ビジネススタイルから紳士の休日スタイルまで、足元で装いのアップデートを提供する三陽山長。幅広い年齢層に支持されているジャパンブランドとあって、そのバリエーションは豊富。同ブランドの魅力の一つです。本連載ではそんな数あるラインナップから、革靴ビギナーが自身に最もフィットする一足を探しているわけですが、ここで筆者には一つの疑問が……。
「“極”や“匠”シリーズって、いったいいくつあって、つまりなんだ?」ということ。今さら? なんて声が聞こえてきそうですが、そう思っていた読者も少なくないはず!(笑)
というわけで今回は、番外編として現在展開しているコレクションを代表モデルとともにおさらい。三陽山長 日本橋髙島屋S.C.店の上村店長に各シリーズの解説をしてもらいながら“こんな人にオススメ!”も伺ってきました。
三陽山長 日本橋髙島屋S.C.店 店長
上村 哲平
高身長のすらっとしたスタイルに爽やかな笑顔が特徴の店長。ファッション好きがこうじて三陽山長に入社し、その後革靴の沼にハマってその暦なんと16年。休日問わずに革靴を履き続けるほどにどっぷり浸かり、今では革靴を履かない日の方が違和感を感じるとか。
「極」シリーズ「極 友二郎」
「極」シリーズ「極 友二郎」
今の三陽山長における、文句なしの最高級ラインです。「匠」と同様のフレキシブルグッドイヤーウェルト製法を採用していますが、大きな違いは素材です。「匠」同様にスキがないのですが、よりいっそうのエレガンスを追加しています。靴好きからすれば一目瞭然ですが、靴を知らない人でもなぜか惹きつけられる。そんな美しさを持ったコレクションです。
「極 友二郎」は定番であり王道のストレートチップを極めた存在。装飾的な豪華さではなく、素材本来の美しさと匠の技を最大限に引き出したモデルで、言わば引き算の美学をもった一足です。ベーシックなモデルなので着こなしにはよく馴染むんですが、他とは一線を画すリュクスな佇まいを持っています。
三陽山長の最高級コレクション「極」シリーズ。アッパーにはフランスの老舗タンナー・デュプイ社が手掛ける最高品質の「マロカーフ」を採用。“水シボ”といわれる繊細な模様が浮かび、ラグジュアリーな光沢感と独特の表情により唯一無二の存在感を放ちます。アウトソールにはイタリアの名門・ヴォルピ社が手掛ける最高峰の底材「ロッカ」を、ライニングにはデュプイ社製レザーをそれぞれ使用し、高級感とともに屈曲性と耐久性も向上しています。
「匠」シリーズ「匠 勘三郎」
「匠」シリーズ「匠 勘三郎」
ひと言でいえば、“スキのない”ライン。高級靴と謳われるにふさわしい、否定するところがない仕様になっています。通常ラインとの大きな差は、フレキシブルグッドイヤーウェルト製法を採用している点。通常のグッドイヤーウェルト製法に比べ、一格上の快適さを味わうことができます。シームレスヒールやセミヴェベルドウェスト、そして半カラス仕上げと、細部に至るまで匠の技を注ぎ込んだ靴好きからも一目置かれるコレクションです。実際にお試しいただき、その違いを実感してみてください!
「匠 勘三郎」は、三陽山長のマスターピースといえる一足。王道のブラックはもちろん、新色のダークブラウンはよりいっそう足元からこなれ感と大人の余裕を薫らせることができます。
グッドイヤーウェルト製法にある“硬さ”を払拭し、コンフォートな履き心地を実現した三陽山長の独自製法「フレキシブルグッドイヤーウェルト製法」を採用した上級ラインの「匠」シリーズ。今季新たに登場した「匠 勘三郎」は、デュプイ社の高級革“シャトーブリアン”を採用し、職人のハンドメイドによるスキンステッチが最大の魅力。ソフトな履き心地をもったラグジュアリーな一足です。
スタンダードシリーズ「弥伍郎」
わかりやすくいうと、“グッドイヤーライン”です。スタンダードシリーズのモデルは全てグッドイヤーウェルト製法を採用しています。アッパーとアウトソールを直接縫い合わせずリブテープという部材を介するので、アウトソールの交換が複数回可能、適時メンテナンスを行えば長年の愛用できる設計です。いい靴を長く履き続けることができる、三陽山長を象徴するコレクションといえます。そのため、革靴デビューの方からデイリーに履く方まで幅広い世代の方々にオススメです。
一般的に、ローファーはサイジングが難しいとされていますが、この「弥伍郎」はフィット感にこだわっているので好評をいただいています。ビジネスでもカジュアルでも活躍する、汎用性の高い一足です。
今シーズンの新作として登場したグラデーションブラウンの「弥伍郎」。木型はR2021ラストをスリッポン用に改良した「R2021S」を採用。レースアップシューズのようなホールド感があり、使うほどに馴染むアニリン調のカーフレザー・アノネイ社製「ベガノ」もあいまって、履き込むほどに快適なフィット感を味わえます。印象的なカラーリングが装いのアクセントに。
「兼」シリーズ「兼三郎」
「兼」シリーズ「兼三郎」
スタンダードシリーズ中に含まれる派生モデルで、文字通りオンオフを“兼”ねるシリーズです。大きな違いはカジュアル方面への対応力がアップしていることと、悪路でにも対応できるよう、英国・ハルボロラバー社製「リッジウェイソール」を採用していること。ご覧の通りボリューミーなシルエットを採用しているので、デニムやカーゴパンツなどのカジュアルパンツと相性抜群です。革靴好きの方々はもちろん、非常に間口の広いシリーズなのでエントリーモデルとしても最適です。
Uチップの「兼三郎」はカジュアルデザインではあるものの、きめ細かい上品な光沢感と確かな仕立てにより品格もしっかり残しています。昨今の多様なビジネスシーンなら、スーツスタイルに合わせても好相性です。
スタンダードシリーズから暖簾分けした「兼」シリーズ。ハンドモカステッチをあしらった「兼三郎」は、カジュアルラスト「R2021」を採用し、アウトソールにはクッションとグリップ力に優れたリッジウェイソールを搭載することで、心地よいフィット感を実現。ダブルウェルト仕様もあいまって、重厚感と存在感も際立つ一足です。
ドレススニーカー「柔一」
ドレススニーカー「柔一」
三陽山長の商品の中でもビジネスパーソンに寄り添ったモデルです。毎日履いて、移動や出張も多く、雨の日でも外出しなければいけない、といった営業職の方にぴったりな一足です。最近ではジャケットもコンフォートなものが多いですが、そのドレスシューズ版と思っていただければわかりやすいと思います。
本シリーズは、通常ソールの張り替えができないセメント製法を採用していますが、三陽山長ではこちらに関してもソール交換を対応しております。また、お客さまの中にはお気に入りの革靴を大事に履くために、こちらのシリーズをセカンドシューズとしてご購入される方もいらっしゃいます。シーンと用途で履き分けていただくことは、一足一足の革靴を長持ちさせるためには大切なポイントですからね。
スニーカーの快適さとドレスシューズの佇まいを両立したドレススニーカー、通称“ドレスニ”。こちらの外羽根プレーントゥ「柔一」は、本来カジュアル向きの顔つきですがスーツとも好相性で、軽さやクッション性、はっ水レザーの採用もあいまって、端正な見た目とは裏腹な機能美を感じることができます。指周りにややゆとりがある木型「R2021CF」を採用しているので、初手から窮屈感なく着用できるのも魅力の一つ。
「悠」シリーズ「悠二」
「悠」シリーズ「悠二」
カジュアル需要が増加したことで誕生したシリーズで、わかりやすく言うとドレススニーカーの機能性を持ったカジュアルシューズ。スニーカーライクなセメント製法の快適さをもったコレクションで、ビジネス向きをドレススニーカーとするなら、「悠」シリーズは休日向きなレザーシューズ。
その代表モデルといえるこちらの「悠二」は、ビットローファーの佇まいでパーティやイベントなどの社交場に履ける上品さを兼ね備えています。ソフトなアンライニング仕様のため足あたりが柔らかく、スニーカー慣れしている方でもストレスフリーで履くことができます。
シャープなシルエットの一方で、アッパーにソフトなイタリアンスエードを採用することでノンストレスな履き心地を実現。さらにアンライニング仕様が柔らかさを後押し。底材は軽量で返りのいいビブラム社製「ガムライトソール」のため、足運びもスムーズで長時間の着用も叶えてくれます。とは言え、履き姿は至って上品。ホースビットがラグジュアリー演出のアクセントになります。
「防水」シリーズ「防水 誠十郎」
防水シリーズ「防水 誠十郎」
圧着のスラッシュセメント製法でありながら、コバやステッチのデザインをあしらっているので、履き姿はサイドゴアブーツそのものです。ちなみに「防水」シリーズはPVC素材ですが、三陽山長では革靴同様に鏡面磨きを楽しめるように専用のラバーポリッシュもご用意しております。
アッパーはPVC素材を使用した完全防水仕様でありながら、上質なインポートレザーのような銀面を再現。アウトソールにはグリップ力と耐摩耗性に優れた微発泡ラバーを採用し、濡れた路面でも難なく歩行が可能。さらに、通気性と透湿効果のあるカップインソールを搭載することで、レインシューズの難点である靴内の蒸れを軽減しています。
◀ PREV
NEXT▶