ニューヨーク通信 Vol.4 鴨志田康人が語って巡る「NYCバーチャルトリップ」~ダウンタウン編~


 

しばらく行けていないけど、大好きな街の、大好きなあの店は今どうなっているのだろう?――ポール・スチュアートのメンズディレクター鴨志田康人が、「自分にとってのNYらしい店やエリア」をピックアップし、ニューヨーク通信で、NYの今を伝えるNY在住の鈴木夫妻が現状をリポート。鴨志田康人とご一緒に「NYCバーチャルトリップ」をお楽しみください!

 

Photo. & Text. Fumi Suzuki / Satoshi Suzuki, Makoto Kajii
Edit. FUTURE INN

 

『PAULA RUBENSTEIN』195 Chrystie St
古くならない、輝きを常に持っているモノとの出合い

 

――『PAULA RUBENSTEIN』はNYのダウンタウンにあるヴィンテージショップですね。

 

鴨志田康人(以下、鴨志田) NYには良いヴィンテージショップがたくさんありますが、行くたびに「NYならではのヴィンテージショップだなぁ」と感心するお店が『PAULA RUBENSTEIN』です。日本では出合えないヴィンテージショップで、パリやロンドン、NYの質の良いヴィンテージショップは別格だなと思いますね。

 

――どういうところが優れているんですか。

 

鴨志田 分かりやすく言うなら「一つ筋が通った審美眼」がありますね。店の中は写真のようにネイティブなものから民芸品、絵画、小物まで雑多ですが、たとえば積まれているテキスタイルとそのカラーリングにはセンスと雰囲気をとても感じます。モノ自体は経年変化して色褪せていきますが、古くならない、輝きを常に持っているモノと出合えて、大好きな店ですよ。

 

――ここで何を買ったか覚えていますか。

 

鴨志田 大きなモノは買えませんが、小さなラグ、ネクタイ2本、アクセサリーなどを買いました。自分の仕事にとって一番刺激になるのは優れたヴィンテージショップで、「この人がこれを選ぶのがカッコイイ」「このお店にあるからこそ良く見える」という店は大好きで、勉強にもなります。『PAULA RUBENSTEIN』にはいつも何か良いモノが必ずあるので、興味がある人にはぜひオススメしたいお店です。

 

 

 

私たちの久しぶりの訪問を、Paulaは以前と変わらぬ柔和な笑顔で迎えてくれた。

 

現在店を構えるChrystie Stには2019年の夏から。その前はNOHOのBond Stに7年、さらにその前はSOHOのPrince Stに20年というキャリアの長さを誇る。昨年はコロナ禍のため、3月から夏頃まで店は閉めていた。インスタグラムのアカウントはあるものの積極的に利用しておらず、オンラインストアもなく、2020年は厳しい状況であった。

 

今年に入って、街に徐々に人が戻って来たこともあり、店も春頃からは来客が増えた。ただしPaulaの顧客の多くがヨーロッパ、オーストラリア、日本などの海外、またはカリフォルニアなどの州外からであるため、客足が完全に戻るにはもう少し時間がかかると考えている。

 

ニューヨークのファッション業界の顧客もぐっと減っており、多くの顧客がオンライン上で十分にネタを探せる状況にあることが原因と考えている。

 

現在、家具などのホームファニシング関連の大物を探している人が多いと感じるが、Paulaの店では大物の扱いが少なく、新たに州外への買い付けなどに頻繁に行けない状況であることもあり痛手となっている。

 

長年店頭でお客と接してきたPaulaにとって、少しでも多くの顧客が店に戻って来てくれることが今の願いである。私が取材中には、偶然にもカリフォルニアからの顧客が1年半ぶりに店を訪れ、話に花が咲いていた。

 

Paula Rubenstein Ltd
http://www.paularubenstein.com

 

 

『Cafe Mogador』101 St. Marks Place
「この雰囲気で食べるから美味しい」大好きなレストラン

 

――『Cafe Mogador』はどういうレストランですか。

 

鴨志田 ロウワーイーストにいて、「何か食べたいな」と思ったときのファーストチョイスの店がモガドールです。初めて行ったのは10年ほど前ですが、いつも混んでいて予約しないと入れません。何を食べても美味しくて、お酒を飲みながらいろんなものをつまむ、居酒屋感覚(笑)で楽しめます。

 

――鴨志田さんはNYへ行くと何を食べているんですか。

 

鴨志田 ハンバーガーは必ず食べますね。ステーキも一度は食べるかな。『Russ & Daughters cafe』というレストランにはスモークサーモン目当てで行って、スープも美味しいですよ。ミッドセンチュリーの空間も気に入っています。

 

――お気に入りの店は空間もカッコイイわけですね。

 

鴨志田 皆さんもそうだと思いますが、「この雰囲気で食べるから美味しい」ってありますよね。ロンドン、パリ、フィレンツェ、NYなどには空間がカッコイイ店が多くて、やはり歴史の違いでしょうか。東京にも「街に溶け込んで、街の顔になって、人が集える良い雰囲気の店」がもっとできて欲しいですね。

 

 

オープン当時からダウンタウンの文化の中心であり、イーストビレッジの地元の人々に愛され続けている。昨年のコロナ禍以降、オンラインのデリバリーサービスを充実させたり、屋外のスペースを広げるなどして対応してきた。

 

現在、店内での飲食はワクチン接種完了者のみ(ワクチン接種証明書と写真付き身分証明書の提示が必須)。春頃から地元客以外の観光客などの来店も増えている。

 

 

 

2019年にオープンした「ブラントファンデーション」は、歴史あるタウンハウスが立ち並ぶイーストビレッジの住宅街にある。

 

1920年代にCon Edisonの変電所として建てられたレンガ造りの建物は、その後アーティストWalter De Mariaの住居兼スタジオとして1980年代中頃から2013年まで使われていた。

 

アーティストの死後、建物は建築家Richard Gluckmanの手によってリノベーションされた。建物の歴史的特徴の多くは、ランドマーク保存委員会の承認を得て復元されている。

 

ブラントファンデーションは、Interviewマガジンなどの発行人、映画プロデューサー、アートコレクターであるPeter Brantが起こした財団である。ちなみに妻は元祖スーパーモデルStephanie Seymour。

 

2019年3月のオープン時に開催されたバスキア展では、前澤友作氏が2017年にアメリカ人アーティストとして史上最高額で落札した作品も出展された。

 

現在は、ジュリアン・シュナーベルの展示「Julian Schnabel / Self-Portrait of Others」が、12月30日(木)まで開催されている(入場料は無料。ワクチン接種完了者のみ)。

 

The Brant Foundation Art Study Center
https://www.brantfoundation.org/exhibitions/

 

 

ロウワーイーストサイドの車道に、屋外の飲食席のための建築物が立ち並ぶ。ストリータリー/ Streatery(Street + Eateryの造語)と呼ばれている。

 

自転車を移動手段として利用する人が増え、自転車専用のバイクレーンもかなり増えた。CITI Bankがスポンサーのレンタル自転車のバイクシェアプログラム、シティバイクCiti bikeのバイクステーションが街の至る所に設置されている。

 

コロナ禍以降増えた空き店舗のシャッターや外壁に、グラフィティ。グラフィティは非合法であるため、ビルの外壁に描かれたグラフィティはペンキで塗り潰されていく。

 

 

 

『Paul Stuart』350 Madison Ave at E 45th St
僕が映画やドラマで見て憧れたNYミッドタウン

 

――ダウンタウンからミッドタウンまで来ました。

 

鴨志田 ポール・スチュアート本店のあの構え、あの重厚感は街に貴重ですね。ミッドタウンの45th Stにあって、「Madison Ave」という表示を見るだけで気分が上がります。自分の仕事も本店に行くことでモチベーションが上がるし、僕が映画やドラマで見て憧れたNYはミッドタウンです。

 

――今、NYに行けたら、まず何をしたいですか。

 

鴨志田 高層ビル群を見上げながら歩きたいですね。NYの歴史を背負ったミッドタウンの摩天楼の佇まいが大好きです。散歩がてらチェルシーマーケットなどの蚤の市を覗くのもいいですね。