする。世界水準のコートを作るためだ。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

仕上げアイロンの工程においては、「空中プレス」とよばれる技もハイライトのひとつ。文字どおりハンガーにかけたコートを頭上から吊り下げ、そのまま身頃や袖などにアイロンをかけていく。こうすることでいっそう立体的なドレープが生まれ、空気をまとうような美しいたたずまいのコートに仕立て上がるのだ。プロの職人が使うアイロンは、見かけよりもかなり重い。それを空中で動かし続けるのはなかなかの重労働だ。しかし、プレス職人の脳裏に妥協の二文字がよぎることは決してない。長年の修練によって研ぎ澄まされた技で、一切の無駄なくアイロンワークを行なっていく。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

コート作りは工場のスタッフだけでではなく、近隣に住む内職の職人たちにも支えられている。青森で操業を開始して以来、ボタン付けや一部のパーツ作りは外注の職人たちが担当。40年以上の付き合いのある人も少なくない。こうした独自の生産ネットワークを築いているのがサンヨーソーイング 青森ファクトリーの特徴でもある。いつしか工場を中心とするこのエリア一帯は世界にも珍しい「コート村」と呼ばれるようになった。地元に密着したものづくりが日本随一のコート産地を形成し、ほかでは真似のできないハイクオリティなコートを生み出している。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

“コート一筋”で育んだ技術と感性、ものづくりへの探求。

サンヨーソーイング青森

サンヨーソーイング 青森ファクトリー

東北新幹線「七戸十和田駅」より徒歩30秒。

所在地
青森県上北郡七戸町字荒熊内67-18
TEL
0176-62-2011
URL

http://sanyo-factories.jp/sewing.html