クールビズも休日の軽装も
足元から装いを格上げする
~ ラウンドトゥ編 ~
今年も連日猛暑日が続いています。年々暑さを増しているように感じる日本の夏ですが、盛夏に革靴を履くにあたり、初めはハードルが高く感じる方々が多いのではないでしょうか。しかし、クールビズでも軽装な休日服でも、正統派かつ質実剛健な革靴で足元から装いに上品さをプラスすることは、選択肢の一つとしては大いにアリかと思います。
しかし、そこで懸念されるのが革靴を履いた際に感じる蒸れ。実はこちら、誤認されている方が多いのですが、本革の革靴であれば通気性と湿気を放出する機能に優れているため、夏でも比較的快適に履くことができます (※合成皮革の革靴は基本的に通気性がほとんど無いためおすすめしません) 。前提としてご自身に最適なジャストサイズで革靴を選ぶことも大切ですが、素材本来の特性を鑑みると夏こそ革靴を履いて、その造形美と機能美を愉しんでいただきたいと思うワケです。
そこで今回は昨今の定番といえる「ラウンドトゥ」のモデルより、夏靴にお勧めしたいモデルをご紹介します。“良い靴は履き主を良い場所に連れて行ってくれる”と有名なことわざを体現できるように、今夏は良い靴を履いて過ごしてみてはいかがでしょうか。
「微差こそ大差なり」の好例
適度な装飾で得る汎用性
【匠 弦六郎/TAKUMI GENROKURO】
パンチドキャップトゥ
装いを引き締めると同時に、ほどよい余裕を与えてくれる「匠 弦六郎」。ストレートチップとの違いは、つま先の一文字をステッチではなく、パーフォレーションという穴飾りにしている所です。ストレートチップとブローグシューズ両方の魅力を持ち合わせる「匠 弦六郎」は、現代において冠婚葬祭の葬以外には使用出来る汎用性の高い一足です。カラーバリエーションは、王道のブラックと、洒脱なダークブラウンの2色展開です。
つま先とアイレット横にのみ、パーフォレーションと呼ばれる穴飾りを手作業で施したパンチドキャップトウ「匠 弦六郎」。ストレートチップに比べて、少しだけ華やいだ印象を演出できるのが魅力です。ビジネスシーンならどんな場面もカバーでき、さりげない洒落心も楽しめます。
こちらはイルチア社(伊)が手がけた「ラディカ」、通称“ミュージアムカーフ”で仕立てた「匠 弦六郎」。まるで絵画のように濃淡がつけられた色彩は、芸術的な表情を足元に演出します。もちろん、スーツからジャケパンまでカバーする汎用性は健在。装いに彩りと洗練を加える一足です。
素材から突き詰めた
かつてない“極上”
【極 弥七郎/KIWAMI YAHICHIRO】
スキンステッチローファー
【極 勘三郎/KIWAMI KANZABURO】
スキンステッチUチップ
“上質の限界を突き詰める”――「極」の名を冠する三陽山長の最高級コレクションは、そんなスローガンのもと誕生しました。ニッポン靴職人が誇る技巧を凝縮した「匠」シリーズの、さらに上をゆくクオリティを実現するにはどうすればいいか。私たちがたどり着いた答えは、靴作りの原点である“素材”でした。世界最高峰のタンナーから選び抜いた極上の革を厳選し、それをニッポン最高峰の「匠」仕立てで形にする。奇をてらわず、とことん実直に上質を積み重ねる。そのことでしか、“極上”の実現は成し得ないと考えたのです。20年以上にわたってニッポン靴の頂を追求してきた三陽山長の品質、ここに極まれり。そんな矜持を込めたコレクションです。
「極 弥七郎」においても、高度な手技なくしてはできないスキンステッチを披露。コバも注目で、日本らしい繊細で華奢な雰囲気を醸し出す矢筈コバ仕立てになっています。現マスターラストR2010をベースにローファー用に改良したラストR2010Sを採用し、甲をより低く、踵をより小ぶりにすることで、造形美だけでなくしっかりとホールド感のある機能美も実現しています。
こちらはマスターピースUチップ「極 勘三郎」。わずか1.数ミリしかない革の断面に糸を通し縫い上げるスキンステッチに、「極」シリーズならではの高度な職人技が見て取れます。もちろん、最高峰と自負するのは見た目だけにあらず。リブテープを除くことで優れた柔軟性と足馴染みを実現した、フレキシブルグッドイヤーウェルト製法こそがその本懐です。
繊細な感性と技で作り上げる
静かな存在感を放つ一足
【匠 匠一郎/TAKUMI SHOICHIRO】
レベルソストレートチップ
【匠 源四郎/TAKUMI GENSHIRO】
ダブルモンクストラップ
ニッポン靴の、新しいスタンダードを創る。三陽山長の上級ライン「匠」は、そんな目標を掲げて誕生しました。品質本位、丁寧実直な靴作りをひたむきに貫くニッポン職人の技は、世界の一流ブランドと比べてもなんら遜色がありません。そんな彼らのポテンシャルを最大限に引き出せば、“ニッポンの品質”の水準を新次元へと高めることができるはず。私たちは、そう考えています。履いた瞬間から足に馴染む「フレキシブルグッドイヤーウェルト製法」。繊細な感性と技をこれまで以上に研ぎ澄ませて作り上げる静かな存在感を放つ一足。手から手へ、人から人へ、脈々と受け継がれてきたニッポンメイドの美学。その新境地がここにあります。
レギュラーコレクションで展開していた「匠一郎」が、「匠」仕様に昇華。本作の特色である「レベルソ仕立て」はそのままに、フレキシブルグッドイヤーウェルト製法でさらなる高品質を叶えました。ソールも高級感のある半カラス仕上げに変更。革を縫い合わせる際、端を折り込むようにしてステッチを内側に隠すレベルソ仕立ては、まさに匠の職人技です。
定番モデルのひとつとしてブランド創業当初から人気を博す「源四郎」を「匠」仕様で愉しむ。バックルとベルトで甲を固定するダブルモンクストラップは靴紐を結ぶ手間を省ける利便性に加え、スーツからジャケット&スラックス、ビジネスカジュアルまでマッチする汎用性の高さも魅力。定番デザインだからこそいいものを選びたい、そんな方におすすめの一足です。
ビジネスシーンで真価を発揮する
端正な華やかさで足元を彩る一足
【寿三郎/JUSABURO】
セミブローグ
日本の通勤電車でビジネスマンの足元を見ると、黒の外羽根プレーントウやスワールトウを多く見かけますが、セミブローグは現在でも英国をはじめ、欧州ではビジネスシューズとしてお馴染みのデザインです。フルブローグほど華美ではなく、ストレートチップほど堅くなりすぎない本作は、普段のビジネスシーンでは最適解のひとつになるのではないでしょうか。クールビズでは足元から装いを彩り、秋冬シーズンではコートスタイルにも合わせやすい汎用性を味わえます。
セミブローグはフォーマルユースには履けませんが、対外プレゼンテーションのようなビジネスシーンで他人との違いを何気なく強調したい「華が求められる」場には、うってつけの靴でしょう。特に黒は差別化するには最適な色合いです。ストレートチップでは堅すぎるけど、フルブローグは派手すぎる、そんなお悩みを解決してくれるデザインバランスが、セミブローグ「寿三郎」の持ち味です。
日本の伝統色では、濃い色や暗い色を表す装飾語として「濃・暗・深」の字を一般的にあてます。セミブローグ「寿三郎」の色名は「焦茶」、いわゆるダークブラウンですが、実はこの「焦」という字は茶系統だけにしか用いられない珍しい表現です。稀有ながら、一見すると漆黒にも見えるためその汎用性の高さは言わずもがな、馴染み深い色合いであることは間違いありません。
夏の足元と聞くと、サンダルやスニーカーで軽快な合わせを楽しまれる方が多いかもしれませんが、軽装だからこそ、足元で全体のバランスをグッと引き締める革靴が活躍します。
いつものTシャツ×ショーツスタイルも容易に格上げでき、もちろんクールビズでも活躍は必至。本革の特性である通気性と湿気を放出する機能を味方につければ、外観だけでなく機能面にも優れている革靴。正しいサイズと正しい知識で、一格上の装いを足元からお楽しみください。
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